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nishimino

にしみの鉄道情報局付属ブログ

城郭考古学

2021-10-31 | 書評


城郭研究の第一人者、元奈良大学学長の千田嘉博教授の著書「城郭考古学の冒険」。城郭研究はかっては趣味の範疇でしたが、同氏はそれを学問にまでした研究者で、最近ではテレビの城郭番組にも頻繁に出演されています。

この本では、室町時代末期から戦国期から江戸期の城についての発展の過程が紹介されています。
日本の城は室町時代末期から江戸時代初期が、築城の全盛期ですが、戦国時代が終了したため、築城技術が江戸時代初期で、凍結されていると言われています。西洋の城が17世紀18世紀と戦乱が続いたため、築城技術が進化して、大砲などの砲撃に対応するため、高層建築を避けるようになったのに対して、日本の城は鉄砲の時代で、城の進化が停止して天守などの高層建築がそのまま残ったのというのは少し意外でした。
たしかに、鎖国が終わって入ってきた西洋の築城技術が五稜郭ですので、日本の城は見た目が一番美しい時期に軍事要塞から、政治的拠点に変わったのは幸運だったと同氏は述べています。

探偵少女アリサの事件簿1

2021-07-09 | 書評


今回は東川篤哉の「探偵少女アリサの事件簿 溝ノ口より愛をこめて」を紹介します。この作品は、2017年に本田望結、田中圭主演で単発ドラマ化されています。アリサのイメージが彼女なのはなんとなく理解できますが、原作では10歳なので実年齢は少し上なのですが。

テレビドラマはオリジナルストーリーで、かなりのシリアスな展開でしたが、原作の方はどちらかというと、同じ東川篤哉の謎解きはディナーのあとでシリーズに近いテーストで書かれています。

4編の短編で構成されていて、副題の溝ノ口より愛をこめてからわかるように川崎市北部の南武線沿線が舞台となっています。
もうひとりの主役の便利屋の視点から述べられています。1話目で、便利屋が絵のモデルを頼まれ、その屋敷で殺人事件が発生します。その数日後、便利屋がアリサの親に子守として呼ばれ、アリサとともに事件の調査をしていきます。以降全ての話がこのパターンで展開していきます。1話目は絵に関係する話、2話目はアリサのお使いを見守る話で、3話目は便利屋の浮気調査にアリサが関わる話、4話目は便利屋が草野球の助っ人になり、マウンドで人が死んでいた話となっています。

サイエンス・アイ新書 ダムの科学

2021-04-25 | 書評


ここ数年、ソフトバンククリエイティブは新書に力を入れていて、以前は講談社ブルーバックスが唯一無二だった科学系の新書にもサイエンス・アイ新書シリーズで様々タイトルを出版しています。

その中でも名著と言えるのがダムの科学。現在は改訂版が出るほど版を重ねているようです。近年ダムはダムカードが配布されるほど人気が高まっています。その中でこの本は評価されているようです。どちらかと言うと、発電というより治水利水と土木工学という面で、この本はダムを扱っています。

いくつか気になった所がありますが、そのうちの1つに環境関係で、戦前や戦後早い時期に建設された上流部のダムでは、土砂でダムが埋まり砂防ダム状態になっているところが少なからずあります。特に中部地方のダムは砂が溜まりやすく、大井川支流の千頭ダムなどでは総貯水量の98%が砂で埋まっています。
最近のダムは排砂システムを備えており、下流に対する影響を考慮しながら、下流に砂を流す方式を採用しており、既設のダムへも排砂の仕組みを取り入れているそうです。

関西人はなぜ阪急を別格だと思うのか

2020-10-08 | 書評


関西人ではない自分は実感が無いのですが、関西では阪急は他の私鉄に対して別格だと言われています。鉄道ファン的には車両整備技術が高い以外は、阪急が別格という感は無いのですが。

交通新聞社新書から発行されたこの「関西人はなぜ阪急を別格だと思うのか」は阪急の歴史、阪神との関係から神戸宝塚方面の路線網の成立や京阪との関係からの京都線の成立、現在のサービス、阪急のブランドイメージを作った一翼の宝塚歌劇などが述べられています。ただ、他の在阪私鉄と比較してどこが阪急は別格かは、どこを読んでもよくわかりません。
近鉄、京阪、南海、阪神及び国鉄JRと沿線を比較した場合、沿線は神戸線宝塚線には高住住宅街が若干多いという感がありますが、京都線はあまり高級住宅街が多いという感はありません。阪急ブランドの神通力が通じる範囲は、大阪の北摂と大阪市内、兵庫県内東部ぐらいで、あまり京都市内や京都線沿線だと阪急ブランドや阪急百貨店の包装を有難がる話は聞きません。まあ京都線沿線と京都市内は一部で言われる阪急文化圏ではないと思えばそれまでですが。

阪急梅田駅の雰囲気や駅ナカサービス、車両のマルーン塗装、木目の内装などこだわりや阪急独特の雰囲気を感じられる本で、関西方面ではこの本の売れ行きは良いそうです。

ビブリア古書堂の事件手帖6

2020-08-17 | 書評


ビブリア古書堂の事件手帖シリーズの6巻目。この巻で1巻から続いた伏線をすべて回収するというストーリーになっています。
太宰治の晩年の初版のアンカットの謎もこの巻で解けます。五浦家と篠川家の過去の間接的な繋がりも明らかになります。

1巻に述べられていますが、昔の本は製本時に外側が切断されていなくて、購入した人間がペーパーナイフで切り開く必要があったようです。自分は見たことはないのですが、古書の世界では割と知られた製本方法だそうです。このアンカット状態の太宰治の晩年がビブリア古書堂の事件手帖の1~6の根底に流れる物語となっています。