ADD?先生の発達障害児 教育応援サイト

ADD?傾向のある塾教師がADHDやアスペルガー症候群の子にどうかかわり教えたらいいのか模索していくブログです。

ハンディーのある小学生の勉強

2009-05-28 14:24:16 | ADHD
コメント欄で、がんもさんから次のようなご相談をいただきました。

1対1対応はできているけど5の合成がまだの知的ゆっくり小1娘のことを思い、「5の合成をおしえなきゃ」と算数のカテゴリーの過去記事を覗いていました。

そのうち、抹茶母さんのブログ等で「教えない姿勢」の記事を読み・・・なんか悲しくて泣けてきました。
私は今までなんと教え続けてきたことか。
昨日は娘がお風呂に入って貼ってあるひらがな表を見ながら(その時は教えていなかったのに)ぽろぽろ泣き出し「勉強きらい」と。

のんびりしていられる幼稚園時代にこちらを知っていれば方向転換できたかもしれません。でももう小学校に入ってしまい、毎日宿題が出て授業もどんどん進んで・・・。教えないわけにはいかない、本人のやる気を待っているわけにはいかない気持ちもあります。

もう待つ教育をするには遅すぎるのか、それとも授業についていくなんてすっぱり諦めて、本人がやりたがった時だけ一緒に少しずつやる方がいいのか、どんなやり方がいいのか・・・頭の中がぐるぐるまわっています。

大きなお子さんを持ち、私のような状況に陥っている方に先生ならどんなアドバイスをなさいますか。

ハンディーキャップを持っている子に教えるときは、まず「教えない」という姿勢は難しいと思います。
以前、知的障害のある女の子の学習を見ていたことがあるのですが、その子は教えてもわからないだろう……という判断のもと、きょうだいで仲良く遊ぶことは毎日していたものの、親から直接細かく教わることをしていませんでした。
すると、私とはじめて会った小2の冬まで犬と猫のちがいもあやふや
だったのです。知っている語彙の数は2歳前半の子のレベルでした。
発達の検査では、3歳児の能力という結果でした。
その子は、週3回というかなり密に通ってくれていたこともあり
いっしょに学習を始めて2ヶ月たたないうちに
語彙は何十倍にも増えて、かけざんも覚え、楽器(鍵盤ハーモニカ)も簡単な曲が弾けるようになりました。

これほど短期間に劇的に進歩したのは、
おそらくそこまでの伸びは潜在的に持っていたからだと思います。
あまりにも周囲がその子に教えなかったので、伸びるべき部分がそのまま停滞していたのだと思います。
(私が勉強を見たから伸びた……というのではないということです。
非常に上手に熱心にお子さんを指導している親御さんの子の場合、虹色教室に来たから急激に進歩したということは起こっていません。その子の潜在的な伸びる範囲があるのだと思います)
ですからがんもさんがこれまでしてきたことは、ゆっくり育つ子にとってけっして無駄ではなく良いことだったのではないでしょうか?

1対1対応はできているけど5の合成がまだ……というお話ですから、
具体物を使ってならなんとか算数の問題が解いていけるレベルですね。
ハンディーのある子の場合、
どこにハンディーがあるか、何が得意かを正確に見分けることがとても大事だと思います。
感覚からインプットする段階に問題がある子の場合、
算数を教えるよりも、感覚的な刺激をまとめることができる
遊びをたくさんする方がプラスになることが多いです。
まず、得意なことを探します。

↑の女の子の場合、目から入る情報の処理は極端に弱く、
3ピースのパズルができませんでした。
が、お笑い番組が好きで、意味はわかっていないものの、
ちょっと下品な言葉などを真似てゲラゲラ笑うのが好きだったので、
耳からの情報は入りやすいと感じました。
そこで、カセットテープを使って、かけざんを記憶したり、
歌や伝承遊びを通して、授業の予習をしたりすると、スムーズに
さまざまなことをマスターしていきました。

目からの情報、耳からの情報といっても、
色が得意、形を認識するのが得意、平面が得意、立体が得意、
動体視力が良い、リズムのあるものが得意、音程があるものが得意など
さまざまです。

まず得意なことから入って、苦手なことをカバーしていくと良いのではないでしょうか。

小学生のハンディーのある子の学習を見ていると
とてもあせってくる気持ちはわかります。何もかも遅れまいとするのではなくて、
今後の学習に影響を及ぼすものにポイントをしぼってマスターさせることが大事だと思います。
1年生のおわりまでに「くりあがり」はマスターさせるなど。
また唱えるだけのかけざんなどは、早めに
唱えて遊ぶのもいいです。
しかし、今は、「勉強いや」という気持ちになっているようなので、あれもこれもは無理ですね。

