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天上の音楽

2011-07-18 15:18:54 | 日記
何度もこのブログで書いていることなのだが、私は月に一回、
仏像彫刻教室に通っている。講師は皆川閑慶先生であり、
師は大仏師(人間国宝)の松久朋琳先生の直弟子である。

すくなくともあっしはレベルは低いが、先生のレベルは最高級
である(笑)。
以前は結構厳しかったのだけど、結構生徒さんが辞めてしまった
(不思議だけど私などよりも数倍才能がある人たちばかりだった)ので
先生も私の顔をみてあきらめたのか、最近はめっきりやさしくなった。

しかし先生の刀はすごい。
その一刀は、百万の言葉をつくすよりも鋭く、的確である。そして深い。
彫刻は10日分のノミの痕を20日にみせるようなゴマカシは通用しないと
いわれる。ただし、われわれが3日かけて彫ったものを、実際に先生は
30分くらいで彫ってしまうし、当然のことながら先生のものが100倍も
1000倍もすぐれている。
なぜなら先生がそこにいたるまで、何千回、何万回のノミをあててきた
ことは明らかだからだ。
先生と我々の実力の差はもはやあまりに歴然としており、個性などと
悠長な表現の入り込む余地は微塵もない。

芸術においては個性とか、オリジナリティが尊重されるべきだと私も思うが、
それはある程度、というかかなり熟達した人の話である。
彫刻をやっていて思うが、たしかに「絶対的な形式美」というものは存在する。
それはもちろん実態のないものなのだろうけど。
そして「絶対」は常に「相対」に勝る。

私がその領域に達することは望むべくもないことである。
ただし、素直にひたむきにそして楽しみながら自分の歩みを進めてゆきたいと
思っている。

彫刻はもはや取り返しがつかないという意味で、音楽の即興演奏や
水墨画に近いと思う。

時々先生が彫っている姿をみていると、笛をふいている人を連想する。
天上の音楽、最高のインプロビゼーションだ…。

そこでは、観音様がその音を観て微笑んでいるにちがいない。


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