ADD?先生の発達障害児 教育応援サイト

ADD?傾向のある塾教師がADHDやアスペルガー症候群の子にどうかかわり教えたらいいのか模索していくブログです。

トムくんのレッスンの様子を記事にしていただきました♪

2009-08-03 17:40:30 | 自閉症
ごゆっくりさんのyoshikoさんが、教室での2時間のレッスンを記事にしてくださいました。
トムくんは、6才の誕生日を迎える頃、だんだん言葉が出始めた市立小学校の支援級に在籍している7歳の男の子です。
遠方からはじめて虹色教室にいらしてくださいました。

子どもたちが夢中で遊ぶうちに、教室内が散らかってきて見苦しくなってますが、お許しを……。

☆大阪3日目:虹色教室(その1)
☆大阪3日目:虹色教室(その2)
☆大阪3日目:虹色教室(その3)
☆大阪3日目:虹色教室(その4)
☆大阪3日目:虹色教室(番外編:3step工作の例)





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自閉症スペクトラムの子のための工作 と直感の話 1

2009-08-02 07:18:35 | 自閉症
先日、☆ごゆっくりさんというブログの新1年生のトムくんが、虹色教室に遊びに来てくれました。
6才の誕生日を迎える頃、だんだん言葉が出始めたというトムくん。
感覚を刺激する遊びと歌や楽器以外には無関心な様子です。
それだけにトムくんが関心をしるす感覚的な刺激と
音楽はとても大切にしていかなければならないことだと感じました。

トムくんはまだ目的を持って遊ぶという段階にいたっていません。
これまでどろんこ遊びや水遊びなどを通して
感覚を刺激する遊びはたっぷりすぎるほどしてきたというお話でしたので、
そうしたトムくんが慣れ親しんできて心地よさを感じるものに最も近いものを
通して、トムくんが今の段階から一歩、次の段階へ踏み出す手伝いができたら
いいなと思いました。

そこで、トムくんと楽器作りの工作をすることにしました。
トムくんはとにかく音や音程に敏感で、それを強く求める子です。

作る気持ちいい音の刺激

をできるだけトムくんでも参加できる易しいものにして、

気持ちいい音の刺激を得るために、作るという行為をやってみる

という「目的を持って何かをする」という段階の行動を
うながすことができないかと思ったのです。

トムくんは、作る過程では、その意味を感じている様子はありませんでしたが、できた楽器にはどれにも強い関心をしるしました。
振って音をたてるだけでなく
自分でも楽器にボールを入れてみたりして(目的をどれほど持っているかはわかりませんが)積極的にかかわっていました。

自閉症の治療にはさまざまな有効な方法があるはずです。
専門家の意見を参考にしたり、これまで常識とされることをきちんと把握しておくことも大事だと思います。
でも、できるだけ知識という武装を手放して
素のままに自閉症の子とかかわることもとても大事だと思えるのです。

トムくんは、数年前に聞いた歌を歌って見せたり、絶対音感による曲の再現をしたりすることができました。
こうしたトムくんの姿を見て、
もしトムくんが私の子だったらどうするかな?と考えたとき
まずさまざまなクラシック音楽や美しい楽器の音色をいっしょに聴くことで、
音楽を通して言葉のないところで、
トムくんと自分で対等な会話をしていくだろうな……と
思いました。
音楽という分野でトムくんはたちまち先輩となっていくのかもしれませんが……。
また音楽への感性が優れているわけですから、
数学的なものが開花する可能性を大事にして
ドッツカードなどを通した数によるコミュニケーションを試みるでしょう。

そうしたことは、自閉症児への対応
とは違います。
障害はいったん脇に置いておいて
ひとりの才能ある子との、コミュニケーションできる接点を探す
試みです。
トムくんの笑顔と満足そうな落ち着いた様子で
うまくいっているかをはかります。

この日、トムくんは、私のひざに乗って身体をもたせかかり、
かけざんの九九を歌いながら指で表現する私の真似を
うれしそうにしていました。指も真似し、九九も覚えて歌っていました。はじめて九九に触れるのに……
トムくんの音楽への感性は数学につながるかもしれない……という私の勘は間違っていないのかもしれません。

勘……というと、私は以前から何度か書いていますが
ユング心理学で言う性格タイプが内向直感型です。
それで、何をするにも、一番頼りになるのが、一般的には頼りないいい加減なものと思われている直感です。
この直感、自分でコントロール出来るものでなく
「自ずから~」の部分、あちらから勝手に浮かんでくる部分が大きいです。
この直感がどんなものか……というと説明しがたいのですが、
私の場合、表面的な意識が判断した決断の間違いを正したり、修正させたりする
役割をになっていることが多いです。
また私にこれから起こる出来事の重要さを事前に自覚させることもよくあります。

