虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

集団への適応力がいい子が考えない癖をつけないための微調節

2017-01-17 18:31:59 | 通常レッスン

年中さんと年長さんのレッスンの様子です。

幼稚園などの集団の場で「よくできる子」「しっかりしている子」とほめられることの

多い適応力の高い子たちが、

場の空気を読むことにあまりに長けているため、「考えない」癖を身につけてしまうことがあります。

 

先生や自分より上手にできる子を真似て吸収するのが上手で、

いつも場の流れの先陣を切っている子たちです。

その場所で重要なキーマンとなる人物に

即座に気付く力も持っています。

 

集団への適応力がいいことも、その場のカギを握っている人に気付くことも、

他の人のすることを上手に真似ることができることも

とてもすばらしい能力です。

ですからその資質は大切にしてあげなくてはならないのですが、

その資質が原因で、考えない癖がつきはじめたら、

その子への関わり方や質問の仕方などを微調整して

「自分で考える」経験を積ませたり、

自分が考えたからこそ味わえる喜びや達成感を

体感させるように気をつけています。

 

「集団への適応力のいい子がつける考えない癖」と聞いても

ピンとこない方がいらっしゃるかもしれませんが、

グループで子どもたちが活動する様子を見ているととてもよくある光景です。

 

集団での適応力がいい子は、どうすれば先生に

ほめられるのか、その場でリーダーシップをとっている子に認められるのか

に敏感でよくわかっています。

またそこにいる「みんな」から好感を持たれる方法にも長けています。

常に変化する集団の行動や気持ちの流れに

すばやく柔軟に対応することができます。

 

それらはどれも長所ではありますが、それらの長所が行きすぎると

次のような困った態度も生じてきます。

 

★ 何かを考える時に、自分では考えず、

一番正しい答えを知っていそうな人に同調することに必死になる。

 

★ 集団の行動や気持ちの流れに敏感すぎて、

物事の正しさより、「多数派」の意見を正しいと感じる。

 

★ 先生の言う通りにするのが一番と思い、

自分では考えず、先生が言った通りにする。

 

「先生の言うとおりにする」ことは、正しいよいことでもあるのですが、

それがそのまま「自分の頭では考えない」「思考のスイッチを停止する」ことに

つながってしまう場合、

少し体験を広げてあげる必要があると思っています。

 

 

物事は何でも模倣することから始まりますし、

自分の頭で考えられるようになる前に

意味がわからなくても丸暗記して、身体で覚えてしまうことが

その先の学習の基盤にもなります。

 

ですから、幼児や小学校低学年の子に、「自分で考えなさい」と

言葉で繰り返すことは、

勉強の仕方をわからなくする原因を作るかもしれません。

 

わたしが気にかけている「考えない」という状況は、

次のようなものです。

 

先日、年中さんと年長さんのレッスンでこんなことがありました。

積み木を並べて形を作り

子どもたちの正面(反対側)に人形を置いて、

その人形の目で積み木を見たらどのように見えるか、

いくつかの選択肢の中から、上から見た図を選ぶ

という課題をしていました。

 

子どもたちは、「これ!」「これこれ!」と思い思いの図を選びます。

たいていの子が、自分の側からどう見えるかに引きずられて、

間違った絵図を選んでいました。

その後、お人形の背後に回らせて、もう一度選択肢を見せると、

子どもたちの間から、「あ~!!これだったんだ!」と歓声があがりました。

次の問題からは、「自分の見え方に簡単にだまされないぞ」という意気込みがあり、

自分なりの推理を働かせていました。

 

 

この課題の最中、★ちゃんと●ちゃんは、ちょっと気になる態度をしめしました。

どちらも知能が高い集団への適応力が高い年中さんの女の子です。

 

大人の指示が通りやすくテキパキしていて

幼稚園では担任の先生や周囲の親御さんから絶賛されている子たちです。

お友だちからの好感度も抜群です。

わたしにしても、このふたり本当にかわいいなぁ、といつも感心してしまいます。

 

