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モッチリ遅いコメの距離感

オーディオルーム、シアター、注文住宅などに関してのblog。

仮想リスニングルームの壁面デザインについて④ -続・続・正面壁の考察 +α

2023-01-02 22:45:51 | オーディオ
正面壁は間接照明や音響処理をデザイン性のあるものにして相対していて飽きない、居心地の悪くないものにすべきという話に前回なった。
それ以前の考察では、正面壁の一次反射音は中低域優位の周波数特性を有しており、スピーカーより内側から到来する初期反射音は聴感上の明瞭さを損ないやすい。そのため正面壁の一次反射面は中域やできれば低域などにフォーカスを当てて激しい一次反射音がリスニングポジションに来ないように対処すべきだと述べた。

上記の2点(+可変性)を考慮したいとは思っているが、そもそも中低域を扱うと言っている以上は正面壁は生半可に対応してもうまくいかない可能性が高い。デザイン性や可変性も大事だが、まずは正面壁の一次反射面に効果的な施策を行うことを優先して行うべきだと考えた。そして正面壁からの反射を介して逆方向の側壁に音が飛び、定位を乱す現象もなるべく軽減したいと考えている。
まずはそこから設計することとした。

正面壁の一次反射面の処理ではあるが、拡散は基本的に中高域に作用するものであり、中低域に十分な効果は期待しづらい。とはいえ吸音は最初から行いたくない。
ということでリスニングポジションに向かう反射の方向を逸らすdeflectionを用いたReflection Free Zoneで対応すべきと考えた。結構昔に同じ結論で考察した気もするので同じ思考プロセスを2回繰り返してしまったことになる。学習効果とは。。。

正面壁の一次反射面を含めてリスニングポジションの座標を中心にクサビを作った。拡散などを組み合わせてもいいが、波長の大きい音の進行方向にしっかり影響を与えるには大きさ的にもdeflectionを目的にしたクサビの方が効果がある可能性が高い。
そして逸らされた反射波はスピーカーのある側の側壁に向かい、さらに反射する。これはASWを増加させ広がり感を与えるのに効果的な後期反射音になってくれる可能性がある。
音の明瞭感に悪影響が出る可能性が高い一次反射音を変換して音の広がり感の増大に寄与する後期反射音になってくれることが期待できる。マイナス要素をプラス要素に変えることを期待したものである。



ただ、「正面壁の一次反射面の反射波を逸らすこと」と、「他の壁やリスニングポジションに入るはずの反射波をスピーカー側の側壁に反射するように方向転換する」を達成するだけならここまで大きくする必要はない。
逸らし板によってスピーカー側の側壁に音波が流れるのは下記の部位だけだからである。



それ以外の場所は逸らし板があることで反射波の方向は変わるが、正の影響がないかもしれないし、負の影響があるかもしれない。
上記の図だとクサビというより側壁の案で示したようなフラップになっている。
今回はフラップのままの設計で良いのではないかと考えている。
なぜかというとフラップにするならドアのように蝶番で壁とフラップを接続することで可変性のある逸らし板にすることができる。角度を変えたり役立たなかったらしまったり取り外したりできるから可変性として優れている。
またフラップの裏側は逆ホーン型になっており、迷入した音の消音効果を期待できたり、消音できないにしてもスピーカー側の側壁に反射を返してくれる形態をしているので今回のコンセプトの目的に沿った追加効果が期待できる。


上記の設計を取り入れつつ、後壁の一次反射面をdeflectionや拡散もしくは吸音で処理する。そしてそれ以外の部分はできれば拡散、耳の高さ付近はできる場合は上に逸らすといった感じで、特別この場所はこうしなければという要素が思いつかない。
今回の石灰の反射波の挙動はこんな感じになる。


リスニングポジションに入射しない波も表示する。
スピーカー側の側壁からの入射波は残っているが、他の面からの音は抑制されている印象はあるので設計的にはいけそうな気はする。



