グルジアの民話 五つのぼうけん物語/かんざわ とらお・訳 小宮山量平:編・解説/理論社/1977年新装版
グルジアは2015年4月以降、ジョージアの名称で呼ばれています。1991年に旧ソ連より独立していますが、この名称の経過も興味深い。
初出は1973年で再版で名称の変更はあるのでしょうか。40年以上も前に発行されていて、時代の変化も感じます。
「チンチラカのちえ」には、チンチラカという末っ子が、山男の髪の毛で作った橋をにげだすところがあります。
「髪の毛橋」といえばイギリスの「賢いモリー」が思い浮かびます。モリーでは髪の毛一本ですが、この話では「髪の毛で作った橋」とあるだけです。
モリーでは三人の女の子ですが、この話では三人兄弟。
展開も同じようで、王さまから命じられて、チンチカラが、山男からいただいて(早い話、盗み)くるのが、黄金の壺、黄金でできたパンドリという楽器、山男そのもの。
山男が「やあーい、チンチカラ! もう一ぺん、きてみろやい」と叫ぶと、チンチカラは「いいともさあ、こんどくるときゃ、ともだちになるぜえ」と二回繰り返します。モリーが「またくるわ」とさけぶのといっしょです。
難題は、山男をつれてくること。チンチカラは、指物師のふりをして箱をつくります。山男が箱を調べようとすると、一回目、二回目はすぐに壊れてしまいます。三度目に山男が箱に入ると、チンチカラはすぐに、上から釘づけにしてしまいます。
山男は髪の毛橋で、ころげまわったり、ちからいっぱいつっぱたり、うなったりして、箱もろともチンチカラを橋から谷の底へおとそうともがきますが、チンチカラは、髪の毛橋をだいぶとおりすぎたところで、髪の毛橋に来たといったので、山男の目論見はうまくいきません。
王さまが、箱をあけようとすると、チンチカラは、そのまえに長い梯子をくださるように王さまにお願し、そのあたりの一番高い岩山にのぼってから、箱をあけさせます。
王さまの家来たちが箱を開けると、まっかにおこった山男が、王さまも大臣も、家来も手当たり次第にたべてしまいます。
山男が高い山のチンカラをみつけ、つきすすみますが、山は険しく手も足もかけられません。
チンチカラが「干し草を山のように積んで、火をつけその真ん中に飛び込んで、煙がここまではこんでくれた」といった言葉をまにうけた山男がおなじようにすると、山男は焼け死んでしまいます。
国も王さまの位も、そっくりチンカラのものになって、兄弟も呼びよせます。
チンチカラが、山のどでっぱらにあなをほって、山男のねむっているベッドの真下まで掘り進んだり、
パンドリが「はやく、あいつをつかまえて。チンチカラが、つぼを盗んだよ!」とさけぶのが、二回でてきたりと、リズムもあります。
個人的には、モリーのように、おしまいが結婚でおわるよりすんなり入ってきました。
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