「小さな政府(小泉構造改革)」=格差社会

格差問題を中心とした考察 ※コメント、トラックバックは受け付けません

小泉構造改革の理論的誤り

2007年07月17日 | リチャード・クー氏

リチャード・クー氏は著書の中で、小泉・竹中コンビ構造改革(供給サイドの改革)を推進する上で参考にした1980年代アメリカと、日本との経済環境の違いを分かり易く説明している。

要約すると次のとおりとなる。

【当時の米国の状況】 → 短期金利22%、30年国債利回り14%
(需要>供給でインフレ)  貿易収支は大幅な赤字、ドルは暴落寸前

日本経済の状況】      →  10年国債利回りでさえ1%台という状況
(需要<供給でデフレ)    貿易収支は大幅な黒字、円は常に円高
                                   基調
 

このように当時のアメリカやイギリスと正反対の状況下にあった日本において、小泉・竹中コンビは、需要を大きくするのではなく、供給側を絞っていく暴挙に出た。
これが構造改革の理論的誤りである。

このことに多くの日本人は気がついていない。
経済学者でさえこの誤りを指摘できないのであるから、仕方ないことであろう。


ただ、過去の歴史が語るように、国民の多く何か(この場合「改革」)に熱狂している場合は間違った方向に進んでいることが多いものである。

また、このとき国民を間違った方向に導くのはマスコミ(大新聞、中央テレビ局)である。

例としては 第二次世界大戦」
        「日米安保闘争」
               「石油ショック時の買い占め」
               「金融機関(不良債権)処理」
               「短絡的な規制緩和」
        「郵政民営化」 

などが上げられる。

マスコミは、国民に歯止めをかけるなど役割を果たすどころか国民を煽っていた。


リチャード・クー氏は、「小泉氏の構造改革には恐ろしく非効率な土地利用を是正することは含まれていない」としている。

クー氏によれば、「大胆に土地の有効利用を促進することが今の日本の需要不足を解消する最善策」となるのである。

有効利用を促進する真の構造改革として「建ぺい率・容積率制限」「日照権の問題」「借地借家法」などの規制緩和が挙げている。

確かにこういった真の構造改革がなされていれば、日本は超円高に悩まされることもなく、海外への工場移転や偽装請負といった格差を生み出すような方向へは進んでいなかった可能性が高い。

 「第一章 日本経済が陥っているバランスシート不況より p26~28」



2 コメント

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円安じゃないでしょう (通りすがり)
2007-11-12 16:14:39
上記のリチャード・クー氏の指摘は、現在の状況とは一致しません。
円相場は、円安に推移しています。対ドルレートでこの5年くらいで比較すると、1割くらいの円安ですが、対ユーロ等などドル以外の通貨比較ですと、実に3割くらいの円安になっています。
円安に推移しているため、輸出基調の大企業は利益を出しますが、地方企業を中心とした内需は振るいません。
日本がデフレ基調にある(物価が下がる分実質金利が低い)としますと、日銀の金利調整政策はむしろ「賃金が上昇しないのに物価だけ上がる」スタグフレーションの危険があるのではないでしょうか。
いたずらに「過去の歴史」などというものに捕らわれず、現在の状況を直視すると、為替相場を回復し、国民資産の目減りを防ぎつつ国際競争力を回復する、つまり構造改革しかないと思えます。
リチャード・クー氏の議論は、構造改革反対論者から見ても、粗雑すぎるのではないでしょうか。
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短期的に円安と言われても (nsp20020126)
2007-11-13 20:03:48
表題の「円安じゃないでしょう」がよく理解できないのですが、 「円高じゃないでしょう」が正しいのでしょうか?
ここ最近の日本経済は財政政策に頼らず(正確には財政は企業の貯蓄部分を穴埋めはしている状況)、金融政策に頼っている状況です。
こうした施策は輸出偏重の経済、円高阻止の為替介入(円安は放置)、円資産の海外逃避という状況のもと成り立っています。
しかしながら、このような無理な状況はいつまでも続くわけはありません。
円資産が逆流するとき、超円高、一方で原油先物市場等の暴落が起きます。
超円高は、日本国内の工場をさらに国外移転させることになります。
その際に、「国際競争力を回復するには構造改革しかない」と主張する構造改革論者は丸坊主になっていただく必要があります
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