今回、トムくんが虹色教室に来るにあたって、
1年に一回くらいしか感じない強い直感的なものを何度も感じました。
最初は、トムくんのお母さんから妹を連れて行くべきかどうか悩んでいる
という相談を受けたときに、私は軽い気持ちで
「その日は時間に余裕があるので、妹さんを連れてきていただいても大丈夫だと思いますよ。トムくん中心の遊びを展開するように心がけておきます」とお返事したのですが、その日の就寝後、夜中の2時ごろから、外から流れてくる奇妙な音にずっと悩まされ、トムくんの名前が漢字の状態で何度も頭に浮かんでくるのです。
それで、翌日、自分の直感に従って「トムくんひとりだけでのレッスンにした方がいいように思います」と連絡させていただきました。
トムくんのレッスンが終わった翌日の朝方、
目覚める直前のぼんやりした意識の中で、
トムくんと過していた時間の録画ビデオを再生するような夢ともいえないような夢をみて、
ひとつひとつのシーンを確認していく作業をしていました。
トムくんは、何らか私とつながりがある子なのか……波長が重なるところがあるのか……単なる偶然なのか……?
無意識の部分で気にかけているから
こういうことが起こってくるのか、くわしいことはわかりません。
私は、そうした体験をしたときは、いつも意識で理由をつけようとする心を
消して、水面を眺めるように自分の心を覗き込むようにしています。
理由は考えません。ただいろんな思いを手放して
静かにしています。

すると勝手に理由が言葉として浮かんできます。子どものころからそうなんですが……。
それを全面的に信じるのではないけれど、
直感が伝えることとして、真摯に受け取って心に留めて、
現実の自分の価値判断や、行動の参考にしています。

私の直感との付き合いはこんな感じです。匂いで識別したり、気持ちで識別したりするのと同じように、直感は私にいろいろ気づかせてくれる不思議な
感覚です。

写真は
わごむをかけるだけでできるギター
ボタンを入れて、ふたをしめてマラカス
テープにすずをつけて、すず
パックにビー球を入れて、マラカス
風船とガムテープの芯で作るたいこです。



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危険な早期療育、早期教育が子どもの心を壊すとき

2009-07-27 10:38:51 | 自閉症
今朝、知人から「●●のブログを読んでみて。」という電話をいただいて、
さっそく☆自閉症児の母の後悔のブログに一通り目を通させていただきました。
私はこれまで、こうした話を生徒さんから口伝で耳にしたり、
海外で街をあげておこなわれた幼児教育なんかがこうした結果を生んだ話を
目にしたことがあって、その危険を気にかけていました。

このブログでは、TEACCHや視覚支援や構造化
によって問題行動が減り、集団生活に適応できるようになった自閉症の男の子が、
そうした働きかけゆえに、心が崩壊していく様子を記録していらっしゃいます。

「カナー君の心が壊れてしまったのは、我家で実施した療育プログラムの結果だと感じています。
こういうケースもあるということを、皆さんに知っていただきたくて、このブログをはじめました。」という親御さんの言葉をありがたく受け止めて
みなさんにも紹介させていただこうと思いました。

☆カナー君のこと(とうとう大爆発)

この男の子に起こった問題は、自閉症の子に限っての問題でも、療育や支援の種類に限っての問題でもありません。

子どもが、感情や意志や心を持ったひとりの人であることを無視して
親が望む子どもの姿を目標に
「飴とムチ」を使って子どもの行動を、
機械に良い行動をインプットしていくような感覚でかかわるとどうなるか
の結末が書かれています。

障害児のための早期療育も定型発達の子のための早期教育
親が望む子供の姿を目標に、
子どもを操作しよう~大人の計画の上を歩ませようという思いでおこなうと
とても危険です。

最近、
エチカの鏡の横峰式の教育の影響か、子どものやる気は、
子どもの中から生まれるのでなく、
無理やりでも良い行動を取らせて、できるようになったらうれしくて
やる気が出るんだから~
といった、子どもの心に対する鈍感な意見を口にする
親御さんをたびたび目にするようになったからです。