気になる態度というのは、「これと思う」と指さす時点で、

自分が好きな子やいつも正解する子が「これ」と決めるのに、瞬時に反応して、「わたしもこれこれ!」

と同調するように答えを選ぶので、

 お人形の背後に回って、本当はどれが正しかったのか自分の目で確かめる段になっても

「あーそうだったのか!」とか「あれ?何でだろう?ちがうな」といった反応がないことなのです。

 

問題となっていた積み木は見ようともせず、正しい答えを確かめたとたん

急に意見を変え出したお友だちの表情ばかり気にしています。

「みんながこれだったのかーって言ってるから、これなんだな」と納得する様子です。

 

といっても、こんな態度をしめすからといって、問い方を工夫すれば、★ちゃんも●ちゃんも

考える力が弱いわけでも、推理が苦手なわけでもないのがよくわかるのです。

ふたりのこうした「考えない態度」は集団でのあり方でより有利であるために

わざわざ学習して身につけたもので、

場面によって、それを少し解除する必要を実感させていくと、対象をよく見て、

そこから秩序やルールに気付く力を取り戻していくのです。

 

集団への適応力がいい子が、

自分で考えようとせずに他人の意見に同調する姿を見て、

親御さんから「自分で考えなさい、と言った方がいいでしょうか」

「どのように言い聞かせたらいいでしょうか」という質問をいただくことが

よくあります。

 

「言えばわかる子だから」という思いが、こうした質問につながりやすいのかもしれません。

適応のいい子たちは、言葉で言い聞かすときちんと耳を傾け 、

素直に従おうとします。

 

でも、どんな形であれ、こうしたタイプの子に「言い聞かす」のは

あまり効果がないかもしれません。

 

 

こうしたタイプの子らは、「耳」を通して人を介して情報を得る態度に片寄りすぎて、

自分の目で見ているものよりも、人が言っていることの方を信用しがちです。

また人の言葉から学びとろうとして、

直接、自分で対象から何らかの秩序を引き出そう、見つけ出そうとする意欲が

みられないことがよくあります。

 

前回の記事の★ちゃんは、「答えを確かめるために、人形の後ろから見てみよう」という

誘いに、

他の子らが好奇心ではちきれそうになって人形側に駆けよる時に、

「行かなくていいよ~、行かなくていい~もう答えがわかってるもん」と言いました。

 

人形側に回った子たちが、「これこれ!」と正しい答えを指すのを聞いたので、

もう自分は知っているから、わざわざ見に行く必要はないと思ったようなのです。

 

また●ちゃんの方は、次の問題から、「わたしはここに座ってする」と、

最初から人形の背後を陣取って、絶対ミスがない状態で

問題を解きたがりました。

 

ふたりとも、好奇心から、「推理したい」「言い当ててみたい」「当たるかな?」と

ドキドキする楽しさを味わうよりも、

大人が評価するような「正解する」という結果に

心を奪われているようでもありました。

 

といっても★ちゃんも●ちゃんも

本来、知能が高くてしっかりした子たちですから、

こちらが極力、言葉で言い聞かせるのを控えて、

目で対象をよく眺めるようにうながしていると、

自分の力で「原因と結果」のつながりに気づきはじめ、

たちまち考えることが楽しくなってもくるのです。

 

また「考えなさい」と注意するのではなく、

その子たちの発する思いつきや論理に、

こちらが強い関心をしめすと、

もともと人と人の間にある感情の流れに敏感な子たちですから、

人が興味を持っている対象には、強い集中力を発揮するのです。

相手の心が自分の発言に興味を持っていると察すると、

一生懸命、考えを伝えようとします。

 

気をつけなくてはならないのは、

子どもが「大人は自分が正しいことを言うのに興味を抱いている」と思うか、

「大人は(間違っていようといなかろうと)自分が発言している内容に興味を持っている」と

思うかにあるのです。

 

