大人と子どものための世界のむかし話13/タンザニアのむかし話/宮本正興:編訳/偕成社/1991年
まだネコとネズミが仲良かったころ。
ある日、ネコが一緒に魚つりにいこうとネズミをさそいました。
まず舟をつくることにし、ネコはパパイヤの木でつくろうとしましたが、ネズミはパパイヤが気に入らず ふたりはキャッサバの舟を作りました。
つりは順調で次から次へとつりました。
正午近くになって、はらがすいてきたネコは、こっそりとふたりがつった小魚を食べはじめました。ネコはどんどん食べ続け、ネズミは一生懸命魚を釣っていて、ネコのようすにはまったく気がつきませんでした。
二時ごろになって、ネズミもはらがへってきて、舟の中をみましたが、つりあげたはずの魚が一匹もみあたりません。
ネコは舟の中で昼寝。とうとうネズミはキャッサバの舟をかじることにしました。そのうち舟底に穴が開いて、舟が沈没してしまいました。
ふたりはすさまじいいきおいでけんかをはじめましたが、ネズミは「ああ、もう疲れた。ぼくが悪かったよ。お金を払ってきみに弁償するよ」といって、木のほら穴にはいっていきました。そしてネズミは家財道具をぜんぶとりまとめて、どこかほかの町ににげていってしまいました。
そうとはしらないネコは、木のほら穴の前でネズミをまっていました。いまでも木の前にすわっているネコをよくみかけるのは、ネコがネズミをまっているのです。
魚を独り占めしたネコの方が、どうにも分が悪い話。