ADD?先生の発達障害児 教育応援サイト

ADD?傾向のある塾教師がADHDやアスペルガー症候群の子にどうかかわり教えたらいいのか模索していくブログです。

戦隊物~「買って!買って!」を減らす工夫 1

2009-08-20 20:23:48 | 番外
発達障がいのある子が、
一度、戦隊物などのアニメグッズにはまると
それがこだわりとなって、どこへ出かけても「買って!買って!」で困り果ててしまうときがありますよね。

買い物先でお母さんの足をける、ひっくり返って泣きつづける、
8000円を超えるような高価なおもちゃを誕生日でもないのに欲しがる

など、最初の一つを許したばかりにえらいことになってしまった~
という話をよく聞きます。

そうしたこだわりが強く出やすい3歳の発達障がいを持つ☆くん。

まずできあがった戦隊物のおもちゃは買わず、
雑誌の宣伝を見ながらブロックで見立て遊びをするようにしています。
☆くんはこうした遊びを通して、
発達検査で指摘された立体を把握する力の弱さを克服しています。
また推測する力が弱く、
見立てながらごっこ遊びをすることが苦手だったのに
上手に遊べるようになってきています。

最初はでたらめに積むばかりでしたが、
このごろさまざまな乗り物をあっという間に組み立てていきます。



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集団の活動に参加しないアスペルガー症候群の子

2009-08-15 21:02:15 | アスペルガー症候群
昨日は5歳のアスペルガー症候群の☆くんが、お父さんとお母さんといっしょに
はるばる長野からいらしてくれました。
☆くんには今日のブロック教室にも参加してもらいました。

☆くんはおだやかな気質のかわいい男の子。
ブロックが好きで、遊園地や動物園をどんどん作ります。

☆くんに課題をしてもらおうと声をかけると、
強い拒絶があります。
また集団でのゲームのような遊びには頑として参加しようとしません。
またこちらから何かさせようとすると
聞こえていないように見えたり、理解していないように見えます。

いつまでも一人遊びに興じていたい~
という雰囲気を☆くんは放っています。

しかし、そんな☆くんが、意外な一面を見せるときが何度かありました。
自分に振られた課題には
無関心を決め込んでいる☆くんですが、弟の★くんに問題を出そうとすると、
「ちゃんとしないといけないよ~」と課題への取り組み方を注意したり、
問題の答えを次々言ったりしているのです。
弟くんが解いている間は、
課題にしっかり関心を寄せています。

また、集団でのブロック教室では、不参加を決め込んでいた☆くんですが、
みんなが帰ったあとで、ひとりで
他の子たちが作っていた作品を再現しているのです。

☆くんは課題をしようとしないし参加しないため、
外からはできないことが多いように見えるのですが、
さまざまな点で能力も理解力も高いものを持っているのがわかりました。
ソーシャルスキルの問題も、
行動としてはできないけれど
ペーパー上の問題としてはほとんどわかっているのです。

☆くんは来年の就学の際、どのようなことに気をつけたら良いのでしょう?

私は行動として☆くんができることより
かなりレベルが高いこともどんどん見せていくことや
体験させていくことの大切さを感じました。

また学校の宿題等も、☆くんに向かって説明するのが難しいときは、
弟くんに楽しく取り組ませるようなシチュエーションを作って
☆くんが間接的に参加できるようにする方法も良いかと思いました。

またお友だちに興味がないように見えても、
ゲームの駒だけ参加させていると、
最後のほうにはゲームに笑顔で参加できたり、
呼びかけても知らんふりしていたのに、
私が用事をしていると、つついて関心をひこうとしていたりしました。

こうした姿から、大人がお友だちとのかかわりを
少しでも良いものになるよう支援してあげる必要を感じました。
お家にひとりだけおとなしいお友だちを呼ぶくらいなら抵抗がないなら
そうした時間を定期的に作ってあげるの良いですよね。

参加していなくても
見ているだけでさまざまなことを吸収している
しっかり理解できる力を持っている
無関心を決めているときも、もう一歩で参加できるところまで近づいてきている
直接自分に向けられた課題でなければ解こうという意欲を持っている
実際、行動に現われている以上の社会性を持っている

ということを、いつも頭に置いて、
☆くんに接していくことが大事ではないでしょうか?