子どもを観察するという言葉が
個性やその子の精神の発達を無視した、大人の都合でどうやって言うことを聞かせようか~という視点からの観察になっていて、

大人による管理、支配がうまくいっていること=
子どもがよくなっている、成長している

と勘違いする方が増えているのです。

これは非常に危険なことです。
思春期までの子には有効で、目を見張る効果が得られるかもしれません。
でも、子どもは、思春期に自立し始め、
自分の意志で自分で決定して生きていかなければならないのです。

そうした時には、まじめにがんばるべきときはがんばると同じくらい
うつ病などのリスクを避けるためにも、
自分の内なる危機を察知して、どこで気を抜くか、どう休むかを選んだり、
何を喜びとするか探し出したり、
自分自身の生き方を模索したりする能力が必要です。

子どもを大人のリモコンで動く機械にしてしまうと、
こうした自立の時期を迎えるとき、
必ずといっていいほど、壊れてしまうのです。

子どもに問題行動があらわれているときというのは、
あらわれる必要があるからあらわれている場合がほとんどです。
成長に不可欠な通るべき段階、
子どもからのSOSなど。

病気でも疲れやすくて休みたいときは、
休んで身体内部の病気の悪化を抑えることが大事で、
休みたい心を無視することや、しんどくてもいかにたくさん仕事を続けるかを重視すると危険ですよね。そうしたサインは早期に受信して
きちんと対応すべきことですから。

ですから、子どもが泣いても無視する、良いときだけ反応するなどして
親や先生が正しい!良い!と思う子ども像、生徒像に
手っ取り早く変えてしまうことを続けることは、
非常に危険なことでもあるのです。

まだうまく説明できていない部分もたくさんありますが、
それはまたの機会に書かせていただきますね。



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短期記憶が難しい子のカード遊び

2009-06-15 12:35:34 | 自閉症
4歳の重度の自閉症の☆くんのレッスンです。
☆くんは少し前に体験したことでも、たずねられると、
部分しか覚えていなかったり、ちんぷんかんぷんの答えを言ったりします。

記憶力を上げたいのですが、
想像力が弱いので、少し前に見たものをイメージとして思い返すことが
困難な様子です。

そこで、目で確認できる
絵カードを使って、3つくらいの短いストーリーを記憶する練習をしました。
「うしさんがも~も~あるいていました。目の前にたんぽぽが咲いていました。向こうからうさぎさんが現われました」

といったストーリーを話して、あとから話に出てきたカードを3枚
選ばせます。

最初はとにかくでたらめにカードを選んでいましたが、
数回遊ぶうちに取れるカードの数がちがってきました。
お話を記憶しておこうとする意欲も少し見られました。



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子どもたちは、とっても愛らしいすてきな子に育っていっています。

重度の自閉症の子が喜んでいたゲーム と可能性 2

2009-06-03 11:49:54 | 自閉症
ルールのあるゲームとしては遊べていませんでしたが、
4歳の☆くんが興味を持って取り組んでいたゲームです。

ニコニコ くるりんゲーム

将棋に似たゲームです。
コマを動かすと表情が変わるのに、とても興味を持っていました。
年代物なので、今は売られていないように思います。こうしたおもちゃに興味を抱くことを知っていただいて、別のもので工夫していただけるとうれしいです。

こうしたます目のあるボードに親しめるようなら、
座標や数(かけざんなど)を教えていくときに、
オセロなどが役立ちそうです。

こうしたゲームに夢中になっているときに、
同時に子どもにとって大切な概念(右、左、上下、表情について、コマの進む数)などを繰り返し告げています。
覚えたかは確認せず、自然に使っていると、
理解してきます。



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重度の自閉症の子が喜んでいたゲーム と可能性 1

2009-06-03 10:01:07 | 自閉症
4歳の重度の自閉症の診断を受けている☆くんのレッスンで
☆くんがとても喜んで熱中していたゲームを
紹介します。

ショッピングリスト

です。
カートの中に、リストを見ながら、同じ食べ物を探し出してきて
全て集めます。

☆くんは、すばやくミスなく見つけることができて、
1枚目の8個をそろえた後で、もう一枚やりたがり、
2枚目をやりとげたあとで、さらにもう一枚やりたがりました。


こうした熱中したゲームを把握しておくと、
集団生活等で自立を支援する際も、どのような手立てが有効かわかりやすいです。
たとえば、親しくさせていただいている『ごゆっくりさん』というブログのyoshikoさん(教材の作り方や自立の支援の仕方等非常に役立つブログです)
☆スケジュールバーのような
ものが、☆くんの将来にに役立つのでは……?
と推測できます。

