モッチリ遅いコメの距離感

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ピュアオーディオという商業に対する雑感

2021-05-07 12:25:48 | オーディオ
なんとなくコンシューマーのピュアオーディオの傾向というものを最近別の視点から見える要素について気になってきている。

DACやアンプは結局のところ数字上はパーツ屋のチップやモジュールでも出るし、スイッチング電源でもそれなりに対策していれば数字上問題なく出る。
スピーカーもある程度コンピューターの解析によりモニタースピーカーで数字上はそれなりの最適解がわかっていて同じような設計と音のものは出ている。

ただそれで組むコンポーネントの音は無個性であまりおもしろくなく、
第一印象として、なんだこの音は?というような大きな驚きを伴いづらい。
チップやモジュールを多用したコンポーネントに個性を感じづらく、
それを導入しても自分のシステムの音にアイデンティティーを感じにくい。
オーディオシステムの顔であるスピーカーがモニタースピーカーみたいな地味な風貌だと面白みがない。
そしてスピーカーがアクティブだったりDSP噛ませるのを前提とすると既存のコンポーネントに合わせるのも大変である。

なのでコンシューマーオーディオのピュアオーディオは以下のような傾向を持っているんじゃないかなと思ってしまっている。

・普及機との差別化を各所で図ること自体をアイデンティティーとしている。
DACチップやオペアンプやアンプモジュールに性能が高いものが出てきており、スイッチング電源もモノによってはハイエンド用途でも使えるのが現状である。
しかし、中核となる部品が他社からの購入したチップだとブランドの個性も出ないし、コスパ重視のアンプと似た音になってしまう。
またスイッチング電源は廉価モデルでの定番になっているのでそれを採用してるとイメージが悪い。ノイズ対策していると言っても嘘だらけのこの業界では半信半疑にされてしまうので商売上はマイナス要素になりやすい。
さらに他社チップや他社モジュールの価格は公開されていることが殆どなため原価率が想像できてしまう。
なのでなるべくディスクリートで作ったり、なるべくモジュールをカスタム品にしたりして音質自体を差別化する。そしてカタログのうたい文句としても普及価格帯の機材との差別化がなされることがある。
ただ音質としてその独自化が必ずしも数値上の向上に寄与するわけではないし、むしろ数字上は逆効果のものも多い。
当然のことながらカタログスペックだけが全てではないが、商売である以上はただ無難なチップやモジュールを使ってスペックがいいだけの音を実現するのでは高級機の自らの存在価値を示すことができない。
上記のコンセプトは他のコスパ重視のメーカーがやっているし、そのコンセプトの音では平凡すぎて高級機の価格帯で勝負をしても好まれることは少ない。
結局のところそのように考えてみると高級機が商売として成立させるには正しい音を目指すことよりも特徴のある音を目指す必然性があるように思われる。
もちろん自社の理念がそれぞれある中で、それを体現するような様な特徴の機種をそれぞれが出すことで百花繚乱の様相を呈してくれて選択肢が魅力的になるのは事実である。
ただ皆がそういう志向だと環境としては不健全と言わざるを得ず、実際に市場の現状が不健全になっていることを考えると、「メーカーごとのアイデンティティ」というものに対して全肯定の目で見るべきではないと思い始めている。
豪奢なアクセサリーなども同じ理屈で作られている要素が大いにあるだろうと考えられる。

それならば地味なコンセプトながらシンプルに良いパーツを使用しある程度の評価を確立しているものをあえてセレクトする勇気も大事なのではないかと思っている。その選択は地味で魅力に欠けるが、今までが派手なセールスポイントばかりに目を奪われ過ぎていたような気もしてきている。
それにアクセサリーなどではオーバースペックが跋扈しており、上を見ると際限がないが、派手さに目を奪われずに地味に十分な性能を満たすものを見極めることも楽しみの一つになるかもしれない。

・音質的な最適解よりも、製品として導入のしやすさに重点が置かれていることある。
昨今のデジタル化でこれは大いに感じるところであるが、デジタル処理がかなりできるようになっているのにも関わらず、アナログ回路の通り道が多い上にスピーカーもパッシブのものが多すぎる。
既存のトラディッショナルなコンポーネントに古いものと交換することで組み込むことができる=買ってもらう機会が増える、ことを意識してか新しいタイプのコンポーネントが定義されることが少ない気がする。
結局のところ売る側の商売上の必要性でそうなっている面が多く、消費者としてそれに乗っかることは必須ではないのかもしれない。
デジタル処理が一般よりも長かったりスピーカーがアクティブのものなど、既存のコンポーネントに組み込みづらい機種をあえて注目することで見えてくる世界もあるのかもしれない。

