どんぴんからりん

昔話、絵本、創作は主に短編の内容を紹介しています。やればやるほど森に迷い込む感じです。(2012.10から)

そらがおちてくる、この世のおわり、たいへんたいへん、にげろ!にげろ?

2020年08月04日 | 絵本(昔話・外国)

 いろいろな国に「空がおちてくる」と大騒ぎする話が数多くあります。


       そらがおちてくるんです/スリランカの昔話/福音館書店/2015年

 月刊予約絵本「こどものとも年中むき」。

 空がこわれておちてきたらどうなるかと、うとうとしていたうさぎ。
 何かが落ちる音がして、びっくりしたうさぎは飛び起きて走り出します。途中あったカメ、シカ、ゾウ、キリンさん。
「話す時間がない。空がおちてくるんだ」
 動物たちが
  ぴょん ぴょん ぴょん
  たっとこ たっとこ たっとこ
  どすん どすん どすん
  すたたた すたたた すたたた
 とみんな走ります。
 昼寝をしていたライオンの王さまがゆっくりと話をきいて、「きみは それを みたのかい? よし、では みんなで やしきのしたまで いってみよう」
 とみんなで、屋敷にいってみると、そこには木の実がひとつ落ちていただけ。

 シンプルな絵で、ライオンがネコのよう。


この世のおわり(世界のむかし話/瀬田貞二・訳 太田大八・絵/1971学習研究社 2000年のら書房)

 メンドリが森を歩いていると、ドングリが一つ落ちてきて、「空がこなごなになって落ちてきたんだわ。この世のおわりがきたんだわ」と思ったメンドリが、ぶたやめうし、犬、きつね、おおかみ、くまと森の洞穴にかくれます。
 しかしいつまでたってもなんにもおこらず、お腹をすかせた動物たちは、さわぎをはじめたメンドリを食べてしまいます。
 それでもまだ、お腹がすいてたので、ぶた、めうし、おんどりも食べられてしまいます。
 のこったのはくま、おおかみ、きつね。
 今度はきつねが食べられそうになりますが・・・・。
          

 「そらがおちてくるんです」は、事件はおきないのですが、「この世のおわり」では、食べられてしまう場面もでてきます。どちらが子どものこころをとらえられるか興味のあるところです。




        たいへん たいへん/渡辺 茂男・訳 長 新太・絵/福音館書店/1968年

 「こどものとも」1968年の発行で、イギリスの昔話です。

 ある日、めんどりが、とうもろこしばたけで とうもろこしを食べていると、ぽとん! なにかが、頭の上に落ちます。
 「おうさまにおしらせしなくちゃ」とかけだしためんどりは、おんどり、ぐわぐわがちょう、くっわくっわあひる、しちめんちょうにあって、そらがおちてくると大騒ぎ。
 みんなが走るさまが「はしりました。はしりましたとも」とリズミカルです。

 ところが、こんこんぎつねが、この道は、おうさまのところにはいかないから、道をおしえてあげるといって、案内したのは、ほそい、くらい穴。

 最初に入ったこんこんぎつねは、しちめんちょう、くっわくっわあひる、ぐわぐわがちょうを すぽん!となげて穴の中へならべます。
 ところが、おんどりのときは すいん!といっただけ。おんどりが危険?をめんどりにしらせると、めんどりは、くるりと しっぽをあげると 逃げて帰り、おうさまにおしらせできませんでした。

 きつねが、みんなを食べようとしたのが少し希薄なのがいまいちなのですが、そのへんは想像に任せているのかも知れません。

 長さんの絵もピッタリで、みんなが、走るさまが、いい味をだしていて楽しい絵本です。

めんどりペニー(夜ふけに読みたい不思議なイギリスのおとぎ話/吉澤康子・和爾桃子:編・訳/平凡社/2019年)

 渡辺 茂男訳とは、もとがちがっているのかも知れませんがイギリスの昔話。

 でてくる動物には、それぞれ名前が。めんどりはペニー。おんどりはロッキー、アヒルはダドルズ、がちょうはプーシー、七面鳥はラーキー、きつねはウオクシー。

 楽しいのはオチ。めんどりペニーは暗い穴に入ってすぐ、おんどりロッキーの鳴き声が聞こえたので「あらま、たいへん! 夜が明けちゃった。卵を産む時間だわよ」と、くるっと向きを変えて、自分の巣へあわてて走り出すところ。



