いろいろな国に「空がおちてくる」と大騒ぎする話が数多くあります。
そらがおちてくるんです/スリランカの昔話/福音館書店/2015年
月刊予約絵本「こどものとも年中むき」。
空がこわれておちてきたらどうなるかと、うとうとしていたうさぎ。
何かが落ちる音がして、びっくりしたうさぎは飛び起きて走り出します。途中あったカメ、シカ、ゾウ、キリンさん。
「話す時間がない。空がおちてくるんだ」
動物たちが
ぴょん ぴょん ぴょん
たっとこ たっとこ たっとこ
どすん どすん どすん
すたたた すたたた すたたた
とみんな走ります。
昼寝をしていたライオンの王さまがゆっくりと話をきいて、「きみは それを みたのかい? よし、では みんなで やしきのしたまで いってみよう」
とみんなで、屋敷にいってみると、そこには木の実がひとつ落ちていただけ。
シンプルな絵で、ライオンがネコのよう。
・この世のおわり(世界のむかし話/瀬田貞二・訳 太田大八・絵/1971学習研究社 2000年のら書房)
メンドリが森を歩いていると、ドングリが一つ落ちてきて、「空がこなごなになって落ちてきたんだわ。この世のおわりがきたんだわ」と思ったメンドリが、ぶたやめうし、犬、きつね、おおかみ、くまと森の洞穴にかくれます。
しかしいつまでたってもなんにもおこらず、お腹をすかせた動物たちは、さわぎをはじめたメンドリを食べてしまいます。
それでもまだ、お腹がすいてたので、ぶた、めうし、おんどりも食べられてしまいます。
のこったのはくま、おおかみ、きつね。
今度はきつねが食べられそうになりますが・・・・。
「そらがおちてくるんです」は、事件はおきないのですが、「この世のおわり」では、食べられてしまう場面もでてきます。どちらが子どものこころをとらえられるか興味のあるところです。
たいへん たいへん/渡辺 茂男・訳 長 新太・絵/福音館書店/1968年
「こどものとも」1968年の発行で、イギリスの昔話です。
ある日、めんどりが、とうもろこしばたけで とうもろこしを食べていると、ぽとん! なにかが、頭の上に落ちます。
「おうさまにおしらせしなくちゃ」とかけだしためんどりは、おんどり、ぐわぐわがちょう、くっわくっわあひる、しちめんちょうにあって、そらがおちてくると大騒ぎ。
みんなが走るさまが「はしりました。はしりましたとも」とリズミカルです。
ところが、こんこんぎつねが、この道は、おうさまのところにはいかないから、道をおしえてあげるといって、案内したのは、ほそい、くらい穴。
最初に入ったこんこんぎつねは、しちめんちょう、くっわくっわあひる、ぐわぐわがちょうを すぽん!となげて穴の中へならべます。
ところが、おんどりのときは すいん!といっただけ。おんどりが危険?をめんどりにしらせると、めんどりは、くるりと しっぽをあげると 逃げて帰り、おうさまにおしらせできませんでした。
きつねが、みんなを食べようとしたのが少し希薄なのがいまいちなのですが、そのへんは想像に任せているのかも知れません。
長さんの絵もピッタリで、みんなが、走るさまが、いい味をだしていて楽しい絵本です。
・めんどりペニー(夜ふけに読みたい不思議なイギリスのおとぎ話/吉澤康子・和爾桃子:編・訳/平凡社/2019年)
渡辺 茂男訳とは、もとがちがっているのかも知れませんがイギリスの昔話。
でてくる動物には、それぞれ名前が。めんどりはペニー。おんどりはロッキー、アヒルはダドルズ、がちょうはプーシー、七面鳥はラーキー、きつねはウオクシー。
楽しいのはオチ。めんどりペニーは暗い穴に入ってすぐ、おんどりロッキーの鳴き声が聞こえたので「あらま、たいへん! 夜が明けちゃった。卵を産む時間だわよ」と、くるっと向きを変えて、自分の巣へあわてて走り出すところ。
・空がおちてきた(たのしいどうぶつ昔話 じょうずなわにのかぞえかた/マーガレット・メイオ 再話 エミリー・ボーラム 絵 竹下 文子・訳/偕成社/1997年初版)
ちびねずみが落ちてきたヤシの実に驚いて、「空がおちてきた。王さまにしらせなくちゃ」と大騒ぎ。
おさぼさ犬、おしゃべりさる、のんびりとら、ぶつくさらくだ、のっそりぞうと、王さまライオンのところにいきます。
ライオンはゆったり、どすんと音がしたところにでかけていきます。
みんなはヤシの実が原因だっだとしって、さっさと帰っていきます。
にげろ!にげろ?/絵:ジャン・ソーンヒル:再話・絵 青山 南・訳/光村教育図書/2008年
心配性のうさぎが、うしろで おおきなおとがして、なにかが爆発したのだと思い、「せかいが こわれはじめた!」と走り始めます。
ひたすらはしるうさぎのあとを、1000匹ものノウサギ、1000頭のイノシシ、1000頭のシカ、1000頭のトラ、1000頭のサイが。
ただライオンだけは、冷静に原因となったヤシの葉におちたマンゴーを見つけます。
インドのジャータカの話がもとになっています。
何しろ森をうめつくす動物の躍動感は、絵本ならではです。
他の絵本では集団で大騒ぎするさまが、あまりでてきませんが、この絵本のように1000頭もの大集団だと、集団心理の怖さが伝わってきます。
原題は”うわさ”というのですが、なにが本当か、真実を見抜く目を養いたいと思っても、集団の中では流されてしまいそうです。
・あわてウサギ(魔法のゆびわ/世界むかし話13インド/光吉夏弥・訳 畠中光亨・絵/ほるぷ出版/1979年)
「大地がわれだした」と一番最初に騒ぎ立てたのはウサギ。
十万匹ものウサギ、オオシカ、水牛、サイ、トラ、ライオン、ゾウなど、その長さは10km以上、最後はライオンの王さまが・・。
「にげろ!にげろ?」も、もとはインド。10万匹と千頭よりもスケールが大きい。
「ライオンの王さまがたすけてやらなかったら、けものたちはまだ走りつづけているか、それとも、西の海に飛び込んで死んでしまっていたかもしれません」と、結びがよくできています。