財務省は、2006年度の国の一般会計の税収見積もりを当初予算より4兆4000億―4兆5000億円増額修正し、50兆3000億―50兆4000億円にする方針を固めたようである。
これによりすぐに議論になるのが来年予算の国債発行額の抑制であろう。
これは、政府が国債発行額(需要)を大きく減らしても、2007年度も税収増が続くという極めて短絡的な考えによるものである。
ところでリチャード・クー氏は、「9/23付け週刊東洋経済」にて次のように主張しているまる。
今、日本の名目GDP成長率は2%くらいだが、税収は7%も伸びている。税法上の損失繰延期間が終わりつつあるからだ。問題は企業の資金が税金の支払いに
回ることを引き換えに、需要がどこかに落ちるリスクがある。
税収の伸びに見合って経済や民間資金需要が拡大していれば問題はないが、ほかが一定で税収だけが増えると、今度は景気にマイナスに働く。
だから、税収が伸びたからといっても、すぐに財政赤字削減に充てるのではなく、場合によっては歳出として使うことも考えなければならない。減税や公共事業をやるべき局面が来るかもしれない。」
このことは、正しい分析だと思われる。
なぜなら、景気は絶好調でもないのに、税収は最終的に予算見積もりの10%以上も伸びているからである。
だとすれば、税法上の損失繰延期間が終わりつつあるという分析は正しく、税収を増額修正した分を財政赤字削減に充てるということの愚かさが見えてくるわけである。
残念なことに、安倍首相は所信表明で、19年度の国債発行額を「18年度以下」とする方針を表明している。
また、財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は、可能な限り国債発行額を抑制する(25兆円)旨、諮問する見通しである。
これを実行した場合、2006年度との比較で、10兆円程度の(税収増3~5兆円+国債発行額減5兆円)のマイナス需要となるため、余程の外需効果がない限り、景気は腰折れする可能性大と思われる。
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