空がおちてきた(たのしいどうぶつ昔話 じょうずなわにのかぞえかた/マーガレット・メイオ 再話 エミリー・ボーラム 絵 竹下 文子・訳/偕成社/1997年初版)

 ちびねずみが落ちてきたヤシの実に驚いて、「空がおちてきた。王さまにしらせなくちゃ」と大騒ぎ。
 おさぼさ犬、おしゃべりさる、のんびりとら、ぶつくさらくだ、のっそりぞうと、王さまライオンのところにいきます。
 ライオンはゆったり、どすんと音がしたところにでかけていきます。
 みんなはヤシの実が原因だっだとしって、さっさと帰っていきます。


       にげろ!にげろ?/絵:ジャン・ソーンヒル:再話・絵 青山 南・訳/光村教育図書/2008年

 心配性のうさぎが、うしろで おおきなおとがして、なにかが爆発したのだと思い、「せかいが こわれはじめた!」と走り始めます。

 ひたすらはしるうさぎのあとを、1000匹ものノウサギ、1000頭のイノシシ、1000頭のシカ、1000頭のトラ、1000頭のサイが。

 ただライオンだけは、冷静に原因となったヤシの葉におちたマンゴーを見つけます。

 インドのジャータカの話がもとになっています。

 何しろ森をうめつくす動物の躍動感は、絵本ならではです。

 他の絵本では集団で大騒ぎするさまが、あまりでてきませんが、この絵本のように1000頭もの大集団だと、集団心理の怖さが伝わってきます。

 原題は”うわさ”というのですが、なにが本当か、真実を見抜く目を養いたいと思っても、集団の中では流されてしまいそうです。


あわてウサギ(魔法のゆびわ/世界むかし話13インド/光吉夏弥・訳 畠中光亨・絵/ほるぷ出版/1979年)

 「大地がわれだした」と一番最初に騒ぎ立てたのはウサギ。
 十万匹ものウサギ、オオシカ、水牛、サイ、トラ、ライオン、ゾウなど、その長さは10km以上、最後はライオンの王さまが・・。

 「にげろ!にげろ?」も、もとはインド。10万匹と千頭よりもスケールが大きい。

 「ライオンの王さまがたすけてやらなかったら、けものたちはまだ走りつづけているか、それとも、西の海に飛び込んで死んでしまっていたかもしれません」と、結びがよくできています。


絵本のかたち

2020年08月04日 | いろいろ

 いろいろな絵本にであって驚くのは、おなじような作りにならないこと。

<絵本を開く> 右からと左からページをめくる二種類。これだけでなく巻物風は広げていきます。文字が縦書きなのが右から、横書きなのは左からというのは目線を考慮したものか。外国のものは、左からと思っていると必ずしもそうなっていません。

<文字と絵> 絵本は文字と絵。文字は活字、手書き文字などがあるが、活字の書体にもいろいろ。手書き文字も一律ではありません。文字の大きさもポイントの一つ。文字がないという絵本もありました。

 文字と絵のバランスもさまざま。見開いたぺージの左に文字、右に絵というのはもっともオーソドックス。しかし最近の絵本にはこうした構成になっているのは少ない。文章部分が枠に入っているもの、絵に直接描かれたものなど。さらに吹き出しを利用したものも。

 絵も油絵、絵の具、色鉛筆、布絵、鉛筆といったものから切り絵があり、さらにCGなど。作者が絵のあちこちにちりばめている遊びも楽しい。

 ページの使い方も、ページが折込になって広げると4ページにもわたる描き方や縦に描かれているものも。

 思いがけない仕掛けにびっくりすることもあります。

<紙質> 絵本の紙質は、雑誌などと比較するとしっかり?したものが使われています。世代を通じて読み継がれている絵本にとっては欠かせません。

<大きさ> 大きさも、小型からやや大きめ、さらに大人二人が必要になる大型絵本など。横に長いもの、縦に長いものも。ただ、収納を考えると大きさがバラバラなのは取り扱いが不便です。

<表紙と裏表紙> 表紙と裏表紙にも工夫があって、表と裏がつながっているもの、さらに本文を補完する裏表紙もあります。見返し部分にはあまり目がいかないのですが、ここにも、さまざまな工夫が見られます。

 舞台が外国では、作者が現地を取材して丹念に描いていることも忘れてはいけないことですし、訳者の方の工夫で、ポイントをついた親しみやすいタイトルになっているものも。

 一冊の絵本に込められている努力に感謝です。