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モッチリ遅いコメの距離感

オーディオルーム、シアター、注文住宅などに関してのblog。

小空間ステレオリスニングルームの音響設計をどうするか

2022-12-06 16:28:20 | オーディオ
前回の考察でもあったようにリスニングルームはホールと同じ設計ができれば良いという話でもない。
広さが違い過ぎるし、音量の確保は問題にならないので響かせる目的が違うからだ。
そしてレコーディングスタジオと同じにすればいいというものでもない。リスニングルームは正確さも重視されてよいが、官能性が一番重視されるからだ。

それならば小空間のステレオリスニングルームの設計の方向性がどのようなもので良いかというのを考えてみる。
・初期反射音の軽減とコントロール
・残響の確保
・残響音のベクトルのコントロール(上方移動)
この辺りがリスニングルームでホールやレコーディングスタジオと別の設計思想を行わなければならないのではないかと考えられる。

・初期反射音の軽減とコントロール
以前に取り上げた「論文小空間における音楽の明瞭さに関する評価要因の調査」にあるとおり、小空間では初期反射音は音場への不明瞭感をもたらす。そのため初期反射音は無処理だとマイナスの存在となる。
だが、音量を-2dbだけ小さくした側方の初期反射音は音場の明瞭感を増加させる効果があるとされる。また初期反射音を極力減らそうとすると吸音率が下がり後期反射音、残響も極端に減ることとなる。
そのため初期反射音を全てはなくさないが、量を減らしたり、一部を吸音したりするなどのコントロールが望ましいということになる。

・残響の確保
ただライブとデッドというように残響が多い部屋はライブというポジティブな言葉で表現され、残響が少ない部屋はデッドというネガティブな言葉で表現されるように、響きが少ない空間はあまり気分が上がるような環境ではない。無秩序なライブは音響障害となるが秩序だったライブさが作れればそちらの方が望ましいとなる。
小空間の場合残響時間は必然的に短くなる。ホールのように勝手に残響時間が長くなる空間や、残響が少なくても成立するスタジオのような空間(考え方によるが)よりもよっぽど残響時間に関しては注意しないと残響は残ってくれない。

・残響音のベクトルのコントロール(上方移動)
基本的にホールと比べて小空間リスニングルームは天井が低くなりがちである。一般家屋で天井高に限界があるのはどうしようもないのでそれ自体の解消はできない。
天井高が高いと2つの変化が起きることが考えられる。1つは天井からの音が遅くなること。これは当然だろう。もう1つは天井からの反射音の割合が大きくなることだ。
高天井でも人間の座高は変わらない。なので高天井の空間の場合、低天井の空間と比較して、相対的に空間の底の方にリスニングポイントが存在することになる。
底の方にいると下や横からよりも上から降ってくる音の方が相対的に多くなる。このあたりの響きの特徴も小空間とホールの響き方の違いの1つと考えられる。

以上の点が小空間のステレオリスニングルームの場合に入れるべき独特の要件になってくるのではないだろうか。
これらの要素を同時に具備しようとするときの発想として以下がある。
初期反射面となる部分は天井方向に反射するようにする(もちろん全反射とはいかないので、リスニングポジションにも入るが軽減されていれば問題ない)。初期反射面以外の側壁も天井方向に反射させてもいいのかもしれない。
初期反射音は天井で再び反射し、天井で拡散させる。スピーカー→壁→天井→リスニングポジションを経由した反射音は後期反射音となり上方からの後期反射音の増加に貢献する。

このような反射拡散の挙動を示す為には以下の要件が必要になる。
・側方壁の斜め面での反射
・天井での拡散

リスニングルームはいろいろできるようにした方がいいという結論で以前一応ついたが、その辺りをちゃんとできるほどの可変性を備えた設計が必要ではないかと思い始めている。

「原音再生」は幻であるなら、何が到達可能な目標になるのかという話

2022-11-30 10:32:09 | オーディオ
久々のコンサートに行き、小ホールの音響を聴いてきた上で、オーディオルームのような小空間でどのような響きの設計をするのが良いのかというのを改めて考えさせられた。