この設計をベースにデザイン性や居住性や細かい部分を設計していく感じなるか。

デザイン性と音響処理を両立する壁面処理のアイディアtips

2022-12-30 21:27:43 | オーディオ
以前の記事で耳の高さ付近を上に傾斜させると反射波の上方成分が増えて良いのではないかという案だが、



ディスプレイできる本棚みたいなものであれば、耳の高さに斜めに傾斜した板があってもデザイン的におかしくないと思われる。こういう使い方をするなら傾斜板を隠すものではなく見せる設置の仕方でも問題ないのかもしれない。


正面壁で見飽きない、かつ中低域まで影響を与えられそうなものを検討していたが、
ミュージアムやホテルのエントランスなどでは立体感の強い装飾壁と効果的な間接照明で魅力的な空間を演出している。





これの丸パクリでは音響的な影響は十分ではないのかもしれないが、同じようなデザイン手法を使えばできそうな感じもする。ホテルのエントランスなどの壮大な装飾建築は待ち時間についつい眺めてしまうものであり、飽きにくいものでもあると思う。
正面壁は何もオブジェなどを置かなくても、装飾建築とライティングがあれば長時間向き合う壁として十分なのかもしれない。

仮想リスニングルームの壁面デザインについて③ -続・正面壁の考察

2022-12-28 09:26:17 | オーディオ
正面壁のインテリアデザインについて、音響調整だけでなく長時間向き合っているのだから見ていても飽きづらい仕掛けをしておくべきではないかということになったのが前回の記事ではあるが、どんなものがいいのか考えを巡らせてみたのが今回の記事となる。

案1:アクアリウム
見ていて飽きないという意味ではこれが一番ではあると思われる。ライトアップをすれば暗くしたリスニングルームで映えるし日々の変化もある。動きもある。長い時間見ていられそうではある。
ただエアレーションの音があるのが難点であるし、表面は平滑なガラスでないといけないので音響調整に支障がある。水のトラブルで高額な音響機器の故障リスクもあると実際には現実的ではないだろうし、もっと無難な案を生み出したいところではある。

案2:写真のスライドショー
自分の撮った今までの写真のスライドショーを出すという案である。モニタでもいいしプロジェクターでもよいので音響調整との干渉を最小限にすることはできそうだ。ただ写真にはそれなりに思い出が入っているわけなので、音楽聴きながら見るというのは気が散りすぎてしまいそうで音楽鑑賞の邪魔になってしまいそうな気はする。プロジェクターにするにしても今度は動作音が音波ノイズになってしまう。

案3:家庭用プラネタリウム
音楽再生中は室内を暗くするので相性が良いような気もする。星という気にしようとすれば興味に対して返ってくるものはあるが、気にしようとしなければ気にならないので、音楽鑑賞中の引き立て役の存在的には丁度いい感じもする。部屋をほぼ真っ暗にしないと使えないのが難点ではあるし、内部にプロジェクターが入っているはずなので動作音が問題になってしまう。
ただこれはそもそも設計段階というより完全な後付けで対応できるものにはなる。

案4:オブジェなどの置物
光が出たりモソモソと動くようなインテリアがいろいろあったりする。正直こういうものが無難ではあるとは思われる。ただ丁度いい大きさであったりギミッグであったりがなかなか見つからない。

今のところ現実的にはそれなりに複雑な反射が期待できそうでありつつも芸術性のあるオブジェ(中低域への影響を期待して大きめのものにする。大きければ距離があっても鑑賞できるメリットもある)を一次反射面に設置して、ライティングを複雑にしたりバリエーションをつけたりして飽きにくくさせるのが現実的かなあと考えている。