☆くんは、書き順がでたらめな文字を書いて
注意を受けても直そうとしないところがありました。

きちんとした書き順を教える方法は次回に書きますね。


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絵カードと文字のマッチング 上手に教えるコツ

2009-08-13 10:26:04 | 昆虫博士からの研究発表
親しくさせていただいているブロガーの『ごゆっくりさん』で、☆絵カードとひらがなのマッチングの記事を読みました。
そこで、私が赤ちゃんや障がいのある子たちに
文字を教えるときに,
はじめにすることをご紹介します。

まだ文字が意味を表している記号だと
わかっていない子に
文字と絵のマッチングをおこなうとき、次のポイントに気をつけるとうまくいきます。

絵カード、文字の組み合わせを教えるときは、

まず漢字からはじめます。
漢字は組み合わせによって 
ひらがなのように(しか いか など……)と絵が変わらないので
マッチングしやすいのです。

虹色教室では、
まず、猫、犬、鳥のボタンを押すと、泣き声が聞こえる音の絵本と
表に漢字、裏に絵がついている大きめのカード(大学ノートの半分くらいのサイズ)を用意しています。
猫の漢字の毛をなでるようなしぐさをする 猫の鳴き声を聞かせる 絵を見せる
と、感触、しぐさ、聴覚、視覚など、
いろんな面から印象が残るようにします。
鳥は、くちばしでつんつんするしぐさを子どもの手にも
鳥の漢字の先の部分でもし、
バサバサバサとはばたくまねをして、漢字の見た目を印象づけます。

そして、繰り返し間違えさせます。
何度も間違うと、
文字とは何なのか子どもが自分で気づくときがくるからです。

ひらがなを教えるときは、
漢字より大きなカードに

「ん」や「つ」を書いて

ん~ときばるような音と、字の形がつながるように
字を手でなぞる、身体で表現するなどします。
音そのものと、字をイメージづけるのです。

つのときは、つんつんつんとつつくことと字のイメージを印象づけます。
漢字がイラストと、
ひらがなは音そのものと
つなげた方がはじめての子には理解しやすいように思っています。

文字を教えるとき、与える量、与え方はとても大切と思っています。
いつももっと見たい!という気持ちを引き出して
「また今度、お勉強しようね」と楽しみを次につなげるようにしています。



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何をするにもグズグズのろのろ~ 手伝い過ぎたら何もできない子になりますか?

2009-08-10 16:54:56 | アスペルガー症候群
(写真と記事は関連ありません)

とにかく何をするにもグズグズのろのろ~
学校の用意に他の子の何倍もかかります。
でも手伝い過ぎたら何もできない子になりますよね。

そんな相談を受けることがよくあります。
私も、この答えに自信がなくて、いつも迷い迷いお返事していたところがありました。
そんなとき

問題行動がぐんぐん解決できる  千谷史子 日東書院

の中で次のような話を読んで少し安心しました。

「子どもに手助けしすぎ?」と悩む必要はありません

アスペルガーの特徴を持つ子どもを育てていると、「どこまで親が手助けするか」の線引きで思い悩むことがあるかと思います。
時間がないときに、学校に遅刻させまいとつい、着替えを手伝ってしまったとき。
はやく寝かせなければと対、明日の準備を手伝ってしまったとき。
(省略)
アスペルガー症候群の特徴を持つ子どもがかかえるいろいろな問題の中で、見過ごされているのが「スピード」の問題です。
同年齢の子どもがさまざまな課題をこなす平均スピードにくらべると、アスペルガー症候群の特徴を持つ子どもはいろいろなことに時間がかかります。

このことは、アスペルガー症候群の子どもの持つ「機能の問題」です。ひとつのことが人の3倍時間をかけてできたところで、その子に1日72時間あるかというとそうではありません。
もしすべてのことをこなそうとしていたら、すぐに時間が足りなくなって、どうしても身につけさせたいことが後回しになってしまいます。

毎日の生活の中で「どうしても追いつかない!時間がない!」という場面であれば、そのときは親が手助けしていい場面です。どんどん手伝ってあげてください。
それはいわゆる「甘やかす」ということとは、まったくちがう問題です。
人間としての大事なルール「人を傷つけない」「人の物を取らない」などの絶対やってはいけないルールをクリアーしていれば、家庭で「いつまでに、ここまでしつけをしなければならない」というノルマはないと思います。
(省略)
たくさんのことを手伝ってあげても、それで子どもがダメになることは、まずありません。それどころか、人に手助けできる人間に育つのです。



何をするのも遅い、忘れる、コツコツがんばれない、反抗的ではないのに大人に従えない、聞いていない、極端な気まま、身体がくにゃくにゃする

など……発達障がいがあるのかどうかわからないけれど、気になる子というのはいます。
他の子はきちんとできているのを見ると
親も教師もつい声を荒げて叱ってばかりになることがあります。

