マネタリストであるノーベル経済学賞受賞者のミルトン・フリードマン氏が16日、死去した。
もともと第2次世界大戦後の世界各国の経済政策は、不況期に政府が公共事業などによる積極的な財政政策で景気を浮揚させるケインズ主義が主流であった。
ケインズ主義が全盛だった50~60年代は、ミルトン・フリードマン氏の主張は異端視されていたようである。
しかしながらが、70年代に入り、先進各国が、不況とインフレが同時進行するスタグフレーションに見舞われ、政府の肥大化に伴う財政赤字の拡大や経済活力の低下が問題になると、同氏の理論がクローズアップされるようになった。
その結果、政府の役割として、規制緩和や構造改革を進めることの重要性が受け入れられ、近年、欧米の経済政策における理論的支えとなってしまうのである。
ところで私は、先進各国が不況とインフレが同時進行するスタグフレーションに見舞われた要因は、石油ショックや生産性のない軍備拡張(冷戦)にあったと考えている。
ミルトン・フリードマン氏の理論が注目されはじめてから、運良く、米ソの冷戦終結に向けた取り組みが始まり、このことがデフレの到来となり、また軍備より生産性の高い政府支出への転換を引き起こすなど、経済にプラスの要素となったわけである。
運良く経済が好転したため、ミルトン・フリードマン氏の「インフレは常に貨幣的な現象である」とか、「減税や規制緩和による投資の促進が生産力向上と物価安定につながる」という市場原理主義がまかり通るようになってしまったが、これは間違いだったと考える。
「インフレは需要が供給を上回ることによる現象であり」、「減税は需要が見込まれる環境でないと投資に向かわない」し、「規制緩和には投資を促進する面と、他の投資
・需要を減少させる面がある」ということが、バブル経済崩壊後の日本で証明されたからである。
また、市場原理主義は格差社会を作ってしまった。
■米国では、ブッシュ政権が、レーガン政権の路線を基本的に引き継いだため、貧困層が増大した。
■英国では、サッチャー政権で貧富の差が拡大したため、ブレア政権は「第三の道」を掲げて、市場主義と政府関与のバランスを探った。
日本では「格差社会」が顕在化しており、ミルトン・フリードマン氏の理論はとてもノーベル経済学賞を受賞するようなものではなかったと思うのである。
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