どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

おかあちゃんがつくったる

2013年06月30日 | 長谷川善史
おかあちゃんが つくったる  

       おかあちゃんがつくったる/長谷川義史/講談社/2012年初版

 

 「おかあちゃんがつくったる」の主人公は小学三年生の「よしふみ」君。作者の名前もよしふみ。

 はじめは作者の遊びごころかと思ったが、この本が作者の自伝的要素があるということで納得。一年生の時お父さんが亡くなって、そのとき親戚があつまって、なまえがよくない。「よしお」にしようというので、お母さんと姉からは「よしお」と呼ばれている「よしふみ」君。

 母さんはミシン仕事で、よしひこ君とおねえちゃんを育てている。何でも作ってしまう母さん。ジーパンが欲しいといわれた母さんは、多分買うお金もないことから、よしひこ君のためにジーパンをつくる。

 しかしよしひこ君は「ジーパンのようで ジーパンでない ベンベン」とみんなに笑われてしまう。あせかきのよしひこ君のために作った体操服も「たいそうふくのようで たいそうふくでない べんべん」とみんなに笑われる。

 あるひ友だちがもっていたかばんがかっこよく、母さんがミシンでつくってくれたかばんには「よしお」という刺繍が(ハートマークがはいった素敵なかばん)。事情をしらないともだちからは「よしふみのようで よしふみでない べんべん」とわらわれる。

 ある日、父親参観日のお知らせを見たお母さん。「母さんがいったるわ」というが、よしひこ君は「はずかしいから いい」。母さんがどうしてもゆずらないから「なんでもつくれるのならおとうちゃんをつくってえな」と言ってしまうよしひこ君。

 当日、せびろを着た母さんが教室のうしろに。

 母さんの存在感が抜群でほろりとする。

 絵本はそれぞれ特色のある絵が多くあるが、長谷川さんの絵は、頭と体の大きさがほぼ同じで記憶に残る強烈な印象があった。

 絵本作家といえば「いわさきちひろ」ぐらいしか知らなかったが、同じ作家の絵本を続けて読む楽しさも感じさせてくれた。
 
 今では保護者参観日というなまえで、父親だけの授業参観日というのはあまりないようであるが、少し前まではたしかにそういう名前での参観日の記憶も残っている。現在の感覚では、父親参観日に母親がいってもおかしくないが、同じく母子家庭で育った私にはなんとなくよしひこ君の思いが共有できる。
 
 裏表紙には、遠足にいってひろげたおいしそうなお弁当とびっくりしてのぞきこむ友だちの姿が。なんだかんだといってもよしひこ君にとっては自慢の母さんだったのかも。


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