適応力のある子たちは、とても合理的で、

結果主義の子が多いので、

「大人が自分が正しいことを言うのに興味がある」なら、

正しい答えを知ってそうな子の意見を真似るか、

先生の言うことを、わかっていてもわからなくても、そのまんま言う方がいい、

と考えるからです。

小学3、4年生の子らのレッスンでこんなことがありました。

自由時間に何をするかは、「工作」か「実験」か「ボードゲーム」の中から

子どもたちに選ばせています。

この日は「実験がしたい」という話でした。

科学の本を見ながら、

「水」に関係する実験をいくつかして大盛り上がり。

好き勝手実験が行きすぎるのを

ちょっと締める意味もあって、

帝塚山学院泉が丘中の「水の変化の実験」を扱った

受験問題を、できる部分だけ実験を再現してみて、問題の答えを推理してみることにしました。

 

①試験管に水(5℃)を三分の一ほど入れる。

②この試験管をビーカーの中央に立て、まわりに水を入れる。

③水に食塩をまぜたものを氷にかける……

といった設問の実験手順を、ひとつひとつ子どもたちにやってもらいます。

教室にはスタンドや試験管に入れるタイプの温度計はありませんから、

水に食塩をまぜたものを氷にかけた後は、「指、温度計で!」と冷たさの変化を

指で確かめる適当実験ですが、

そんな適当な実験も、問われていることの意味を実感するのにはとても役立ちました。

 

「冷たー!!」「つ、冷たいー!!」と騒ぐうちに、

どの子もすっかりこの実験の世界に入り込んでいました。

 

そんなわけで、実験そのものは、とても楽しく、していることをよく理解もしていて、

水が氷になる際の体積の変化や重さの変化なんかも、

製氷皿で氷がプクッと膨らんでいる様子を手で作りながら「体積は冷えると増えるけど、重さは

変わらないね」などと言いあっていました。

 

しかし、温度変化のグラフを選ぶ際には、「これこれ」と適当に選んで、

選んだ理由をたずねても、はっきりしません。

 

それでも選んだ理由についてあれこれ雑談する時間があって、

「だんだん氷になっていくんだから、温度はだんだん下がっていくはず

と思ったから」など無理やりでも理由を絞りだすと、

正しい結果を知った時に

「ああ、そうだったのか」と心に響く度合いが違います。

 

この子たち、虹色教室で続けてきた算数に関わることでは、しっかり考えてから

取り組むのですが、

こうした見慣れないものだと、よく見たり推理したり考えたりせずに、つまり自分では全く考えてみようとせずに、

「これ!」と適当に選んで、

「正しい答え」を教えてもらってから暗記すれば一件落着、

という学び方があたり前となっているようなのです。

 

集団への適応力のいい子たちほど、「どうせあとで先生が答えを教えてくれるんなら

選ぶ時点で真剣に考えたら時間の無駄」という合理的な精神や、

「自分で考えたものが間違えてしまうと恥ずかしいから、最初に選ぶ時点では

茶化してどれにしようかな神様のいう通り~という具合に適当に選んでおこう」

と周囲の友だちを意識して、わざわざ考えないで選ぼうとする姿が目立ちます。

 

確かに、ある時期までは記憶力さえよければ、

原因や理由について論理的に考えなくても

よい成績が取れるのです。

 

でも、いくつかの選択肢から「どれが正しいか」と選ぶ時点で、

自分なりの推理や考えを練って答えて、間違えて、正しい答えを知る子と、

適当に当てずっぽうで答えを決めて、間違えて、正しい答えを知る子では、

同じように正しい答えを記憶したとしても、

ずいぶん差が生じてくるのです。

 

