先日のノルウェーのハーディングフェーレとのデュオコンサート、無事終了しました。ご来場の皆様ありがとうございました!右肩の故障は半分くらい治りましたが、まだ半分くらい不自由しています。
次回は12/19(日)生駒市で、ソロ演奏の予定です。広報「いこまち」令和3年12月号にお知らせが掲載されました。
「生駒民俗会の講座」12/19、10-12時、同会理事による「明治維新と生駒」の学びと、ニッケルハルパの演奏(1時間弱)を予定しています。定員先着順24人、500円、同会050-3332-5626まで)
今日は先日のコンサートで、演奏曲をどんな風に決めたかのお話です。終了したプログラムの紹介も兼ねて。
1.リハーサルの2~3か月前くらいからやりたい曲を考え始める。
2.デュオ向けの曲を考えて提案(リズムがシンプルでデュオで弾きやすそうな曲、ソロより2人で弾くと広がりそうな曲など)。
私が出したスウェーデンの候補曲
・Polska efter Per Munkberg(前回も弾いて、さとこさんの伴奏が素晴らしく好きだったので定番曲にしたいと再リクエストしました)
・Båtsman Däck storpolska efter Ceylon Wallin(ウップランド地方のゴムの伸び縮みのようなリズムの特徴がよく出たポルスカ)
・Pollones efter Mattis Kollberg i F-dur i C-dur(Karin Wallin, Jeanette Erikssonの演奏を聞いて前から弾いてみたかった曲。シンプルなメロディで古いノートブックからの曲。出典は、M137:008 Nr.16)
さと子さんが提案のデュオ候補曲(詳細は聞いていないので簡単に)
・Bruremarsj(結婚行進曲)
・Springar set(ノルウェーのスプリンガル2曲)
・Kivlemøyane(シブレ谷の娘たち、ガンガル、と言っていました)
一緒に弾きやすいように調を変えてくれることが多いのですが、kivle~はオリジナルのh-dur(ロ長調)。すごい脳トレになりました。
さとこさんは普段ハーディングフェーレのレッスンもしていますが、貸し出し用の楽器が2つあるそうです。興味のある方はいかがですか
3.オープニング向きの曲、最後の曲向けに数曲あたる。(軽く聞ける、派手目のもの、など)
・Svängrumpa från Skåne i A-dur i D-dur(2拍子のような3拍子の、古くて楽しい曲。Youtube動画もアップしているので丁度よさそう)
・エンディング曲は、デュオ曲から選ぶことに。
4.ソロ曲をお互い3曲づつ考える。
ここはいつも、ただ好きな曲を弾くべきか、伝統的な地域や奏者やテーマに沿うか、悩んで抜け出せなくなるところです
・まず1曲目を、Vandringen efter Byss-Calleにしました。これは好きだけど毎回、消去法で消される曲です。そろそろ日の目を見てもいいのではないか、と。
ですが、Byss-Calleはニッケルハルパを代表する人だけど、ニッケルハルパの特徴的な曲ではない気がします
「そもそも、ニッケルハルパの特徴的な曲って何?」
ああ、何年も弾いていて、ここに戻ってくるか、という感じです。
ニッケルハルパは300年の間に2回モデルチェンジをし、大きく分けると3つのタイプのニッケルハルパがあります。最初は、鍵盤1列で、割と高音のメロディで、演奏弦がほぼ1本で弾ける曲が多いです(演奏弦2本あるので中音域の曲もありますが)。そして1800年代にCとF(とG)しか弾けない楽器に変りました。その代わり豊かな響きがあり、今のニッケルハルパで弾けてもあの響きは真似できません。1900年代に入って、フィドルの曲や色んな曲が弾けるようにと1音ずつ弾ける楽器になりました。
ですが、現代のモデルのニッケルハルパは、ネガティブになりますが、こういうことなのです。
・フィドルの曲は弾けるけど、演奏弦3本ということもあり、どんな曲でも弾きやすい訳ではない。