ただ、写真より、ショッピングリストのイラストやカラーの
雰囲気で、リストを作った方が、
☆くんが受け入れやすいかもしれません。

☆くんは困難も多い子ですが、
可能性もたくさん持っている子です。
今回、2回目のレッスンでしたが、
前回の遊びが少し発展し、
私の方を見ては、ニコッと微笑みながら、遊ぶ時間がたくさんありました。


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重度の自閉症の☆くんと感覚統合の話

2009-04-06 15:26:33 | 自閉症
前回の記事から少し間があいてしまいましたが…
重度の自閉症の☆くんのレッスンの続きです。

☆くんには重度の自閉症という重い診断がくだっています。
しかし、実際に☆くんといっしょに過ごすうちに、
私は少し明るい気持ちになりました。
☆くんは学ぶという姿勢を持っているため
さまざまな能力が働きかけ次第で伸びていく可能性を感じることができたためです。

☆くんのお母さんには、感覚統合の遊びが載っている本を紹介した
のですが、実際、本を見ながらこうしたトレーニングをしようとすると
難しい気もしました。
お家には、マットやトランポリンはありませんし、
そうしたものを用意したところで、☆くんができるかは怪しいのです。

それよりもこうした本からは、働きかけのヒントだけもらって、
☆くんとする遊びは、
☆くんの今の発達の課題や
本人が熱心に取り組める敏感になっている分野の活動を中心に
していくのが良いと思いました。

☆くんは身体に力が入らない様子で、ぐにゃっとした姿勢をよくしています。

寝るときにふとんの上で、
ごろごろ横に転がることができるかさせてみます。
ついでに腹ばいになる 座る ひざで立つ ハイハイする
などのトレーニングが、
コミュニケーションを取りながら楽しんでできる
ように持っていけると良いのではないでしょうか。

タオルを使っての引っぱりっこや、
ズボンにタオルを少しはさんでしっぽにし、追いかけてタオルを取りに行く
遊びもいいかと思います。

公園の少し高く段になっているところを
手を持ってわたらせてあげたり、
滑り台やブランコをさせてあげるのもいいと思います。

その際、コミュニケーションを取りながら
笑顔を引き出すようにして
遊ぶことが大事ではないでしょうか。




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重度の自閉症の☆くんと可能性 1

2009-04-01 16:27:44 | 自閉症
先日、重度の自閉症の診断を受けている4歳の☆くんが、
お母さんといっしょに虹色教室に来てくれました。
虹色教室では自閉症の子に対する特別な療育をしているわけではありません。

定型発達のさまざまな月齢の子たちと同じく
遊びを通して、

その子の発達段階で非常に敏感になっている吸収のいい分野の
最近接領域を見極めて働きかけていく

ことを繰り返していくだけです。
子どもの内部からの成長しようとする力の助けを借りると、
障害児教育の専門家というわけではない
親御さんのちょっとしたサポートが
子どもに大きな変化を起こすのを何度も見てきました。

それで、重度の自閉症という診断を受けている☆くんのレッスンでも
☆くんができることと手伝ってもらったらできることの間、
つまり今後働きかけ次第で伸ばしていけると考えられる
可能性の領域をさぐりました。

すると☆くんはできていることがたくさんあり、
周囲の環境次第で伸ばせそうなこともたくさんあるのが
見えてきました。

☆くんと積み木遊びをする上で気になったのが、
☆くんがでたらめなおもちゃの扱いをするたびに、
お母さんが即座に指示を与えて、「~するのよ」と教えているので、
簡単なことも自分で解決している姿が一度も見られなかったことです。
例えば、何か落としてしまっても、「拾いなさい」というお母さんの
言葉があって拾っているので、

落とした拾う

という問題の解決法を自分で思いつくことができるのか
わからなかったのです。
積み木をつないで線路を作る方法をして見せたときも、
「ここに積み木を置きなさい」とお母さんの指示があったので、
☆くんが、

私がつないでいるのを見て自分も同じように真似てみよう

という判断をして動けるのかわからなかったのです。
お母さんの指示が多いと、☆くんはたびたび混乱して
積み木をぐちゃぐちゃと散らかすだけの行為に向かっていました。

そこで、お母さんには、いったん☆くんへの声かけをやめてもらって、
私と☆くんのふたりで遊びながら、
☆くんがでたらめな試行錯誤の後でどのような行動を取るのか
観察しました。
すると、☆くんは、数回やってみてうまくいかないと、
私のやり方を見て真似しはじめたのです。
自分からずんずんずんずん線路をつないでいきました。