他のところで散々言われているとおり再生音楽で生演奏を完全再現するという原音再生は不可能である。
ただそれは音源が加工されているからだとか、情報が失われているからだとかそういった言われ方でされている場合が殆どである。
それを否定する訳ではないが、個人的には他の要因も大きいような気はしている。

やはり小空間の音源再生は直接音や早期間接音の割合が多い。コンサートホールで実際に聞くよりも響きが少なくなり易い。
そもそも音源の中に収録されている音は直接音の割合が多く、部屋が響かせる後期間接音や残響も少ないのでそうなりやすいのではある。音源の中に直接音が多いのは間接音が過度に入り過ぎていると明瞭さがなくなるというのもあるが、音源に入っている音源は引き算ができないので蛇足になりそうなものは控えめにしておくのは理にかなっている。
そのため小空間での再生音楽は急峻なトランジェントになり易く、聴いていて音圧の変動が激しく落ち着かない印象を抱かせる。

そういう場合、オーディオ愛好家は機材やスピーカーを変更することで解決を図ることが多いがそれでは本質的な解決はできていないのではないかというのが自分の意見ではある。
初期反射音や残響は様々な方向から入ってくるものであるが、スピーカーからの付帯音はスピーカーから出てくるものである。響きは入ってくる方向によって様々な聴覚上の印象を与えるものであるので、ステレオスピーカーからの付帯音で解決できるものではない。
イマーシブオーディオで反射音再生専用のスピーカーを設置することは解決策になりうるが対応音源が極端に少ない問題などもあるので実用的にはならないだろうから現時点では解決策として有用ではない。

ただオーディオ再生は大きな部屋を用意するとしても限度があり、ホールのような残響時間を得ることは不可能である。仮に自分がビルゲイツだとして無尽蔵の財産をはたいてプライベートホールを作れたとしても家庭用のスピーカーはそのような容積で本領発揮できるようには作られていないし、広すぎて居住性も良くないので資金的な問題以前にホールと同じ残響を獲得するのは正解にはなり得ない。

ホールの演奏のような音を小空間で完全に再現するのは現実的ではないという理由については以上のように洗い出すことができた。
ただ完全再現は無理だからと言って無制限の妥協を肯定したくはないし、原音とは別物だから再生音楽は別方向の鳴り方でいいのだとは思えない。
以前から何度も述べている事だが、趣味なんだから自分が好きだと思うものなら何でも良いというのでは自分の感覚という極めて曖昧なもので探求することになり結果的に自分が長期間好きだと思えるものにならないことがほとんどだからである。
自分が好きも大事だが、他の尺度も必要であるし、その尺度は原音の完全再現とすることはできない。では他に何であるのかということになる。
ホールの鳴り方を完全再現できないにしても、部分的には不完全に再現することはできるだろうし、そもそもホールの鳴り方の特性が聴感上の良いという要素だけで占められているわけではない。生の楽器の音を客席全てに届けるという音量増幅と音圧の平坦化という目的もあるため、その辺りは音質的にはデメリットにもなりうる。
ホールの鳴り方の音質的に好ましい部分は小空間でも再現可能な範囲で取り入れつつ、小空間でも機器の再生では不要な部分は排除した音響が小空間では目指すべきものと思える。

明瞭感の多少の支障にはなるが霧に包まれたような残響はやっぱりあるべきだとは考える。直接音のエッジがなくなってしまうのだが情報量が落ちる訳ではなく、聴感上の心地よさは向上する。一聴するだけだと残響のある音の好みは分かれそうだなと思いつつも繰り返し聴くと気に入る人が多いのではないかと思う。

