おいてけぼり/さねとうあきら・文 いのうえようすけ・画/教育画劇/1998年
子どもたちにとって今年の夏休みはコロナの影響で例年の半分。おまけに感染を警戒して出かける機会も少なかったようですが、夏はやっぱり怖い話でしょうか。
まちはずれに だれもよりつかない 気味の悪い堀があって、だれがいいだしたのか「おいてけぼり」とよばれていました。
噂を聞いて火事と喧嘩が三度の飯より好きといういせいのいい 大工のきんじが きめだめしに でかけました。
おてんとうさまが 頭の上にいるあいだは 魚がつれず はらをたてたきんじでしたが、夕方「ごーん、ぐわーん」と、お寺の鐘がなりだすと、きゅうに魚がつれはじめました。魚籠がいっぱいになり、帰り支度をはじめると、堀の底から「おいてけー、おいてけー・・」と、不気味な声。魚籠の魚が嬉しそうに暴れること、あばれること。
きんじが力任せに魚籠をだきしめると「おいてけー、おいてけー・・」という叫び声。
それも聞こえなくなって、ほっとひといきいれると「もうし もうし、おまえさん・・」と よびとめる声。おんなが あたまからかぶった てぬぐいを、するする はずすと・・。
のっぺらぼうにびっくりして、家にかえり、「ばけもんがでた・・」というと、きんじの かかあが「おまえさん、そのばけもんは・・ こんな かおをしてなかったかね?」とふりむくと・・。
堀のようす、うなぎやなまずの大きさににびっくりの絵です。
「おいてけー、おいてけー・・・」は、読むときや語るときの工夫のしどころです。