OMTインフォメーション

翻訳のこと、会社のこと、生活のこと、音楽のこと、読書のこと

精進百撰 - 水上勉

2011-08-04 18:04:16 | 日記
私の料理好きは半端ではない(と自分では思う)。

いろんなきっかけがあったのだが、その一番目にあげられるのが、
この本と出会ったことだと思う。



『精進百撰 - 水上勉』


水上さんがこの本を書かれた7~8年前に、彼は中国である大事件に遭遇し、
帰国後、心筋梗塞を患う。心臓の3分の2が壊死していたという。
その事件とは「天安門事件」である
集中治療の後、どうせこのまま終わるなら、子供の頃育った環境で、
暮らしたい(精進料理の食生活)と、長野の山村に移り住まれた。
そういう中で書かれた本である。

いずれにしてもあの天安門事件の鮮烈な記憶をもつ私にとって、
氏の存在の意味は大きかった。あのような忌まわしい事件
(民主化に立ち上がった人民を軍隊が戦車で踏みつけたのだ、
絶対に忘れられないし、どんなことがあっても絶対に忘れない!)
から復帰し、瀕死の状態から生き続けたヒーローだった。

この本が発行されたのが1997年だ、3分の1しか心臓のない人が
ずっと生き続けているなんてミラクルだと思った。
だからその人の書いた料理本はどんなものなのだろうと大変興味をいだいた。
その闊達とした氏の語り口は非常に説得力をもって響いた。
ここに出てくる内容のほとんどを試した(作ってみた)んじゃないかな。
これが、めちゃくちゃにおもしろいのだった。

そうして料理にはまってしまったわけである。

もちろん精進料理なので、肉はおろか、魚介類、そしてネギ、ニンニクなどは
一切使わない。

それゆえに、昆布や油(とくにごま油、いわゆる天ぷら)、そして高タンパク
(豆腐、大豆)を上手に使う。
近くの畑でとれた季節の野菜はもちろん、こんにゃく、高野豆腐、そして
炊き込みご飯、杏のデザートなど、こうして入力しているだけで幸せな気分に
なる。

いつも傍らにおいて、今日はなににしようかな、などと眺めている。

自然とともに生き、大地を食らうそのダイナミズム。
氏の作品(小説)の作風を彷彿とさせるような生き方をされたと思う。

氏が亡くなられて何年になるか…。

近年、中国は大きな変貌を遂げたように思われる。

最近の列車事故の対応など見ていると氏が遭遇された時代の中国と
一体何が変わったというのか、非常に疑問が残る。


大丈夫、日本!!
翻訳会社オー・エム・ティの公式ウェブサイト