ではホールの残響は不可能だとして実現可能なエッセンスはどのようなものをどのように組み込めばいいのかということになるだろう。
小空間では一次反射音が早く到来しすぎるのはホールと比較すれば覆せない事実ではある。だからと言って一次反射音は直接音を補強しつつ良い影響を及ぼすこともできるので単純に吸音して排除しても良い音にはならない。
ホールほどはいかないにしてもある程度の時間差を確保できるようにセッティング(側壁から離す)をする方が良いのであろうということにはなるし、時間を遅らせるという目的でのある程度の拡散(というより耳に届くまでの反射経路の複雑化)をするのは正当化されるだろう。
小空間がホールのような残響時間を確保できないのも事実ではある。できないにしても小空間でも包まれるような感じの残響は良い影響があることは各所から言われている通りであり、不自然にならない程度に質の良い残響を作りたいところではある。
拡散させてLEVを作るにしても拡散させるときに音圧の減衰をなるべく少なくしつつ、時間を稼げるようにできれば、その目的には適いそうではある。
となれば少ない反射で効率的に拡散するという手段が必要であるし、拡散体で細分化される反射波の時間差を多く確保するという手段が必要である。
前者は円柱や球体などの形を利用することなどがあるし、後者は厚みのある拡散体が必要ということにもなるだろう。
そして拡散体の吸音率が低く反射率が高いことも響きが残ることには繋がる。音響調整材は軽さが必要なのでせいぜい木材程度までしか用いられないが、建築と一体化させたコンクリート系材料なども必要なのかもしれない。

高崎芸術劇場の音楽ホールに行ってきた話

2022-11-27 19:44:42 | オーディオ
パスカル・ロジェのオールドビュッシープログラムのコンサートがあったので、コロナが以前ほどの脅威ではなくなってきた折もあり参加した。
ロジェのフランス音楽はデッカの録音が豊富にありその音源をよく聴いていたから、というのもあるが高崎芸術劇場の音楽ホールで演奏されるということが一番の決め手だった。



高崎芸術劇場の音楽ホールはホールとしては小ぶりで席は400席程度しかない。だからオーケストラなどは入れる大きさではなく、ソロや小編成の演奏会しか行われない。
ただ、音響調整用にふんだんにリブが配置されており、木材の反射面が非常に多くなっていたりと響き方がどんなものか興をそそるものになっている。
3年前に開業したがコロナ禍もありなかなか訪問できずにいたが最新の知見が反映された響きになっていると期待できる。
そして小さめのホール(間口12.5m高さ13m)だけに響き方の傾向がオーディオルームの参考になるかもしれないというのもある。
大ホールだと音質よりも音量の確保が第一に優先されてしまう。大きな空間に生楽器の音を全ての席に十分届けることが大変なのでそちらに割かれてしまうし、大きい空間だと反射音が大きい分遅れが大きくなってしまいがちであるが、小さいホールだと音量は響きで無理に増幅させなくても確保できる分、響きの美しさに割り振ることが期待できそうである。

自分的にどんな響きが気になったポイントとして
・収容人数は犠牲になるが、音質が期待できる。
・小空間よりは明らかに大きいが、大きすぎないので参考にはできる
・最新の知見によって設計された響き
・音楽専用ホールとして設計されている

このあたりが気になっていたので機会をみてこのホールで鑑賞してみたいと思っていた。

実際に鑑賞した感想としては、またこのホールで鑑賞したいなと思えるものであった。
ロジェの若い頃の録音は持っているが、今はそれなりの高齢になっているので若い録音のように技巧の多い部分を素通りするように演奏するようなイメージではなかったが、端正で正道で安心感のあるフランス印象派の演奏はロジェらしいなと思えた。

残響は長すぎず、嫌な感じもなく、冷たい霜の霧を纏ったような付帯音を感じた。
ホールの間接音の成分は多いので楽器自体の明瞭感はスピーカーオーディオの方が明瞭には感じた。ただそこが明瞭ではなくても情報量のマスキングを感じないというか、後でオーディオの方を聴くと無駄にコントラストが利きすぎてゆったり聴けない感が出ているように感じた。
部屋のサイズやスピーカーの性能を考えると当然ではあるがホールの生演奏では低音の量や質が全く異なり、豊かで美しく自然で後に残らない引き締まった低音が出ていた。自室で同じ曲を聴いてもそもそも低音の量が不足しており、量を増やしたところで質がまったく再現できていない。