☆くんのレッスンの様子は次回に続きます。



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自閉症の子への 親子レッスンの記事を整理しました

2008-12-09 13:21:47 | 自閉症
自閉症の子への親子レッスンの様子です。
毎回が手探り状態です。子どもの笑顔が見れるとうれしいです。

自閉症の4歳のふたごちゃん‥できないところよりできるところに注目する

できないところよりできるところに注目する2

自閉症の子に言葉クイズを解かせるコツ


同じことばかり繰り返してしまう自閉症の子



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特別支援教育は本当に自閉症スペクトラムの子に役立っているの? 2

2008-12-02 09:41:38 | 自閉症
前回の記事に妹さんからのコメントで、
成人のアスペルガー症候群の疑いのあるお兄さんが、
自己愛性パーソナリティー障害にもなっている可能性が高い…ということで、
接し方についてのご質問をいただきました。私は医者ではないので関連著書にある知識を紹介することしかできないのですが、近いうちに「自己愛性パーソナリティー障害」についての記事を書くことにしますね。


前回の記事の続きです。
特別支援教育とは、どのようなものであったらいいのでしょう?

以前紹介した「これは便利!5段階表」という自閉症スペクトラムの子に
感情のコントロールを教えるための本のなかに、こんな話が載っていました。

サムという自閉症スペクトラム障害と強迫性障害を持つ18歳の男の子が、
12歳の時の特別支援学級の先生に現在の担任の助けを借りて連絡を取ってきました。

サムは後退期を迎えていました。同年代の傷つきやすい生徒に対して
いやがらせや非難をしてしまい、自分でも悩んでいるのに
人をひどく侮辱してしまうのが押さえきれないのです。

特別支援学級の先生はもうサムの支援プログラムには携わっていないため、

『今すぐ使える表を作る』だけの役割でした。5段階表です。

5段階表に書き入れるために、
サムが安心できると思っている人はだれなのか
(彼の障害と行動特性を理解してくれる人)
安全な場所はどこなのか
(今の環境の中で、我慢ができなくなったときに逃れる場所にサムとスタッフがふさわしいと思う場所)
を特定することが重要でした。
サムとかかわるすべての人が↑の2つを知っている必要があります。

サムのために作ったのは、『不安レベルモニター表』

 どうでもよくなる。セルフコントロールはゼロ。支援してくれる人が必要。

 自力でコントロールするのは難しい。
  誰か安心できる人についてもらうか、すぐに、そこから離れる必要がある。

 大丈夫だけど、誰か支援してくれる人がそばにいて欲しい

 平気

 全く問題なし。少なくとも☆分は完全にコントロールできる。人を支援するこ  ともできそう。

 『サムの気分モニター表』

 悪態をつく(殺してやる 先公なんかくそくらえなど)
    <誰か助けて>

 拒絶的な態度(そんなつまらない仕事はやらない」「ここにいたくない」


 指示を手早くし、干渉しなけれな人の言うことは聞ける
    <自分の場所が欲しい>

 普通の付き合いができる
    <気分がいい>

 前向きなつきあいができる(どう元気? ここに来られてうれしいよ)
    <上機嫌。人の世話ができる>


数字はレベルです。

サムと担任教師は表のうちどちらかでレベル3になったと感じた時
どうすればよいかを練習しました。

気分モニター表でレベル3になったときは、
よくない態度を極力減らして、それ以上エスカレートさせないために
人のいない安全な場所を探すことになります。

不安レベル3のときは、安心できる人の助けを借りて
サムの不安レベルを適正化する必要があります。

こうした取り組みによって、サムは悪態を付かないように
コントロールすることを身につけただけでなく、
1年後には重度の認知障害児の学校での管理の仕事を得たそうです。


(日本では、成長した子の支援まですることは難しいでしょうが)
特別支援教育としてすばらしいあり方だなぁ…と思いました。

子どもが自分をコントロールするときの「めやす」となる
わかりやすいものを与えて、
事件になる前…まだコントロールできてはいるけれど危ない状態の時
(レベル3の時点で)
きちんと自分を制していけるすべを身に付けさせる
具体的で効果的な支援のあり方だと感じました。
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引用は「これは便利!5段階表」
カーリ・ダン・ブロン&ミッツィ・カーティス著
スペクトラム出版社

特別支援教育は本当に自閉症スペクトラムの子に役立っているの? 1

2008-12-01 11:02:39 | 自閉症
このブログを初めてから、特別支援教育が
現在どのように行なわれているのか、たくさん見聞きするように
なりました。
とてもがんばって取り組んでおられる先生方がおられる一方で、
まだまだ…

