イーゴリ・ストラヴィンスキー:
・詩篇交響曲 〜合唱とオーケストラのための
アレキサンドル・スクリャービン:
・交響曲第3番「神聖な詩」 作品43
指揮:ダニエル・バレンボイム
パリ管弦楽団合唱団
パリ管弦楽団
BMGビクター: R32E-1080
「詩篇交響曲」はストラヴィンスキー中期の新古典主義時代の代表作の一つとして挙げられることがあります。確かに新古典主義的な明快な作風ではありますが、ストラヴィンスキーの作品にしては非常に「甘ったるい」ものを感じます。
「詩篇交響曲」はアメリカからの委嘱で作曲され、ストラヴィンスキーの最初の大規模な宗教曲です。交響曲とはいっても、ヴァイオリン、ヴィオラ、クラリネットを含まず、合唱を伴うという非常に変則的な編成を持っています。全3楽章構成で、それぞれに聖書の詩篇が歌われます。そして確かにストラヴィンスキーらしい鋭いリズムや斬新なハーモニーや巧みな木管楽器の使用法などを聴き取ることができます。それらに加えて、他の作品では聴かれないような「甘ったるさ」があります。
その正体はなんなのかはっきりとは言えないのですが、特に第3楽章で顕著なような気がします。盛り上がりを意識した旋律、わかりやすい転調、シンプルながら分厚い合唱などにそれを感じるのです。他のドライな作品群に比べて、なんかこの曲は人間臭いというか、人恋しさみたいなものが感じられます。らしくないと言えばそうなのですが、それだけに印象的な作品。
上の動画はエト・スパンヤール指揮の第3楽章。なかなかの熱演。最初の硬質で神聖な響き、前半のリズミカルな楽想からさえも独特の「甘さ」が感じられます。後半部はストラヴィンスキー最大級の甘さですね。
カップリングのスクリャービン交響曲第3番「神聖な詩」はこれまた水っぽくて新興宗教がかった一曲。私はこの曲がさっぱりわからないのですよ。こちらもスクリャービン中期の代表作の一つで、最大規模の作品です。この作品を作曲していたころ、スクリャービンは神智学なる怪しげな思想にはまっていて、どうもその世界を交響曲にしたようです。序章を伴う全3楽章で、第1楽章<闘争>、第2楽章<快楽>、第3楽章<神聖な遊び>というプログラムが与えられていて、これだけでもドン引きものです。
曲はとにかく長くて、50分くらいかかります。しかもそのうち第1楽章だけでも30分もあります。オーケストレーションはまだまだヘタクソで、絃楽器主体の旋律に金管楽器が和音を奏で、ときおり木管楽器がピーヒャラいう感じですが、ソロヴァイオリンやソロトランペットが目覚め始めており、その後の作風の確立を予感させます。
全体的に聴きやすく、瞬間的にゴージャスな耳触りではあるのですが、同じような雰囲気でメリハリに乏しく、ちょうど同時代のリヒャルト・シュトラウスの交響詩(「ツァラトゥストラはかく語りき」みたいな)のような雰囲気。とにかく長いのです。後半の第2、3楽章になるとやっと少し雰囲気が変わり折り返し地点だなあと、ほとんど耳で聞くマラソンです。
こちらはディーマ・スロボデニュークの指揮。こちらもかなりの演奏です。とにかく長いですが。
そんなわけでストラヴィンスキーとスクリャービンの中期の代表作をカップリングしたといいながら若干マイナー感が有り、かつ異端のセレクション。いずれはスクリャービンの方もしっかり感じることができるようになりたいものです。
クラシックCD紹介のインデックス
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます