どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

せんそうがやってきた日

2020年08月06日 | 絵本(社会)

   せんそうがやってきた日/ニコラス・デイビス・作 レベッカ・コップ・絵 長友恵子・訳/すずき出版/2020年

 

 コロナ禍で普段当たり前と思っていた日常が失われています。人と交流し、にぎやかに会話し、劇場にいくのもできなくなりました。

 いつもの朝。学校での授業。けれども学校のランチタイムのすぐあとに、ヒューンという音がきこえてきたとおもったら とつぜん かみなりのような音がとどろき、煙と火と 大きな音にのみこまれました。

 町が瓦礫になって、なにもかも うばってしまい わたしは ぼろぼろで 血だらけで ひとりぼっち。

 さむさと雨の中で 野原を 山を 道を 泥だらけになって 走り トラックや荷台に のせてもらい いまにもしずみそうなボートに乗って 浜辺につくと 砂の上には、小さな靴がいくつも。

 せんそうは からだに 目のおくに 夢の中まで おいかけてきて 心は せんそうに 占領されてしまった。

 学校の窓の中には 火山の勉強をしたり 歌を歌ったり 鳥の絵をかいたりしている子どもたちが。

 先生は わらいながら「あなたの場所はありません。わかりますね。いすがないのです。さあ、いきなさい」

 ひきかえして 難民小屋までもどり 毛布に くるまっていると・・・。

 2016年春、イギリスで、3000人の孤児の難民の受け入れが拒否され、同じ頃、座るイスがないという理由で難民の女の子が学校への入学を断られことを聞いた作者が書いた詩がウェブサイトに掲載されると、数えきれないほどの誰も座っていない椅子のさまざまな画像がツイッターに投稿されたと あとがきに ありました。

 色も形も違う椅子がいくつもならび、「せんそうをおしかえしながら 一歩 一歩 すすむ」という最後にジーンとしました。