おはしの持ち方が下手な子に教えるとき、厳しく特訓するより、

食事という「楽しみ」の数だけ、少しずつ学ぶ時間がある

「ワクワク」する数だけ、ゆっくり上達していける

そうしたイメージを抱いて教える方がずっとうまくいきます。

ハンディーのある子に教えるには、
たくさんたくさん「楽しみ」を作ってあげて、
楽しい時間の数だけ、少しずつ自分のレベルを上げていける
ようにしてあげるのが良いと思います。

私も↑の女の子の学習では、かわいいものが大好きな子だったので、
かわいいシールをわけっこして、細かいものを識別する力を磨いたり、数を数える力をつけたりしました。
お菓子作り、工作、好きなテレビ番組を番組表から探したりしながら、
数、時計の読み、文字の読み書きなどをゆっくり教えました。

力んで「教えよう」とするのでなく、1個覚えるのに
100回「ワクワク」がいるのなら、100回つきあってあげよう……と考えていました。そのかわり、「ワクワク」だから何度しても本人は辛くはないのだから……。
そうした教え方で、のんびり構えていたら、見えているのかすら
よくわからなかった子(目の焦点合いにくく空を見つめてぼんやり過ごす子だったので)、
小さなねりけしに書いてある文字を読んでみせるなど驚きの進歩を見せてくれましたよ。


web拍手を送る




最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ありがとうございます (がんも)
2009-05-29 06:17:00
先生、こんなにも早く詳細なお返事を下さってありがとうございます。本当に何度も読み返しました。2つ気づいたことがありました。

・よいとされている教育法をそのまんま取り入れても娘に良いかはわからないこと。これまでもどんぐり倶楽部等、心引かれる形はありましたが、知的障害の娘に適用できるのかわからずもやもやしていたのです。やはりカスタマイズが必要なのですね。(健常児でもおなじかもしれませんが)

・教えてきたのが間違いではないとおっしゃって頂きうれしかったですが、教え方に問題があったと痛感しました。娘の得意なこと、わかっておらず、ひたすら良さそうなドリルのようなものをやらせて自己満足していたような気がします。また、必要なものに絞って教えていくというのも大事だなと感じました。

娘は視覚系が苦手(発達検査の積み木の問題が大の苦手、視覚的LDかもとまで言われています)、でもおそらく耳からの入力と体を使った操作を伴う入力は得意だと思います。幼稚園の発表会で20分程の長いオペレッタをやりましたが、自分以外の役もすべて、歌の歌詞も振り付けもマスターしていました。

「100回のワクワク」のお話、心に染みました。娘もかわいいものが大好き。もっと娘をよく見てワクワクしながら教えてあげられるようになりたい。苦痛や悲しい思いをしないで知らず知らずにレベルアップさせてあげたいと本当に思いました。

甘えてしまって申し訳ありませんが、耳からの入力が得意な小1生の子どもにおススメの遊びや勉強方がありましたら、お手すきの時で構いませんのでご紹介頂けるととてもうれしいです。視覚系得意のお子さん向けはよく目にするのですが、耳から・・は自分でもうまく探せなくています。

先生、お忙しいのに本当にありがとうございました。
娘の学びにとって大きな分岐点になると思います。
返信する
Unknown (ぼくてんのママ)
2009-05-30 17:55:07
すいません、web拍手で中途はんぱに送信されてしまったのでしつこいですがこちらでかきます。
この記事の内容は勇気をいただきました。知的の遅れを指摘されたわが子への療育は徒労なのか、と病院の先生と話していてもそうとしかとれないコメントを数多く言われたので(「自然な欲求がおきるまでまつ」「こちらから働きかけてもプレッシャーになるだけ」「何もしないでプロに任せてください」)プロに任せる頻度も低ければOTのプロの熱意も低い(わざと距離を保っている?!)し、自然な知的欲求がわかなかったからここまできて困っているというのに、と、いつもジレンマでしたが、こちらのブログを見つけてから、これなら楽しみながらできると思い、いろいろ働きかけてきていました。お蔭様で去年からは見違える程度に、文字の読み書きや(下手ですが)、トランプや簡単なボードゲームが出来るようになってきました。本筋から離れるかもしれませんが、私は児童精神科のお医者さんが、児童を相手にする以上、保護者たる大人への正しいケアをしてほしいし、短期的だけでなく長期的な育ちもかんがみて必要な育ちを促すアドバイスをしてほしいと思います。(残念ながらそのような人にはまだあえていません。)
この夏先生の教室に伺う予定があり、とても楽しみにしております。お忙しい中いつもありがとうございます。
返信する