・コントラバスハルパ(鍵盤1列の時代のニッケルハルパ)の曲は、高音で指ジャンプしまくる曲が割と多く、美しくソロで聞かせようと思うとジャンプの達人になる修行がいる。当時の楽器は、ガットのドローン弦が一緒に鳴るのでワイルドな感じで弾くのに、現代のニッケルハルパで弾くとメロディのみでちょっと上品な雰囲気になってしまう。
・シルベルバスハルパ(モデルチェンジ後の和音がよく鳴る楽器)の曲の真似をして弾くと、高音のメロディと、ドローン弦の替わりの演奏弦を弾くと、深みがなくキンキンした音になって疲れる。
・現代のニッケルハルパで作った曲は、エリック・サルストレムが有名で、大きな手(元々アコーディオンを弾いていた)の特徴が出ていて、上級者向けの曲が多い。
今では「ニッケルハルパらしい」曲とは、地方色が濃く出たリズムの曲(bondpolska)、1900年代初頭まで主流だった昔の楽器の重音を真似た弾き方とされています(だと、思います)。
逆にそれを説明して紹介しよう、ということにしました。そうすると、スッキリ。
ソロ1:Vandringen efter Byss-Calle(鍵盤1列のコントラバスハルパの曲)
ソロ2:Polska efter Johan Bodin(重音が特徴のシルベルバスハルパの曲。Byss-Calleの弟子の弟子で前の曲からのつながりも)または、Polska efter Mats Wesslen(Byss-Calleの大ファンだった人)
ソロ3:Hem från Gesunda av Eric Sahlström(現代のニッケルハルパで作曲された曲)または、Polska av Ivar Tallroth(ウップランド地方の有名なフィドル曲)
「または~」と書いた曲は、今回は弾きませんでした。こうして、お蔵入りする曲がまた増えて、たまっていくんですよね…。
リズムが特徴的な曲はデュオ曲で挙げたので、これで今回はニッケルハルパの特徴を存分に網羅できたのでは、と思いました。
リズムが特徴的…
余談ですが、ノルウェーの3拍子のスプリンガルも不均一なリズムで地方色も豊かですが、スウェーデンも同じです。ウップランドの特徴的なリズムも個性的ですが、分かりやすく、不均一というほどでもないなと思っていました。今までは。今回、デュオの候補でそういう曲を挙げて、初めて一緒に弾いた時、
「どういう3拍子ですか?」と聞かれ、「普通のです。」「普通…???」「え?普通じゃありませんでした?」という会話を経て、まさか普通じゃないと思っていなかったので上手く説明できず。
「ウップランドの曲は、エネルギッシュで、ゴムの伸び縮みのようとよく言われます。ダンスで手を離したら、飛ばされて転びます。特に、ウップランドの曲は飛んで行ってしまうと思います。」と言うのが精一杯。「参考に、他の人の演奏聞いてみますか?」と同じ曲で2人ほど聞かせると、確かに2人とも「普通」ではありませんでした。冷静に聞いてみるとすごく変です!
お蔵入り...
これも余談ですが、コンサートの候補で挙がって消えたり、弾きたいなと思っているのに何年も候補リストにはまらない曲。いつも、胸の内なので、せめてここで書いておきます!
Vandringen(数年の補欠から、やっと今回、日の目を見ました)
Polska från Lofthammar(印象が薄い曲と言われて毎回消える)
Polska efter Mats Wesslen(他の曲が決まると、はじかれる)
Polska av Ivar Tallroth(きれいな曲なのに、他の曲に負ける)
Polska efter Frost Mats, Mora(変わりすぎて、いつ弾いたらいいのやら)
Polkett efter Kristian Oskarsson(かわいらしすぎて浮く)
Polska från Vrigstad(演奏相手に断られる率が高い曲)
などなど、他、多数あります。いつか弾く機会がありますよう