ただそうした集団のペースに乗れない子は、
わがままや怠けでそうしているのではなく
機能上の問題でそうならずにおれない場合がよくあります。
ですから、叱るのではなく、手伝ってあげることで
心が安定し、さまざまなことにチャレンジしようという思いも育ってくるのです。

私は自分がADD(注意欠陥)傾向を持っているので、
この「機能上の問題」ということがとてもよくわかります。
ワーキングメモリーの働きが悪かったり、集中したい対象が背景から際立たず、刺激がいっぺんに流れ込んできて、背景のノイズが大きくなりすぎたりすると、
何をするにも他の人の何倍も時間がかかるのです。おまけにくりかえしチェックしても苦手な作業のときは必ずミスをします。
ですから、私はADHDやADDの傾向を持って生まれたら、
他人の何倍もまじめにくじけず努力し続ける性質と
それでもミスをたくさんするのですから、自分が助けられる部分では快く助けてあげること、
失敗しても気にかけず何度でもトライする楽天性が大事だなと感じています。
私がADD傾向がありますから、うちの子も(特に息子)
苦手なことと得意なことに極端な開きがあります。
そのため小学生時代の子育てでは、アスペルガーの特徴を持つ子ども同様に「どこまで親が手助けするか」の悩みをたくさん抱えていました。
おまけに、手伝う私が同じ部分が苦手とあって、
手伝ってもなお忘れ物の多い、困った子でした。
そんなわけで、欠点についてはあまり叱らず甘すぎる親できましたが、
そのおかげで、成長するにつれて、最初から得意であった部分はさらに伸び、
欠点は時間がゆっくり克服させてくれたな~と感じています。

それと、小学校時代、たとえ他の子よりミスが多くても
それゆえに息子に身についた

他人の何倍もまじめにくじけず努力し続ける性質と
それでもミスをたくさんするのですから、自分が助けられる部分では快く助けてあげること、誰とでも親しくできること、
失敗しても気にかけず何度でもトライする楽天性

は、この子の人生を良い方向に導いてくれると信じています。

アスペルガー症候群にしてもADHDやADDにしても
脳の機能の問題なので、
周囲が「甘え」と取り違えて、
自分の信念で厳しくしつけようとすると、結局は子どもをダメにしてしまうのではないでしょうか?
特に診断を受けていない
何とかがんばれば周囲についていける発達障がいの子は
自分自身が壊れてしまうまでがんばってしまいます。
また親も何とか子どもを他の子に追いつかせようとして、
必要以上に自分も子どもも追い詰めてしまいがちです。

そんなとき
「子どもに手助けしすぎ?」と悩む必要はありません
という言葉を心にとめておくと、
ブレーキがきいていいですね。



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発達障がいのある子の算数ゲーム

2009-08-05 20:40:51 | 番外
今日は広汎性発達障がいと軽度の知的障がいがある小3の☆くんのレッスンでした。
ニコニコして明るく何をするのも積極的な☆くん。

工作にもゲームにも夢中で取り組めましたが、
中でも一番喜んでいたのが『アルゴ』ゲームです。

今日、はじめて『アルゴ』で遊んだ☆くん。
本来のルール通りで遊んだのですが、
少しヒントをもらいながら遊ぶうちに楽しくてたまらなくなって
何度もやっていました。

☆くんは、計算はできるけれど、推理をすることがとても苦手です。

最初は適当にあてずっぽうに「3!」とか「5!」とか言っていた☆くんですが、
回を重ねるうちに、

3より大きな数で、
5でも8でもない(自分がそれまでに言ったから)数だから、7!
といった推理が働くようになっていました。

0~9の『アルゴ』のカードを使って、10桁の数を作る問題(一番大きな数、一番小さな数、2番目に大きな数)
を解いてもらったときも、
最初は2番目に大きな数がどうしてもわからなくて
でたらめに並べていたのですが、カードを操作するうちに
9876543201
と下二桁を入れ替える意味を理解していました。

幼児期に知的障害が指摘された子も
周囲から大切にされて、勉強に対する挫折体験をあまり積んでいない子は、
一般的な成長よりは数年遅れに
知的な面が伸び初めて、
不可能に思えたようなこともできはじめることがあるように
感じます。
できないことが多い時期も
自信に満ちた明るい気持ち保てるように気をつけてあげることと、
あきらめず、さまざまな体験をさせることが大事だと思います。
☆くんは、算数と国語は通級に通っているそうですが、