仮想リスニングルームの壁面デザインについて② -正面壁の考察

2022-12-27 13:52:10 | オーディオ
スピーカーの後ろにある正面の壁の壁面処理であるが、スピーカーからの音は無指向性スピーカーで無い限りは高域ほど指向性があるため、後ろに飛んでくる音は低域が多く含まれ高域は少なめである。そのため正面壁からの一次反射音は前述の周波数特性を有している。
そしてスピーカーより内側から到来する初期反射音は聴感上の明瞭さを損ないやすいと言われている。
そのため正面壁の一次反射面は拡散や吸音などを用いつつ、ターゲットを中域やできれば低域などにフォーカスを当てて対応するのが望ましいと考えられる。
中低域まで十分に影響を与えられるような音響調整材はそれなりのサイズになる。正面壁はリスニングルームの顔なので、巨大な拡散体が正面壁に設置されたリスニング専用ルームはSNS映えするので、マウント合戦するときも自分のシステムの強さを誇示することに大いに役立つことだろう。
という音響学的?な理屈の話はそれで済むことなのだが、それで話が終わらない難点があるのが正面壁と思い知らされている。今も決定版となる解決案が定まっていない。定めていくための論点整理のための記述が今回の記事になる。

まず何より視覚面での問題が一番大きい。一定以上の真剣さを伴うリスニングの場合、正面壁は好き嫌い関係なく視界に入り続けなければならない景色になる。
音楽鑑賞は聴覚上の体験を目的とした行為とは言え、視覚的に良いとは言えない正面壁とずっと相対していたのでは、オーディオシステムがどんなに素晴らしいものだったとしても至上のリスニング体験だと言えないのではないか?自分はそうと考えている。
リスニングの鑑賞にしても壁の視覚的効果にしても心理的効果を期待するものである。視覚から心理的に望ましくない効果を受けている中では聴覚上の心理的効果の足を引っ張ってしまうことは避けられない。
いくら真剣なリスニングの際には目を閉じていることが多いとは言っても再生中全く目を開けないで鑑賞することはほとんどないので正面壁の視覚的効果から目を背ける訳にはいかない。

良好な視覚的効果を狙うというのもそうそう簡単ではない。音楽再生中に長い時間を正面壁を見続ける訳なので見飽きないというのはほぼ不可能に近い。音楽鑑賞と合わないような視覚効果を用いることも望ましいものではない。
そのため以前の格子を多用した部屋の設計では正面に窓を取り入れて庭の季節の移ろいを眺めたり、飾り棚に置いた展示物を眺めて楽しめるようにしたら良いのではないかと考えた。
正面に鑑賞用の窓を置くのは現在でもそれが良いとは考えている。やはり外の景色というのは何かしら変化があるものであるからだ。変化があるものは長期的に考えても飽きづらさはあるはずだ。
ただ飾り棚はちょっとどうなのかなと思えている。本当に長い時間みていられるようなオブジェや骨董品や美術品などの鑑賞物を自分は持っている訳ではないし、自分がそういうものに飽きずに眺められるほど好きな訳でもない。それにリスニングポジションからでは飾り棚は遠すぎるのでじっくり鑑賞できる距離ではない。飾り棚はあっても良いけれども、それで十分と考えて良いのか疑問になってきている。

そもそも音楽鑑賞以外で同じ壁の景色を見続けるという機会があまりないので参考になるアイディアが少ない。宗教家の修行においては神仏像や絵などと相対して長い時間を過ごすのだろうが、音楽鑑賞趣味は修行ではない。少なくとも自分はその方向で探求するつもりはない。だから視界に同じ壁の景色があるという苦痛は、音楽鑑賞において乗り越えなければならないという解答を是としない。
音楽鑑賞での視覚的効果という意味では、音像のイメージ作りとして演奏者を題材とした写真や絵画や立体作品などを置いてイメージを膨らませるというのもあるかもしれない。ただ様々な音源を鑑賞する中でそれがどこまで役に立つかというとあまり期待ができない。それに絵画や写真を扱う場合、平面を作ることになるので音響調整の支障になってしまう。
窓以外に良い案がないから窓を大きくするかというとそれはそれで音響調整の支障になってしまうのであまりやるべきではないと思う。そもそも自分の案では真剣なリスニングの際には内扉で窓を隠して音響調整するという案になっているので、真剣なリスニングの際には窓からの景色に頼ることができない。
変わり続ける情報で音楽鑑賞に関連したものとして、リスニングポジションでの音圧レベルや周波数特性のモニタリングなどを映すのも1つの案として考えられるが、それが常に視界に入ってくるのが良いのかもやや疑問ではある。モニタを置いたらプロジェクションしたりするにも電気的にも動作音という意味でもノイズの原因にはなりえる。
では何が良いのだろうか。難しいというかそもそも自分の提示した要件を満たすものがないのかもしれない。ただ探求すべき課題であることをしっかり認識できる機会になった。