大ホールのオーケストラだとオーディオルームと条件が違いすぎるのでスルーできていた部分が小ホールのソロだとオーディオルームとの鳴りとの比較で思わされる部分も多いなと感じた。
そもそも小空間の録音再生で再現するのは無理であるから、そこを目指しても仕方ないにしても音楽ホールの心地よい響きを再生音に移植できる部分があるとすれば、どうやれば組み込めるのかと考えさせられてしまう。
脳内で考えていてもまったく整理がつかないので次の記事で考察したいなと思う。



聴き始めないと聴く気は起きなくなっていく

2022-11-09 11:06:22 | オーディオ
ほぼ日刊イトイ新聞より引用
https://www.1101.com/ikegaya2010/2010-10-01.html


「やりはじめないと、やる気は出ません。
 脳の側坐核が活動すると
 やる気が出るのですが、側坐核は、
 何かをやりはじめないと活動しないので。」

これ専用室でのオーディオリスニングに関しても同じ事言えるなぁと思ってしまった。
防音を施した専用室であれば音量を気にせず音楽を聴くことができる。
調音を施せば響きを望ましいものにすることもできる。
ただ音楽鑑賞のやる気が上がる存在かというとそうでもない一面も持っている。

専用室というのはオーディオリスニング専用という意味なのだろう。
それ以外の活動の適性は基本的に考慮しておらずオーディオ専用という定義にはなる。
だからその部屋を使おうと思うのは「オーディオを聴きたい」というモチベーションがあるときになる。

ここで上記の脳の話が出るのだが、やりはじめないとやる気は出ない。
オーディオを聴きたいと思うにはオーディオを聴かないといけない。
だが専用室に行くのは「オーディオを聴きたい」というモチベーションがあるときだけ。
回路が閉じてしまっているようで取っ掛かりがないような話になっている。

オーディオは聴き始めるから聴く気が起きるのであれば
オーディオを専用室に追いやってしまうならば、別に起点が必要ということになる。

解決策1:ながら聴きするためのサブシステムを生活空間に設置する。
音楽鑑賞は真剣にリスニングするだけでなく、他のことをやりながらでも行うことができる特徴がある。
モチベーションの起点が必要であればサブシステムをそれにすればいい。
サブシステムは音質よりも設置しやすく面倒でないことが優先される。ゼネラルオーディオでも十分と言える。
ただ音楽鑑賞をなぜ専用室を設けてまで設置したのにそこを使わないのかという話にもなるし、楽曲のチョイスや再生する時間帯や音量などを同居人に配慮したり音漏れなどにも気にしなければならなくなる。

解決策2:モチベーションが上がらない時にも専用室にいく習慣をつける。
音楽鑑賞する気分が乗ってなくても聴いているうちに気分が乗ってくるはずだからと自分を言い聞かせて専用室に行く習慣を付けるというのは脳の働きを考えれば理にかなっている。
ただそうやって自分にムチ打って行動を起こさせてモチベーションを上げさせるというのは勉強やレッスンであれば有効な方法と言えるだろうが、所詮趣味であり娯楽であるオーディオリスニングでそこまですべきかどうかというとやや疑問ではある。

解決策3:オーディオ部屋を専用室ではなくいろいろできる部屋にする。
以前にも構想していた別棟のセカンドリビングとしてのオーディオルームにも通じることだが、音楽鑑賞をするための部屋として作ってはいるが、他の事をして楽しめるように配慮した部屋にすることが解決策にはなる。
オーディオを聴くモチベーションがないときでも足を運ぶ部屋であれば、他の目的でその部屋に行ったとしても、BGMとして聴いていた音楽でモチベーションが上がって真剣なリスニングをする意欲が出ることも期待できる。
ただ一般的なリビングでこれをやるとオーディオシステムが本格的であるほど日常生活と干渉して生活に支障をきたすので、メインリビングとは分離しなければならず、分離するなら大がかりなものとなってしまう。