2時30分の1時間30分後の時間は何時何分?の問いに
4時0分ときちんと答える

『10才までに覚えておきたい ちょっと難しい1000のことば』で作った
文字と意味を繋げるパズルに喜んで取り組んでいた

ことなどから、本人がかかわりやすい学習をさせることで、
今後、大きく伸びていく可能性を感じました。

☆くんのお母さんには、アルゴカードを使って
概数(四捨五入のややこしい問題)を教える方法もマスターしていただきました。



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トムくんのレッスンの様子を記事にしていただきました♪

2009-08-03 17:40:30 | 自閉症
ごゆっくりさんのyoshikoさんが、教室での2時間のレッスンを記事にしてくださいました。
トムくんは、6才の誕生日を迎える頃、だんだん言葉が出始めた市立小学校の支援級に在籍している7歳の男の子です。
遠方からはじめて虹色教室にいらしてくださいました。

子どもたちが夢中で遊ぶうちに、教室内が散らかってきて見苦しくなってますが、お許しを……。

☆大阪3日目:虹色教室(その1)
☆大阪3日目:虹色教室(その2)
☆大阪3日目:虹色教室(その3)
☆大阪3日目:虹色教室(その4)
☆大阪3日目:虹色教室(番外編:3step工作の例)





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未診断の子への配慮について

2009-08-02 16:10:52 | 番外
幼稚園の先生が障害の有無を決めるの??? の記事に次のようなコメントをいただきました。


 何か、皆さん勘違いなされているようですが、PDDの診断が出来るのは、精神科医(それも児童精神科医)だけです。ADI-Rを使用しても、二時間半はかかります。WISC-Ⅲの知能検査等は、また別に時間がかかります。
 ましてや発達障害の子どもさんは、日によって状態の変動があり、とても2時間程度で判断できるものではなく、さらに成長につれ状態像も変化してきます。その意味でも、10歳未満では、熟練した児童精神科医でも、アスペルガーの診断は難しいと言っています。
 臨床心理士は、基本的に発達障害を学んでいません。日頃、接している方の意見が一番参考になります。この年令では、園で問題がなければ、特に援助することはないでしょう。大事なことは、家族に愛され、友達と十分に遊べているかということです。


PDDの診断が出来るのは、精神科医(それも児童精神科医)だけ……ということは、おそらくこのブログを読んでいらっしゃる多くの方が知っている事実だと思います。
だからこそ、記事のタイトルも、幼稚園の先生が障害の有無を決めるの??? 
という疑問形なわけです。ただ発達障がいについてほとんど知識がない方が、

PDDの診断が出来るのは、精神科医(それも児童精神科医)だけだし、10歳未満では、熟練した児童精神科医でも、アスペルガーの診断は難しい

という事実を説明されないまま、(知らないまま)
発達障がいの診断することのできない園の先生の意見を鵜呑みにして
発達障がいではない……と判断してしまうことの危険を書かせていただきました。

幼稚園の時点でPDDの特徴をたくさん持っている子のなかには、
定型発達の子も含まれている可能性は確かにあります。

発達障がいでない子がそうした状態にある場合……

たとえば、目が合わない、心の理論が育っていない、決定権や理由があることがわからない、お友達とうまく遊べない(園の先生は問題ないという程度だが、ほとんどかかわれていない)感覚が過敏ですぐに「死ね」といった言葉を口にする、場の空気が読めない、幼稚園では個人的に声かけをしてもらわないと何をしていいのかわからない、疲れやすく姿勢がくにゃくにゃしている、悲しいときに笑っている表情をしている、など。

それはそれで、何らの環境の原因があって
子どもがそうした状態にある場合があるので、

気になることを無視して、
子どもにきちんとするように求めるばかりでは問題は解決しないように感じているのです。

アスペルガー症候群かどうかまだ診断は出せない状態でも、
社会性の発達が幼すぎて、周囲のすることを見てそこそこ真似て
自分の行動を決めることができない状態で小学校に入学した場合、

プリントを一枚自分の分を取って後ろに回す

という簡単な作業ですら、子どもを毎回苦しませることになります。

それを言葉で説明してあげるのは「過保護」というのは、
定型発達とはっきりしている子には言えるかもしれません。
しかし、もし発達障がいがある可能性があるのなら、
そうした日々の小さなストレスの積み重ねが2次障害の原因となっていくのは
目に見えています。