特別な支援をしてハンディーのある子の潜在能力を伸ばすことを目的とせずに、

普通学級の授業の進行を妨げる子たちを省いて
ひとつの場所に集めておこう

といった発達障害のある子や親御さんの立場に立った支援でなくて
学校側の都合を優先した
どこか消極的でおざなりな特別支援教育をしているところも
あるようです。

先日も特別支援教室の教員をされている方のブログを読んで
「う~ん」とうなってしまいました。


その方の場合、消極的なわけでもおざなりなわけでもなくて
真面目に一生懸命されているのですが、

自閉症の子を集めた学級を担任しているのだけれど、TEACCHや視覚支援、構造化など、自閉症に特化した方法を使うのではなくて、
その方はこうした指導方法だけでいいのかな?と感じいて、
「心の育ち」と大切にした教育をしていきたいと考えているそうなのです。

保護者からの苦情があっても、
「カード」を使ったりする気はなくて、
心にそう教育路線で、一緒に働いている先生や、校長先生と、
(大切なことがわからない困った親たちだなぁ)
…いつか理解してくれるだろう…と苦情をそのままスルーする…という対応を取られているようです。

確かに自閉症の特化した方法にばかり縛られて
心を抜きにした形だけの教育になってしまうことは
問題です。
構造化しすぎることも、将来、生活しにくくなる原因になることもあります。

でも、「心」ということを重視した
自己流の教育が主になると、自閉症児への教育となると
問題があるように感じるのです

なぜなら自閉症は「情緒障害」ではないからです。

視覚的なカードを使ったり、空間や時間や手順を「構造化」させていくのは、
自閉症の子が「わかりにくい」世界を
理解しやすい環境にして、

行動しやすく、見通しがたてやすく、自立的にできるようにさせるための

視力の弱い子のメガネや足の悪い子の車椅子のような
ものだからです。

こうした自閉症特有の教育に否定的で、
親からの申し立てがあっても、
「心の教育」「子どもはみな同じ」といった子ども観のもとで、
TEACCHや視覚支援、構造化といった方法を
まったく取り入れずに教育している特別支援の先生も多いようです。
またグレーゾーンの子らに対応する普通級の先生も
ほんの少しの視覚的な支援があれば
高い能力をしるしていける子らに、「ひとりだけ特別待遇はできない」と
融通のきかない態度で対処している方も多いと聞きます。

自閉症スペクトラムの子らの特別支援教育…
今後、どのようになっていくといいのでしょう?

長くなったので、次回に続きます。

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この場に見えないものは「ないもの」と感じる子とのおしゃべりを豊かにするには?

2008-11-17 09:55:06 | 自閉症
トイレのドアが閉まると、
入った相手が見えなくなってしまうわけですから、
お母さんがトイレに入ったお母さんがいなくなった
と心配して、どんどん戸をたたいては、いるかどうか確かめずにおれない子がいるそうです。

また知人の5歳のお子さんは、お母さんが電話をしていると、
お母さんが電話で話している相手というのは
目で見て確認できないので、
まるで電話の相手などいないかのようにお母さんに話しかけて
困ってしまうそうです。

自閉症スペクトラムの子にとって、
とにかく自分が今、目にしているものがとても重要!!
それ以外はまるで何も存在していないかのような言動におどろく
事があります。

幼稚園や小学校から帰った子に
「今日は何をしたの?」と聞いても
きょとんとしているか、
毎日毎日、
お昼ごはんの話しかしなかったりします。
親御さんとしては、
どんな遊びをしたのか、お友達とけんかしなかったのか、
何か楽しい活動をしたのか、嫌なことはなかったのか…?
と知りたい事がいっぱいあるはずです。
でも、自閉症スペクトラムの子はたいてい答えてくれませんね。

「今日、幼稚園では何があったの?」の質問に答えるには、

その日の活動を思い出す
質問を理解する
考えをまとめる

ができなくてはなりません。

すいません、レッスンの時間が…。続きは次回に書きますね。
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自閉症の遺伝子の発見 

2008-10-18 09:52:02 | 自閉症
「生命に仕組まれた遺伝子のいたずら」東京大学超人気講義録file2
という本を読みました。

特に興味深かったのは、「自閉症遺伝子が発見された」とする話です。
興味がある方は読んでくださいね。


人の染色体は46本あります。

ある家系で自閉症の人と自閉症でない人の染色体を調べたところ、
自閉症の人では7番目に大きい染色体が途中でちょんぎれていて、
残りの部分が元々11番だった染色体に置き換わっていたことがわかってきた
そうです。