格子に頼らなずに可変性とデザイン性を持たせた音響調整壁面デザインについて

2022-12-26 00:05:18 | オーディオ
側壁に空気抵抗をかけるような壁面デザインがよいのではないかという案を現実的に落とし込んでいく作業をする。
リスニングルームは他のインテリアデザインと異なり、基本的にはリスニングポジションからの視点での見た目が整然としていれば問題なく、逆の視点からは雑然としていたとしても問題ない。それを利用してみる。
斜め45°のパネルを並べていけばパネルの間の部分はリスニングポジションからは見えない。
パネルの間に音響調整のための拡散材や吸音材などを設置したとしても見えないことになる。
下のシミュレーションではリスニングポジションからの視点では斜めのパネルが並んでいるだけに見えるが、

スピーカー側からの視点ではパネルの隙間に20cm×20cmのマネキンが入っているのが分かる。マネキンの部分は音響調整材を設置すれば見た目の悪い音響調整材を使っても見た目には目立たないが影響は期待できる。


ただこの45°のパネルというのは決め打ちで仕込むほどの自信はないし、若干角度を調整できる方が音響調整効果が期待できるし、別のコンセプトへの変更もできる場合もある。

パネルを回転できるようにしてバーチカルブラインドを回転させて間仕切りにできるというアイディアがpinterestにあった。


https://pin.it/2ZTgnxj


この機構を取り入れてみる。
45°、幅45cmの回転式パネルを並べてみる。斜めが含まれるので寸法計算が煩雑なのである程度やってみると9枚程度必要そうだ。

この設計だと回転中心は壁から159mm離すことになるが、ちゃんと360°回転できない設計もどうかと思えてくる。
壁に隙間つくって360°回転できるようにするとどうなるか。

パネルの間に音響調整材を入れるから隙間があっても問題ないんじゃないのかなあと思うところではある。
パネルが回転するということはパネルの間の音響調整材の設置は固定式の棚を使うことはほぼ不可能である。可動式の棚を使うことになるのではないか。つまり音響調整材の設置は建具で対応するのではなく搬入や搬出の自在な家具での対応ということになる。

仮想リスニングルームの壁面デザインについて①

2022-12-23 12:50:10 | オーディオ
新たに仮想リスニングルームの設計を一からやりなおそうという件で、
反射をなるべく天井を経由した間接音が多くなるのでは良いのではないかと考えた。
では壁面を上向きに斜めにすれば良いのではないかと思ったりもするがそう単純でもないような気がする。

耳よりも下方のエリアの壁面を上向きにするとレンズのような効果を発揮して、本来一度の反射では耳に届かないような音も耳に到達してしまうケースが考えられる。
垂直的な断面図で表すと以下のようになる。