どれも一長一短で決定打と言える案があるわけではないが、脳とモチベーションの観点からリスニングルームについて考察できる良い機会だったなあとだけ思えた。

100万アクセス到達記念。

2022-11-02 11:06:57 | その他
12年前にblogが流行っていた頃に始めたこのblogが100万アクセスに到達したようだ。

このblogは他の人との情報をやり取りするというより、日記であり備忘録であり考えを整理するための作業であったりという自己完結した目的で始めたものであり、本質的には閲覧者が自分以外皆無でも問題ない。今もその目的は変わっていない。
運営日数も膨大であるため検索業者のクロールによるアクセスも膨大な量となっており、アクセス実数はもっと少ないものとも考えられる。

とはいえ100万アクセスというのは簡単なものではなく、継続という力によってもたらされたものであることは間違いない。今まで飽きっぽく長年同じ事を継続して研鑽していくということはほとんどやってこれなかった。内容の質はともあれ、ただなんとなく始めたblogをここまで継続できたことは少し誇りには思える。

それに今までに同じようなことに興味を持った人達が多少は覗いてくれて、何かを感じ取ってくれていることもあるかもしれない。自己完結しているblogとは言え、他者に何かの一助となってくれているのであれば、それは嬉しいことである。

最近はあまり記事にすることも減ってきてしまっているが、今後も細々と続けていきたいと思う。

最適な音像サイズ

2022-10-29 07:22:57 | オーディオ
youtubeのAcoustic FieldsのチャンネルのHear The Whole Pictureの動画を見ての雑感

音像の幅の広さに関しては音響学的に研究が進んでいる分野ではあるが、シアターの場合スクリーンの大きさで最適な音像の大きさは決まるので、スクリーンの大きさに適した音像の大きさにすることが必要と考えられる。

マルチチャンネルで上方向のチャンネルもあるので他のチャンネルで音像は多少は拡大されるが不十分だろう。
上下方向に音像の大きいアレイスピーカー的な縦にミッドレンジがいくつか並ぶようなスピーカーの方がシアター用途に適しているかもしれない。
ただでさえ映画の音響は派手なので、音像が大きい派手な音は相性がいい。スピーカーの素性のよさも重視すべきであるが、そのあたりも考慮して選択するべきなのだろう。

ではステレオ再生ではどうするべきか。結論から言えばどのような音源をどんな場所で聴いている状況を再現するかという目的によって音像の縦の大きさは決まるだろう。
大きな音像を作るシステムと小さな音像を作るシステムを分けても良いかもしれない。
ただ大は小を兼ねるというか、どちらを選ぶべきかというなら大きい音像を作れるシステムの方が優先すべきとは思われる。
小さい音像によってコンサートの遠い席から聞こえる音を再現してもそれで得をするのか?という話にはなるし、小編成の音楽を再現するために小さな音像にするにしても、音像が大きくなれば近くで聴いている感じが出るので不自然にはならない。小編成と言っても電子機器を用いたライブのような音場を再現するなら大きな音場で良いとなる。
小編成やソロの電気を使わない生楽器で比較的小さな楽器(ピアノのような大きな楽器は音像が大きくても良い)や生声の音場を再現したいのであれば小さい音像が良いが、音像が大きくてもそれほど不自然はないというように考えられる。

周波数特性が良いながらも全面的に好まれる訳ではない同軸のモニター志向のスピーカーは、この辺りの要素に目を向けると素性はよいけれどもこぢんまりしてしまっているというマイナス部分も見えてくる。

最後はやはり唯一解がないという結論にはなるのだが。。。

2022-10-01 08:15:35 | オーディオ
今月の日本音響学会の無料公開分はオンラインでの学会活動についてが主でありオーディオに関して関連性はほとんどなかったが「響きをみがく」音響設計家 豊田泰久の仕事 石合 力 著の書評が興味深いものであった。

以下引用
“残響時間はアルコールの度数のようなもので単なる目安にしかならない”“シミュレーションで得られた波形を見てここが悪いということはわかるが,理想的な波形というものはない”。
音響設計家としての豊田の言葉からは,ホールの音響には正解というものがあるわけではなく,最終的にはそこで音楽を奏でる演奏家が作り上げていくものだということが伝わってくる。