その家系で自閉傾向をしるす人はみんなこの染色体をもっていて、
自閉でない人は、通常の7番と11番をもっていることがわかりました。

この染色体の切れ目にあった遺伝子を調べるとFOXP2
という遺伝子が見つかったそうです。

このFOXP2という遺伝子は、学習障害のひとつの難読症の原因遺伝子として
知られているものでした。
自閉症というのは、言語機能に問題がありそう…
相手の心が読めないということは何か言葉に問題があるのではないかと、
推測されてきました。

脳の中の右と左はほとんど差がありませんが、言語野と
呼ばれるところは左脳あります。
言葉をしゃべると左側の脳のその部分だけで血流が動くのですが、
難読症の人が字を読んでいるときは、
脳の左右が均等に動き、左脳の動きが非常に弱いそうです。

MRIとかCTスキャンで脳をリアルタイムで見る研究で、
確かに言語野の機能が下がっているのがわかりました。

カチカチいう音とか人がしゃべっている音とかを自閉症の人に聞かせて、
脳の中の様子を調べたところ、
機械的な音を聞いていた時に聴覚野(音を聞いた時に神経細胞が働くところ)
が反応していたけれど、人がしゃべっていたときは反応していなかったそうなのです。
人の言葉に注意が向かないのです。
外の自転車の音などはちゃんと頭に入っていることがわかりました。

それまで自閉症は相手の顔に関心がいかないのでわからないと考えられてきましたが、声を聞くことにも大きな原因が
ありそうだと明らかになってきたそうです。

遺伝子については、もうひとつ驚くべき発見があったそうです。スウェーデンで、自閉症の人とアスペルガーの人を159人対象に遺伝子解析する
実験を行なったそうです。
ある遺伝子に変異が見つかったそうです。
ニューロリギン4という遺伝子にDNAの文字が1文字違うところがあることがわかったそうです。
ニューロリギン4という遺伝子は、ヒトとサルにしかない遺伝子だということが
明らかになったそうです。
また別の家系でニューロリギン3に異常があることがわかったそうです。

ニューロリギンとはどんな遺伝子なのでしょう?

ニューロリギンとは、神経細胞のニューロンとニューロンを
くっつけるタンパク質の片方(2つの1つ)なのだそうです。

こうしたことから、この遺伝子の異常が、
脳の中で神経と神経の伝達に影響を及ぼしている…
特に言語野と聴覚野の部分で伝達がおかしいのではないか?
と言われているそうです。
(それだけですべて説明がつかないのですが)

「心を読む」メカニズムには、遺伝子がかかわるのですね。
今後の自閉症の治療の向上につながる事を願っています。

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1歳、2歳のころの自閉症で気になる行動  早期発見のために

2008-08-24 09:51:58 | 自閉症
名古屋で子どもクリニックをひらいておられる石井高明氏が
「自閉的しぐさ」と
いわれている、2歳すぎの自閉症で非常に目につくような行動を
いくつかあげておられます。

意味なく横目で凝視する
指の間からのぞきみる
ものを近くに近づけてみる
顔や机や他人の顔に思い切り近づけてみる

視界の周辺に指などをひらひらさせてみる
ミニカーやしま模様をすばやく左右に動かす
光の点滅に見入る
えんぴつなどの棒を移動して刀剣のそりを見るように一点にしてみる

換気扇などの円運動に夢中
四角のブロックを2つあわせてその合わせ目を見る
鏡に見入る
微細な音に聞き入る

自分で感覚刺激を作ってそれに夢中になっているように見える


小児精神科医の中根晃先生は、

言葉が遅れている子どもがいたならば、ほかに異常な点はないだろうかと、
徹底的に調べて行く必要があります。
親の働きかけはどうだろうか
反応はどうか
おもちゃ遊びの様子はどうか

ある程度、対人関係があるからとか、表情がゆたかだからとか、
自閉的というニュアンスがないからといって自閉症を否定するのは危険です。
1歳代の自閉症の子どもはどちらかというと受身なニュアンスが強く、
放置されたら放置されたまま、
相手をしてもらえばそれなりに反応する、というのが特徴です。

とおっしゃっています。

自閉症は早期発見が大切です。
なぜかというと、自閉症には「情報の入りにくさ」という困難が伴うので、
周囲の人が適切に、情報に手を加えて
入りやすい形にしてあげなければ
日常生活や社会生活をスムーズに送れなくなってくるからです。

