入笠牧場その日その時

入笠牧場の花.星.動物

      ’24年「秋」(7)

2024年08月14日 | キャンプ場および宿泊施設の案内など


 午前7時、朝の涼しいうちに電気牧柵の点検のため、小入笠の頭まで登ることにした。朝飯前である。
 8日の中間検査から4日目、新たに入牧した牛たちも少しは未知の環境に馴化したように思え、また囲い内の草もかなり心細く感じるようになって、そろそろ広い第4牧区へ出たがっている牛たちもいる。
 囲いを開放するには、まずその前に電気牧柵に問題がないかを確認しておかなければならない。前日、頭の最終点における電圧は6千ボルトをわずかながら切っていたから、途中どこかで鹿に切られた可能性も考えられた。

 急登する間に振り返ると、中腹に雲を抱いた穂高や槍が見えた。いつの間にか雪田が消えていて、眺めた山の印象に何か物足りなを感じたが、それでも早ければ3か月もしないうちに山々はまた白い衣を纏うことになる。
 止まれ、下界はまだまだ炎暑の季節、あまりにも先走りが過ぎたと、再び単調な登りを続けながら、別のことを考え始めていた。(8月12日記)

 その別なことが一体どんなことだったか、もう、思い出すことができない。助手役と一緒に、他所の使用してない牧区から多量の支柱を移し替え、新たに第4牧区を区画し直した時の苦労だったか、はたまたすっかり音信の絶えてしまったその助手役のことであったか・・・。
 いや、そういうことも頭をかすめたかも知れないが、これまでにどれほどの回数、この電気牧柵に沿って小入笠の頭まで上り下りしたかと考え、それがいつか終わりの日が来ることを漠然と頭に浮かべていたような気がする。
 一人の人間の取るに足りない人生ではあるが、過ぎ去ったこれまでをいつになく肯定的に考えたりもした。

 昨日の夕暮れ、その日も小入笠の頭まで続く縦線と、横線の交差する結び目で電圧を計ろうとしたら、1頭の小鹿がすぐ近くにいて、こちらをじっと見ていた。目と目があった瞬間、その小鹿は電気牧柵を完全に無視し、まるで見えていないかのように突進し、切った。まさに一瞬のことで、通電の途切れた間であれば衝撃は受けなかった可能性もある。 
 第1牧区では100頭以上の鹿の群れを目撃し、行儀が良くなったと思っていた鹿奴が、目の前で狼藉を働いた。鹿に関しては「いつまで続く泥濘ぞ」、頭が痛い。

 かんとさん、有難う。早速明日使わせていただきます。
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 本日はこの辺で。


 

 
コメント
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