無処理の場合の断面図は以下のようになる。角度が急ではないのであまり音波を上に持ち上げる効果が発揮できていないように思える。


では、耳よりも上では上向き斜め、耳よりも下では下向き斜めにすれば良いのではないかということになる。

以下はpinterestの参考画像。


この画像の場合はあまり問題にならないのだが、耳よりも上では上向き斜め、耳よりも下では下向き斜めというのを完遂してもどうなのかなという疑問は生じてくる。
何故かというと、耳よりも下のエリアを下向き斜めに傾斜させて得られる事はなんだろうか?それは床方向に反射させる割合が多くなるということである。
耳に届く間接音のうち、側方からの反射音が減って床からの反射音が多くなることがあまり良好な結果につながるとは考えづらく、床からの反射を増やすことを支持するような言説を知らない。
側壁から反射してリスニングポジションに入射する音をあえて、側壁→床→リスニングポジションにするメリットとして到達するまでのタイムラグが増えるのでそれを期待してというのもあるのかもしれないが、床を経由したところで到来時間の延長はあまり期待できない、少なくとも天井経由したものよりずっと延長時間は少ない。
そもそも、早期反射音に関しては耳よりも低い位置の反射音は傾斜させるにしろさせないにしろ、スピーカーが耳の高さに設置されていることを考えれば下方向のベクトルが入っているので遅かれ早かれ床に反射する。
以上から耳から下の位置の反射面は上方向に傾斜させることも下方向に傾斜させる意味もあまりないように感じられる。
では拡散させるかということにもなるが、垂直方向の拡散はあまり意味がない気もする。床に反射するか、早期に耳に入ってこなくてもいいはずの音が入ってきてしまう原因になりえるからである。水平方向の拡散もしくは二次元的な拡散、吸音などが適切であると考えられる。

耳の高さ周囲は上方向に傾斜させるのが良いとして、高所はどうするべきかというと低い位置の話と同じ理屈が通るように、傾斜させようがさせまいが、スピーカーが耳の高さあたりに設置されているのであれば、高所の初期反射面に到達するような音波は上方向のベクトルを持っているので遅かれ早かれ天井に反射する。なのでそのあたりも傾斜する必要性があまりないように感じられる。


ハイレゾストリーミングのインフラの突破口になるかもしれないTaktina

2022-12-21 08:34:01 | オーディオ
https://av.watch.impress.co.jp/docs/series/dal/1464767.html
“ハイレゾストリーミング再生”を支える「ITF-NET AUDIO」「Taktina」って何?

上記の記事を読んで、ようやくストリーミングのハイファイも整ってきたなという思いだ。
日本国内でのストリーミングはまずサービスの選択肢が少なかった。TidalやQobuzなどが国内提供されず、mora qualitasは曲数が微妙。Spotifyはカジュアルすぎる。
そこにamazon musicやApple musicがハイレゾ参入でかなり風向きが変わると思われたが、操作アプリが限定されていたり不備があったり、勝手に設定が変えられたりするなどあまりオーディオマニアには十分な音質や使い勝手を確保できないものという評価が主ではあった。
自分も視聴用で新しい音楽を探すものと割り切って扱っていた。

ただ上記の記事を見るとTaktinaはピュアオーディオで音楽配信の利用が十分にできるような仕様に尽力しているようで期待が持てた。
また出力中の楽曲のbitや周波数を表示するなどして内部で勝手に設定を変えられているというような何されているのか分からないという不安を感じさせない透明性を確保しようとしている点が好感が持てた。

透明性がない技術はあまり自分のコンポーネントに入れたいとは思わない。企業独自の技術だけどその詳細は教えない、でも音は良いよみたいなのは正直好きではない。
出音の差別化のために何をやっているのか信用ならないからだ。デジタル部分だと理屈上は大きく違いが出ないはずなのに、技術情報が公開された一般的な技術を用いて出力した音と比べてブラックボックスの独自技術で出力した音が大きく違ったとしたら、独自技術がすばらしいというより視聴くらいの短期間では良くなったように思わせる加工をしているんじゃないかと疑いたくなってしまう。