自閉症には、アスペルガー症候群のように知能の高い子達も
含まれますから、そうした障害名をつけることに抵抗を覚える
方もいると思います。
しかし、早期からの働きかけを気をつけるほど、
後々起こってくる問題を避けれる場合が多いです。
もし いくつか気になる点があった場合は、
できるだけ早期に専門機関に相談したり(診断がつかない場合もありますが)
情報を集めておくことをおすすめします。
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引用「自閉症児の保育・子育て入門」 中根晃 大月書店

自閉症児は「できないのにしない」わけではない

2008-08-16 07:51:06 | 自閉症
自閉症は、誤解されやすい障害です。
道順を覚えたり、自分の興味のあることには熱中するので、
かつては自閉症児ができないのは、
心の問題でやりたくないから拒否してしないのだ…と考えられていたようです。

しかし自閉症児が与えられた課題をしないのは、

する意欲がないからしないのではなくて、
できないからしないのであって、

できそうだと思う課題なら、よろこんでするのだそうです。
イギリスで自閉症児の教育が行なわれている
三つの形態の実験校を比較すると
前回の記事で紹介した「構造化」された設定での教育を行なっていた
実験校がもっとも効果がみられたようです。

オペラント条件付け訓練といわれる行動療法では
与えられる刺激課題も
そしてごほうびをもらえるための反応も
治療者によって決められています。
子どもが正しい答えを出すために
問題をわかりやすく、はっきりしたヒントを出す必要があります。

これが自閉症児に効果があるとされる「構造化」された設定状況です。

それに対して情緒障害児には効果的で、
自閉症児には効果がないとされるのが、「遊戯療法」です。
子どもはどのおもちゃを取り出して遊んでもよく、
それをどう扱ってもかまいません。
構造化されていない設定状況で、子どもが自分を表現していくことに
治療のプロセスがあります。

これを小学校での学習で考えると、
「構造化」された授業とは、最近、よく耳にするTOSSの教育法に近い気がします。

与えられる学習課題も
そして正解とされる答えのパターンも
教師側によって決められています。
子どもが正しい答えを出すために
問題をわかりやすく、はっきりしたヒントを出すことを大切にしています。

こうした授業は、知能には問題がなく、認知過程に問題のある
アスペルガー症候群の子にとっては、
とてもよい授業になるのではないでしょうか?
アスペルガー症候群の子の落ち着きのなさが中心となって
教室が荒れていた場合、
奇跡的にクラスの雰囲気がよくなることもあると思います。

それに対し、遊戯療法に近いのは「問題解決授業」と言ってしまうと、
かなり語弊がありますが、
どこかでこのふたつは共通点もあります。

子どもの想像力、創造性を信じ、自由な発想からうまれる表現に
価値を置いているからです。

問題解決授業の方は、子どもの思考力を伸ばすための
さまざまな工夫がされていますが、
「構造化」された授業よりずっと柔軟です。

「構造化」された授業の
「教師側が子どもに教えたいと思う正しい答えの方向へ
子どもを導くための工夫」とはずいぶんちがいます。

アスペルガー症候群の子は、たいてい普通級で学習しています。
授業が構造化されると、
まじめに取り組める
解けなかった問題が解けるようになる
とアスペッ子にとっては、良いことがたくさんある気がします。

しかし、「構造化」という、治療者や教育者の意に沿うように
子ども達を導いて行く

という考えをすべての子どもを対象にした授業にまで広げていくことには
抵抗があるのです。
こうした授業では、

意欲的に、自ら主体的に学ぼうとする子どもは育ちにくい
からです。

またアスペッ子にしても、少しずつ柔軟な思考に慣れたり、
お友達の発言に耳を傾ける経験も大切な気がするのですよ。

なら、どうしたいの…???

と思いますよね。

私は普通級では、子どもを真に育む「問題解決授業」を教育の中心にすえながら、
アスペルガーの子に十分配慮して、混乱しそうな部分は「構造化」を
取り入れてく

という形が良いのではないかと思っています。
私自身は「問題解決授業」に大賛成なのですが、「問題解決授業」を支持されている方が、TOSSのような「構造化」された授業の長所(自閉症児への配慮の部分)まで軽視して、しりぞけてしまう場合は問題があると思うのです。
まず先生方に自閉症児の認知に対する知識をしっかり学んでいただけるとうれしいのですが…


引用は 自閉症児の保育・子育て入門 中根 晃  大月書店
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