“誰が指揮をしてもいい音響をもつホールというのはありえない” が,“クリアな音と豊かな音の両立を高いレベル
で目指す” 理想のホールは,優れた演奏家との共同作業によって完成するのであろう。

引用終わり。

結局のところコンサートホールについて知見は有用ではあるが研究の果てにベストとなる唯一解があるわけではなさそうだということだ。
良い音にしていくには演奏家がホールの音響効果を正確に把握して、その特徴を活かした相性の良い演奏をしなければベストにはならないということになる。

これはリスニングルームでも同じことだろう。こうなってしまうと音が悪いというのはあるが、おそらく理想的な響きという唯一解は存在しない。
ただオーディオの場合はコンサートホールのように演奏側がリスニングルームの特徴に合わせて演奏を変えることができない。
オーディオ機材を変えるか部屋の音響を変えるということで対応するしかない。
残念ながら一般的にはどちらもあまりフレキシブルとは言えない。となるとオーディオ機器自体を自作や改造など調整が可能なものとするか、部屋の音響を調整できるものとしなければベストなリスニング環境とすることはできないのではないか。

自作でハイエンド機器に並ぶことは現実的ではないと考えるなら、やはりリスニングルームは調節性をより重要視すべきということになる。
そして扱う側が自分のオーディオシステムはこういう癖があるから部屋の音響をその癖を活かせるようこのように調整している、と測定データや聴覚上の印象を交えて説明できるようなものが1つの理想のリスニングルームということにはなるのではないか。

逆に言えば実際そういったことを1つも説明できない、部屋の音響に関してはオーディオシステムの音の特徴を一切考慮していないというものが至高の音と広く認めて貰えるとも思えない。

オーディオ用チェアのレビュー記事あらわる。

2022-09-12 14:14:59 | オーディオ
https://www.phileweb.com/review/article/202209/10/4869.html

これどうなの?と以前書いたことのあるオーディオ用チェアなる椅子のレビュー記事(PR記事)が出たので面白半分で覗いた。

「モダンにさりげなく仕上げるセンスは、さすがに北欧の家具職人が作ったものと言える。」
ロブスターチェア自体は中国製造だったはずなのだが、このモデルだけは北欧で生産されたのだろうか?設計は確実にデンマーク人なのだろうが、なんともきわどい書き方が行われている。

「大きく湾曲したヘッドに秘密があるようで、まず前からの音に対しては吸収能力の高い素材で濁りを吸収。これまで耳元を掠めて逃げていた良質な音も、しっかりリスナーに届く仕組みである。」
前方からの音を吸収するということだが、明らかに吸音という意味だろう。それでいて耳から逃げていたはずの音もリスナーに届くとのことだ。吸音しておきつつリスニングポジションに音が増加するというのは正直謎の理屈だが、恐らくレビュアーの概念によると「濁り」という望ましくない音の成分を除去しつつ、「良質な音」という望ましい音だけをリスニングポジションに集中させるという効果があるらしい。
いわゆるノイズフィルターのような効果を持った椅子というような概念があるのではないだろうか?有り得なさすぎて一読しただけではまったく理解不能であったが、何度か読み込んだところそういう意図にしか思えない書き方である。

「後方反射によるディレイの対策だ。普通は後ろに行った音は壁反射で遅延する。位相のズレた音を聴かされていたが、特殊形状によりその弊害を一気に解消。理にかなった工夫なのだ。」
後方の反射音はシャットアウトするとのことである。反射音の位相がズレるのはその通りではあるが、そもそも前方側方上方の反射音だって位相はズレる。だからその弊害は一気に解消するわけではない。
そもそも一定の方向だけシャットアウトして自然な響きになるとでも思えるのか、シャットアウトできればいいが、実際は大きなヘッドレストからの反射音でむしろ悪化するしかないように思えてしまうのは邪推でなければいいのだが。

高臨場感オーディオとは何か

2022-09-09 14:01:57 | オーディオ
9月の日本音響学会の無料公開分は高臨場感オーディオ特集号であった。
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jasj/78/3/_contents/-char/ja