ただやはり配信は通信の信頼感などを考慮すると不利は否めない。繰り返し高音質再生して楽しみたいと思うようなお気に入りの楽曲はやはり購入してローカルに保存して再生するのが基本になるだろう。そう考えると配信は探索用、試聴用寄りの利用がメインにならざるを得ず、結局そこまで利用法が変わらないような気もしてしまう。
ただハイレゾ音源の質が良いかどうかなどの判断ができるという意味ではやはりそれなりにしっかり配信のハイレゾを出力できるTaktinaは自分としても有用と思えるものであると考えられる。

ITDG10msを確保したリスニングルームの構成(離れ小屋ver)

2022-12-19 14:50:26 | オーディオ
ITDGを十分確保するという目的でリスニングルームの外形を設計した場合に導き出される部屋の外形について前回の記事で扱った。

ただそれは必要最小限の形状であり、実際は形態が複雑すぎると建物の設計として逆に脆弱化したり作りづらかったりすることもあるし、トイレや音の出る機器を遮断する空間など他の空間も必要になってくるので、前回の部屋の形のままが最高というわけでもない。

別荘としてリスニングルームを考えた場合一日の生活の全てに必要なアメニティが揃えることが必要であるが、その場合浴室や洗濯機を収納する部屋なども一緒に設計しなければならない。
ITDGを10ms確保したリスニングルームの形状で別荘を作ったと仮定していろいろ考えてみたが、あまりうまくいかない。空間を有効利用してパズルのように組み替えたりしてみるが、結局のところ今考えているのは仮想のリスニングルームではあるので浴室を作るとしてどのくらい使うのか重要視するのか、浴室を設置するスペースは確保しつつも設置するかしないかは後で決めるという想定なのか、仮想であるが故に決まらない部分があるため、また収まりもあまり良くない感じもあり、こちらは一度棚上げすることにした。

このリスニングルームを離れ小屋と仮定しての設計の場合トイレや冷蔵庫の防音スペースなどは必要であるが、それ以外の浴室などは母屋にあれば十分なので必要ない。その場合このリスニングルームの形状は収まり良く配置できる。





上方の斜めになっている部分はフラッターエコーや定在波の軽減に役には立っているが、建築上の支障があるようであれば直線にしてしまっても部屋の広さはそこまで大きくはならない。


複雑な形状をしているので定在波の正確な把握はできないが、単純な直方体と考えると縦横高比はおおむね1.79:1.56:1で縦横比があまり理想的とは言えないが悪いというほどでもないという感じではある。
さすがにこれくらいの大きさの部屋であると25Hz以下も理論上でも出るようにはなるようである。


部屋の形状をとりあえず決めたところで、反射波を上にあげてから上から拡散波を降らせるような壁面設計を今後考えていきたいと思う。

ITDGから逃げない設計を最初から考え直す

2022-12-16 22:29:01 | オーディオ
前回の記事でフラップを使って空気抵抗をかけて広々とした響きにすればいいのではないかと考えた。
だがそれを実践した設計を考えようとしたがあまり思うようにいかなかった。
やはり反射を何かしらの方法で制御しようとして壁際に何か仕掛けを作ると結局反射面が近くなってしまいInitial Time Delay Gap(ITDG)が短くなってしまい、広く感じる要素を入れると同時に狭く感じる要素も入ってしまう。

そんなわけで、そもそもの部屋のITDGが十分大きく余裕があってはじめて反射面の制御の自由度が上がるのだろうと考えられる。
部屋の形や大きさの設計をITDGを効率良く極力大きくすることが仮想リスニングルームの一番最初に重視すべき点なのではないかと思うようになった。
ITDGを大きくするにはスピーカーとリスニングポジションの近くに壁を設置しないことが基本となる。
ステレオスピーカーの配置を2.5m間隔で正三角形上にリスニングポジションを設定し、スピーカーとリスニングポジションの1.8m以内には壁を設置しないという設計を考えることにした。側壁の一次反射面はITDGが短くなりやすいのでその部分はさらに壁を遠ざける必要がある。