ただ、小学校高学年くらいになるまでは、

むしろ、場の空気を読むのが上手で、先生の指示が通りやすくて、

「適当に当てずっぽうで答えを決めて、間違えて、正しい答えを知る」ことに徹している子の方が、

学校でも塾でも、有利に働くことも多いのです。

自分で推理すると、教わった後も、自分の考えにこだわって

再度ミスすることもありますから。

 

ただ、身近な大人が、

自分なりの推理や考えを練って答えて、間違えて、正しい答えを知る子と、

適当に当てずっぽうで答えを決めて、間違えて、正しい答えを知る子を

全く同じように見るか、

後者を優遇するようなことが続くと、

ほとんどの集団への適応力のいい子たちが、その態度に染まっていくのも

よく見かけます。

 

繰り返すようですが、集団への適応力がいいということは、

良い資質です。

ですからそれ自体に問題があるわけではありません。

ですが、もともとの気質とさまざまな要因が重なると、「考えない」癖が身に着くことがある、

という話をしました。

 

そこで、「考えない癖」を生じさせる要因と思われるものを

いくつか挙げてみますね。

 

★ 周囲の大人が、結論を急ぎがち。結果を早く出そうとしがち。

 

知能が高めで適応のいい子が考えない癖をつけるのは、

すばやく良い結果や答えに行きつくのには

自分で考えない方が早いと思うからです。

わたしたち大人も、「よくわからない素人が余計なことするより、

最初から専門家に頼んだ方がいい」と考えることがありますよね。

 

★ 「勉強」と名のつくものが、考えないものが中心なので、

「考える」というのが、どういうことかわからない。

 

文字の読み書きにしても、計算練習にしても、

知能系のドリルにしても、自分で考えず、先に答えを暗記しておいて

解いていくスタイルに慣れている子で、

「考える」というのがどういうことかわからない子がいます。

 

★ 1~3歳のころの接し方。

 

子どもに語りかけては、何でも解説してしまうと、

子どもが自分で見たり体験したりするものを

大人のフィルターを通したものに変質させてしまいます。

子どもが大人に向かって話しかけたり、働きかけたりする量より、

大人が子どもに向かって話しかけたり、働きかけたりする量があまりに多い場合、

さまざまな問題が生じてくるのを感じます。

0歳の赤ちゃんだって、相互にコミュニケーションしようという気持ちは十分

持っていますから、大人が「教えたい病」にかからないよう注意が必要だと思います。

 

バランスが悪い接し方を続けていると、子どもが自分で見ているものを信用せず、自分で行動した体験のフィードバックから

学ばず、大人の言葉だけを頼りに世界を理解しようとするようになっています。

 

★ 幼稚園が年齢以上の過剰な適応を求めている。

 

幼稚園での生活が始まって、考えない癖がひどくなる子が

たくさんいます。

年齢以上の過剰な適応を求めている園に

過剰に適応しようとして、

それができてしまうため、先生方からいつも褒められているという子に、

考えない癖が定着しやすいです。

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一見難しそうなことも、やってみたら案外簡単

2017-01-16 13:38:41 | 日々思うこと 雑感

正月休みが終わったとたん、ゼミの課題や院試験の勉強、定期テストの準備と

時間に追われている息子。

先日、コピー用紙に数式を書き連ねながら、こんなことを言っていました。

 

「 うちの家は、基本は放任で、英才教育って何かしてたわけでも、

系統だった勉強をしたわけでもないけど、

うちんちの環境で育って得したって思うのは、数式とか一見難しそうってものに

まったく嫌悪感がないってことかな。

丸バツつけられたり、点数でどうのこうの言われたことないしさ。

周りにぼくよりずっと頭がよかったり、いろんな訓練積んできた人がいるけど、

知らない数式が出てきたら、理解するも何も、考える前に思考停止してしまうんだ。

難しい単語が出てきた場合とかも、それがラテン語だったりすると、

わからないものを保留にした状態で読み進めたりしない。

 