なかなか興味深い特集内容であるはずなのだが、あまりピンポイントに有用と思える情報があるわけでもなかった。一番望んでいた特集内容であったのにイマイチだった理由そのものを考えつつ高臨場感オーディオの方向性について考えてみたい。

そもそも高臨場感オーディオというのは「あたかもその場にいるような感覚を覚えるような音響システム」とのことである。
ある意味ではしばしばオーディオマニアの目標とされる「原音再生」と非常に類似した志向である。
ただそのようなものを目指す場合に音響の研究者たちは概ねマルチチャネルによって達成しようとしているようだ。ほとんどのオーディオマニアは今でもステレオ再生で原音再生を目指していることから、その時点でも乖離が見られる。

そして高臨場感を演出するための研究というのは概ねスピーカーの配置であったり、ミキシングの仕方であったり、ヘッドホンで再現するための技術であったり、VR映像との連動であったりというものだ。
オーディオマニアが気にするようなスピーカーやアンプの音色などというものは高臨場感の研究にはあまり重視されているようには見えない。

ただこれはオーディオマニアが頑張る方向性が間違っているとかそういう指弾をするつもりではない。実際に今そういった最先端の音源や再生設備の入手性が悪く、結局のところステレオ再生が未だに一番魅力のある再生方式だからだ。
イマーシブオーディオはよりベターな方式なのかもしれないが、まずはそれを楽しむ環境ができなければ意味が無い。論文中にも記載されているように、需要が少ないから裾野が広がらない。需要を増やすにはローエンドでも手軽にその違いを実感できるように技術が進歩する必要がある。興味がなかった人にも数万円程度の出費をしたいと思わせるほどの高臨場感の違いが必要である。そういった意味ではまだまだ発展途上なのだろう。

また、論文中に記載されていたが高臨場「感」オーディオというのは「その場にいるような感覚を強く感じる」ことを目標にしており、「その場(原音)の音響」を再現するというものとは限らない。
原音とは厳密には一致していなくても臨場感を出せるようなミキシングを施した方が原音をよりも臨場感を出しやすいとのことである。

さらに方向性として、やはりスピーカーが多い方が臨場感に有利であるものの、多く配置することを必須とするのは敷居が高く、少ない数でもそれなりに臨場感を表現する技術の必要性は重要視されており、また多く配置する敷居を低くするためにワイヤレスのフィルムスピーカーの開発の必要性なども提唱されている。
音響的にリスニングポイントで良くなれば良いというのではなく、広い範囲で自然な音場が形成されることの重要性も言及されている。VRなど動くことを前提にすると、その項目は今後重要度が増すというものだろう。

正直なところピュアオーディオとしてのステレオ再生の場合に一致するところは多くないような印象だが、やはり音響の研究者達が高臨場感を表現するために必要としている方向性はそれなりに尊重して活かすべきだとは思うところである。ステレオ再生の場合には当てはまらないとしても、研究者達の良しと思うところとあえて全否定する方向に突き進むという考えはあまり得策ではないのかなと思う次第。

ネイティブ4Kレーザーがスタンダードになりつつある

2022-08-19 13:00:06 | ホームシアター
ソニーから新製品のプロジェクターが販売された。

https://www.phileweb.com/news/d-av/202208/09/56117.html


どちらの機種もネイティブ4Kの解像度を備えつつ、レーザー光源を採用している。
下位モデルは税込み88万円と、安いとは言えないまでも100万円以下のモデルが初登場した。
サイズとしてもかなりコンパクトなものとなっている。

4Kレーザーは巨大であったり高価格であったりが今までのイメージだが、それを覆すような製品だ。
その分レンズが小さかったり調整が手動であったりと上位機種に比べると高級感の少ないものではあるが、
ネイティブ4Kレーザーが普及機にも搭載され一般化されてきていることの象徴とも思える。

8Kは流行りそうもなく、マイクロLEDでの100インチ以上も普及価格帯で出てくることは当面なさそうであると考えると、大画面界隈のスペックはこのあたりで頭打ちになりそうではある。