それを実現する最小限のスペースの寸法は以下になる。


シミュレーションでのITDGは10ms近く確保できることになる。拡散や吸音での対応と違って、直接音の到来から10msの間は床からの反射音以外に直接音に混入するものがないため音の明瞭さや開放感を得られる可能性が高い。


全体的な反射波の挙動を見てもあまり偏りがない空間になっている。


コムフィルタ効果のシミュレーションを行ったが200Hzが膨らみそうであり250Hzが減衰しそうではあるがそれ以外に極端な偏りはなさそうな気はする。


リスニングルームの核の部分の間取りとしてはこんな感じである。



建物として他のアメニティを入れたいし、アメニティを含めた全体的な建物として合理的な形にしたいし、拡散や吸音や反射のコントロールなどを入れたいとは考えているが、エッセンシャルな骨格部分の設計をこの形としてそこから肉付けしていこうと考えている。


仮想リスニングルームをまた少し考えてみる。

2022-12-10 23:34:37 | オーディオ
以前に側壁を格子戸をしきつめて、その内側に棚を敷き詰めて、棚の中で音響調整すればいいという結論になったが、結論としていた根拠は可変性を極力多くしつつも、居住性を確保したという理由であった。



その設計も少し疑問になるような引っかかりがあり、そこに手を入れられそうなので再び考察してみる。
改良の余地ありその1は格子戸の部分である。戸の構造なので剛性が確保しづらいため共振などの問題が起こりやすい。そして格子は拡散効果も期待できるが規則正しく配列されているのでコリメーションエコーが起こる可能性も考慮しなければならない。
格子の配列や材の大きさなどに変化を持たせればコリメーションエコーは防ぐことができるが、そんな特殊な格子を作って貰えるのか、自作するとしたら作って見た目上まともなものになるのかという問題がある。
そして側壁を格子戸で覆うほど多量に使用するため、格子にネガティブな音への影響があった場合に、その影響が結果的に音響に非常に大きな結果をもたらすおそれがある。
さらに格子の後ろの棚でさらに音響調整をするはずなのだが、格子が見た目の悪い音響調整材を目隠しする効果も期待している。ただその目隠しがうまく隠れるのかという疑問もある。

そしてこの間の考察で、壁に入射する音をなるべく天井に反射させて天井から後期反射音を供給するのが良いのではないかという案を出したが、このような設計をしたくても壁面が棚である場合、上方に音を反射させようとしても棚板で防がれてしまうので、格子+棚ではそのような音響調整を行うことができない。可変性を最大限持たせたつもりではあったが、明らかに試行錯誤できないパターンが出てきてしまった。

部屋を新たに設計する必要性があるように感じているのは上記のような問題の解消が目的である。まだ詳細には詰められている訳ではないが、普通の壁の内側に折り戸のような機構で動かすことができる2つめの壁を作ると良いのではないかと考えている。

位置を変えることのできる壁を使って、スピーカー側から動き出すときに空気抵抗が大きくなるような配置にする。




板をこの方向にすることで初期反射音の方向を逸らして初期反射音の量を小さくする。初期反射音の到来を遅らせる。そして反射音が前に進みづらくなり、床があるから下にも進めないなら上に進みやすくなるので相対的に上からの後期反射音が増えることが期待できる。

反射波の5回分のシミュレーションでインパルス応答を見てみると、棚状に垂直に板を設置した場合


空気抵抗を大きくする方向に設置した場合


明らかに反射波の到来が遅れているようなシミュレーション結果にはならないが、音像の障害になる反対の側壁からの反射波を後者の方が抑制しているのが分かる。

500本分の音波の分布を見てみると、
垂直な棚板


空気抵抗をかけた板


音波の分布の偏りが後者の方で減っていることがよく分かる。
このような板を設置できるような部屋(だけれども普通の部屋にもできたり、別のアイディアにもできたりするような可変性もある部屋)を設計してみると良いのかもしれない。