実際に虹色教室に来ている発達障がいの子で、乖離、不登校、知的な問題がないのに養護学校に転校する、クラス中の友だちから責められる、授業を抜け出す
などかなり深刻な問題にぶつかっている子のほとんどが、

発達障がいとしては軽度すぎて、
幼稚園や低学年では園や学校で、「問題なし」と言われてきた子たちです。

それだけに援助もなしに、わからないことだらけの集団生活を、いっぱいいっぱいまでがんばって、
問題が起こると親からもがんばるよう叱られて、
先生からも厳しく注意を受けて……小4くらいになってさらに求められることが複雑になる中で、困り果ててそうなってしまったのです。

私が幼児期の親御さんに
気になることが多いときは、発達障がいの情報を把握しておくように
すすめているのは、

重い発達障がいの特徴を持つ子以上に

軽度の子、発達障がいとは外から見えない子の高学年ころの困難や問題を
見聞きするからです。
その原因の多くは、子どもの側にあるのではなく

正確な知識がないまま子どもを追い詰めていく親や先生の側に原因があります。ですから、診断うんぬんではなく、間違った思い込みを持たないために、
親は疑いの時点で知識を把握する必要があると考えているのです。


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自閉症スペクトラムの子のための工作 と直感の話 1

2009-08-02 07:18:35 | 自閉症
先日、☆ごゆっくりさんというブログの新1年生のトムくんが、虹色教室に遊びに来てくれました。
6才の誕生日を迎える頃、だんだん言葉が出始めたというトムくん。
感覚を刺激する遊びと歌や楽器以外には無関心な様子です。
それだけにトムくんが関心をしるす感覚的な刺激と
音楽はとても大切にしていかなければならないことだと感じました。

トムくんはまだ目的を持って遊ぶという段階にいたっていません。
これまでどろんこ遊びや水遊びなどを通して
感覚を刺激する遊びはたっぷりすぎるほどしてきたというお話でしたので、
そうしたトムくんが慣れ親しんできて心地よさを感じるものに最も近いものを
通して、トムくんが今の段階から一歩、次の段階へ踏み出す手伝いができたら
いいなと思いました。

そこで、トムくんと楽器作りの工作をすることにしました。
トムくんはとにかく音や音程に敏感で、それを強く求める子です。

作る気持ちいい音の刺激

をできるだけトムくんでも参加できる易しいものにして、

気持ちいい音の刺激を得るために、作るという行為をやってみる

という「目的を持って何かをする」という段階の行動を
うながすことができないかと思ったのです。

トムくんは、作る過程では、その意味を感じている様子はありませんでしたが、できた楽器にはどれにも強い関心をしるしました。
振って音をたてるだけでなく
自分でも楽器にボールを入れてみたりして(目的をどれほど持っているかはわかりませんが)積極的にかかわっていました。

自閉症の治療にはさまざまな有効な方法があるはずです。
専門家の意見を参考にしたり、これまで常識とされることをきちんと把握しておくことも大事だと思います。
でも、できるだけ知識という武装を手放して
素のままに自閉症の子とかかわることもとても大事だと思えるのです。

トムくんは、数年前に聞いた歌を歌って見せたり、絶対音感による曲の再現をしたりすることができました。
こうしたトムくんの姿を見て、
もしトムくんが私の子だったらどうするかな?と考えたとき
まずさまざまなクラシック音楽や美しい楽器の音色をいっしょに聴くことで、
音楽を通して言葉のないところで、
トムくんと自分で対等な会話をしていくだろうな……と
思いました。
音楽という分野でトムくんはたちまち先輩となっていくのかもしれませんが……。
また音楽への感性が優れているわけですから、
数学的なものが開花する可能性を大事にして
ドッツカードなどを通した数によるコミュニケーションを試みるでしょう。

そうしたことは、自閉症児への対応
とは違います。
障害はいったん脇に置いておいて
ひとりの才能ある子との、コミュニケーションできる接点を探す
試みです。
トムくんの笑顔と満足そうな落ち着いた様子で
うまくいっているかをはかります。

この日、トムくんは、私のひざに乗って身体をもたせかかり、
かけざんの九九を歌いながら指で表現する私の真似を
うれしそうにしていました。指も真似し、九九も覚えて歌っていました。はじめて九九に触れるのに……
トムくんの音楽への感性は数学につながるかもしれない……という私の勘は間違っていないのかもしれません。

