いまに語りつぐ日本民話集5/監修:野村純一・松谷みよ子/作品社/2002年
・食って寝の男(山形県)
あるところに、たいそうななまけ男がいて、食うのも 食わせてくれないと食わないでいたので、干死んだと。
この男エンマ王に、ネコに生まれ返してやると言われ、口ばしと鼻を白くしてくれという。
「寝転んでいて、ネズミが団子と思って食いついたら、すぐに捕まえて食うから」と男が言ったので、エンマさまもあきれたと。
・寝てて食れるところ(岩手県)
寝てて食くれるところへ婿に行かないかといわれ、奥山の古寺につくと、仲人は「この六地蔵の前にいると、山から化け物がでてきて食れるから、寝てれ食れるとこだ」といったと。
・寝とって食われる(和歌山県)
村の祭りに見世物師がやってきて、寝ておっても食うていける方法があるという。
死んでしまった虎の皮を着て、虎の小屋で寝てくれればいいという。
何日かして、見世物師は、別の檻に入れられているライオンと戦わせるからと、客に特別料金を払うようにいった。
虎の皮をかぶっていた男が、もう命がないと覚悟していると、ちかずいてきたライオンが「心配すんなよ。わしも皮着せてもろうておるんじゃ」と、いったと。
楽して食えたならいうことはありません。昔話になまけ者がよくでてくるのは、それだけ労働が厳しかったことの反映でしょう。