・豪勢な外見や特殊な素材や複雑な形状を使うことが商業上必要とされている。
ハイエンド機はベリリウムだダイヤモンドだと高級な素材を使用したり、筐体が芸術的な形をしていたり、スピーカーのエンクロージャーもそれぞれが優美な曲線美を描いたりしている。
特殊な素材も大抵は物理的特性に優れているし、エンクロージャーが直方体でないのも物理的に合理的ではあるのは間違い無い。
研究により最適な素材というものが判明してきており、伝統的な素材以上に最適なものも見つかっているのは事実である。
だが、物理的特性という意味では地味な素材で地味な筐体を用いたスピーカーでも良い数値は出ているし、最終的な製品として見れば、むしろそちらの方が良い数値が出ているケースもある。
スピーカーの音は数値では評価しきれないことは疑いようがないが、素材のチョイスに既知の科学的見地を利用している割に、出音には測定値という科学的見地だけでは音の優劣は付けられないという理屈を振りかざすのはやや都合が良すぎる気もする。
それに、地味な素材と地味なエンクロージャーを用いながらも音が良いスピーカーがあるとして、セールスとしてどれだけ人気を博すかというと、おそらくあまり売れないだろうと思われる。
結局の所、特殊な素材や特殊な形状は価格が高額であることを納得させるための要素として商業上必要、というのが実際はそれなりのウェイトを占めていて、音質向上への寄与のためだけにやっていると納得するのは業界を過信しすぎている考えなのかもしれない。
独自の素材や形状を実現するためのコストとそれを実現したことによる音質的なリターンがどれだけ見合っているかというのをコンシューマーは判断する必要がある。
またアンプやプレーヤーで派手な筐体をしているのは恐らく所有者の満足感を高めるという要素がその理由と考えた方がいいのかもしれない。

・普通の音を避ける傾向がある。

冷静に考えてみると理論上の忠実な音をしっかり再現できたとしてもその音は試聴程度では驚きの音にはならないのかもしれない。付帯音の少なさで綺麗と感じるかもしれないし、低域が伸びればすごいと思うかもしれないが、フラットな周波数というものに一聴して感動するにはかなりの訓練が必要なのではないかと思える。
データも大事にしつつ、最後は聴感の良さを追い求める、というのがオーディオ製品のセールスでよく言われていることではある。もちろんそれは行われるべき事項であるとは思うが、
聴感的に良いと感じる工夫というのが必ずしも音質的に正しい介入であるとは限らないことに留意する必要がある。
低次元のものではドンシャリサウンドというように、聞き取りづらくフルレンジだと出しづらい低音や高音が多く出るよう工夫した製品は一般人の聴覚には良い音のように聞こえることがある。
そこまで低次元の話ではないにしても特定の周波数の音を巧妙に音量を上げたり、時間特性的によく響くように作ればフラットよりも派手な音として聞こえる可能性が高い。巧妙に操作されたものであればそれを特性が歪んでいるとは気付かないだろうし、聞き取りづらい周波数を補正して聴きやすくされたことに対して特定の周波数が音が大きすぎておかしいと一聴して看破するのは困難であるように思われる。
測定値だけがすべてではないし、測定値も周波数特性だけが全てではない、今定義されている測定値だけで音質のすべてを表現できるわけでもないが、試聴での感触がはっとするような派手な印象であればあるほど、冷静に穿った評価を試みても良いのかも知れない。

結局は数字を聞いているのでは無い以上、聴感上最も良いと思えるものを揃えればいいという考えも勿論あるべきだが、実際に購入して使用していると癖が気になったり飽きてきたりという結果に繋がりやすいのではないだろうか。

オーディオを突き詰めるというということについて考えると、付き詰まっている状態が上から下までオールハイエンドの状態っていうのが果たしてそうなのか、
ハイエンドユーザーも所詮はアマチュアだが、音のプロはスタジオに億単位でかけている割に機材はそこまででもないというプロとアマチュアの最終目標の場所が全然違うのはなぜなのか、
どんなに特性を良く出来ても自分の耳が楽しめないなら無意味だが、自分の感覚というものも不動の評価は難しいがその辺りにどう折り合いをつけるか。
そういったことをいろいろ悩んでいて、少なくとも自分は当面は機材をどんどん新しくするモチベーションは上がってこなそうだというのが現状である。一般人の感覚だと壊れてないなら買い替える必要ないと考えるのが健全だから仕方ないね。
コメント
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