勘……というと、私は以前から何度か書いていますが
ユング心理学で言う性格タイプが内向直感型です。
それで、何をするにも、一番頼りになるのが、一般的には頼りないいい加減なものと思われている直感です。
この直感、自分でコントロール出来るものでなく
「自ずから~」の部分、あちらから勝手に浮かんでくる部分が大きいです。
この直感がどんなものか……というと説明しがたいのですが、
私の場合、表面的な意識が判断した決断の間違いを正したり、修正させたりする
役割をになっていることが多いです。
また私にこれから起こる出来事の重要さを事前に自覚させることもよくあります。

今回、トムくんが虹色教室に来るにあたって、
1年に一回くらいしか感じない強い直感的なものを何度も感じました。
最初は、トムくんのお母さんから妹を連れて行くべきかどうか悩んでいる
という相談を受けたときに、私は軽い気持ちで
「その日は時間に余裕があるので、妹さんを連れてきていただいても大丈夫だと思いますよ。トムくん中心の遊びを展開するように心がけておきます」とお返事したのですが、その日の就寝後、夜中の2時ごろから、外から流れてくる奇妙な音にずっと悩まされ、トムくんの名前が漢字の状態で何度も頭に浮かんでくるのです。
それで、翌日、自分の直感に従って「トムくんひとりだけでのレッスンにした方がいいように思います」と連絡させていただきました。
トムくんのレッスンが終わった翌日の朝方、
目覚める直前のぼんやりした意識の中で、
トムくんと過していた時間の録画ビデオを再生するような夢ともいえないような夢をみて、
ひとつひとつのシーンを確認していく作業をしていました。
トムくんは、何らか私とつながりがある子なのか……波長が重なるところがあるのか……単なる偶然なのか……?
無意識の部分で気にかけているから
こういうことが起こってくるのか、くわしいことはわかりません。
私は、そうした体験をしたときは、いつも意識で理由をつけようとする心を
消して、水面を眺めるように自分の心を覗き込むようにしています。
理由は考えません。ただいろんな思いを手放して
静かにしています。

すると勝手に理由が言葉として浮かんできます。子どものころからそうなんですが……。
それを全面的に信じるのではないけれど、
直感が伝えることとして、真摯に受け取って心に留めて、
現実の自分の価値判断や、行動の参考にしています。

私の直感との付き合いはこんな感じです。匂いで識別したり、気持ちで識別したりするのと同じように、直感は私にいろいろ気づかせてくれる不思議な
感覚です。

写真は
わごむをかけるだけでできるギター
ボタンを入れて、ふたをしめてマラカス
テープにすずをつけて、すず
パックにビー球を入れて、マラカス
風船とガムテープの芯で作るたいこです。



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自閉症スペクトルの子のための療育としてのブロック遊び

2009-08-01 08:57:28 | 番外
ブロック遊びは自閉症スペクトル障害(広汎性発達障害)の子が
熱中しやすい遊びです。

そうしたブロック遊びを
療育のための教具として、子どもの抱える困難を軽減するために
利用する方法を紹介します。

ブロックを出すと、子どもは自分の好きな飛行機や乗り物などに固執してそればかり作るかもしれませんし、ただただブロックを積むだけの遊びに終始するかもしれません。
そんなときに
大人が子どもが飛行機を作るなら飛行場を、
車を作るならガソリンスタンドを作ってあげると、
子どもの興味に変化が訪れます。

先日、自閉症スペクトル障害の疑いがある男の子を育てている親御さんが、
「子どもがいつも目にしているはずのポストを知らなくてびっくりした~」というお話をされていました。
発達障がいのある子は自分のこだわるものだけ見て、
それ以外に関心をはらわずに暮らしていることがよくあります。
定型発達の子なら自然と興味を持ち、
常識として身につけていくことを、
発達障がいの子は自分の興味のあることは大人の専門家レベルに知っている、それ以外は2歳児のレベルのまま……ということがよくあります。

ですから、発達障がいの子とブロック遊びをするときは、
外でその子が見たもの、体験したものを
再現して作るようにしています。
できるだけ細部…
たとえば、バスの券が出てくるところ、切符の販売機の大人用ボタン、子供用ボタンなどにこだわって作っています。

そうすることで、
観察力
より広い興味
目の前にないものを映像として思い描く能力
記憶力
ものの機能や意味への理解

が育ってくるからです。
写真はガソリンスタンドです。
上からガソリンを入れるホースがおりてきたり、
レシートが出てきたりするところに注目して作りました。
子どもに作らせようと思いすぎず
子どもにアドバイスを求めつつ
作ってあげることも学習になります。


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