その点、ぼくはたいした知識もないけど、物おじせずに海外のどんな難しそうな論文でもざっと目を通しておくし、

数字アレルギーがないから、苦手意識なしに、

自分でできるかどうか分析せずに、とりあえず解いてみるだけどさ。

その結果、やってみたけど、結局、できなかったって恥をかくことはあるよ。

そういうときに、わざとあげつらってバカにする人もいる。

でも、一見、不可能に見えるほど難しそうでも、やってみたら案外簡単だったって場合の方がずっと多いよ。」

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地下のトンネル工事の小道具ふたつ

2017-01-14 20:24:28 | 工作 ワークショップ

地下のトンネル工事中。

地下におりるためのエレベーターを作ると、遊びが楽しくなります。

エレベーターの作り方は、ふたが開く空き箱のふたを

半分に折って切って、窓を貼るだけ。

 

のぼったりおりたりするシステムは、

テーブルの脚にわっかをつけ、エレベーターに貼り付けた紙の帯を通すだけ

でできます。

 

 

トンネル工事の絵本に、トンネル内を通る配管の先から、風が噴出して、

人がびっくりするという絵がありました。

それを作りたいというので、ストローをどんどんつないで配管を作り、ストローの先に

風船をふくらますためのポンプが接続できるようにしました。(ストローがはまるサイズの

小さい筒を取り付けているだけです。紙を丸めて作ることもできます)

 

ポンプを押すと、ストローの先に置いた人形が風で吹き飛ぶので

子どもたちは大喜び。

ポンプがない場合、牛乳パックやマヨネーズの空き容器をポンプとして使ったり、

ビニール袋でポンプを作ったりできます。

最悪の場合、口で息を吹き込むと、

地下のトンネル工事は進行します。

 

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お仕事裏話 おわりです

2017-01-14 18:36:20 | 日々思うこと 雑感

★くんが海外に旅立って、
私と☆くんだけが、速達便の部署に残され、ハードな毎日が始まりました。
何百枚の郵便物を高速に処理しつつも、
もし、数字の見間違いミスなんて出ようものなら……。

上司とふたりきりで個室に閉じ込められて
こんこんと叱られ続ける……のだとか……。

速達便を手に飛行機で上司が移動する話……の

恐ろしいこと!

☆くんは、頭の回転が速く、完ぺき主義で粘り強く、
休まず、遅れず、とにかくまじめ一筋の20代前半の男の子(人)です。
その☆くんでさえ、上司を飛行機で飛ばしたことがあるらしい……

大雑把な私も神経尖らせて、目に力込めすぎて充血するくらい力入れて、
ピラピラピラ~電話帳みたいな分厚い郵便番号簿を調べ続け、
ちょっとの移動も息継ぎなしのかけ足で動き、
高速で郵便物を区分けし続けました。

とにかく、ミスが怖い~~。

毎日、極限状態の恐怖に煽られながら、この部署はいつでも急いでいます。
のんびりやの私までが……!

この仕事……郵便物の量はその日その日のお客様次第。
絶対、最低の郵便量とつりあう人しか配置していないのに、
大量の速達便……なんて日はしょっちゅうあるのです。

時折、部署を視察して回っている上司が、「郵便物が多い日は手伝うからね~」なんて、甘い言葉をかけてきますが、
実際、大量の郵便物が届く日に限って、上司がつかまったためしがありません。

郵便局内を駆け回って捜し歩いても、いないんですよ~
それにどこも忙しくて、猫の手も借りたい状態ですから、上司を見つけたところで、
「まってね~もう少しこの仕事が片付いたらね~」なんて言われるのがオチです。
よほど幸運にめぐまれない限り、ダッシュで駆け戻って、持てる力を出し切って仕事するしかないんです。

速達便を送り出す時間までのカウントダウンに間にあうように……。

そうして死ぬ気でがんばって、速達便の袋を厳重にロックして、「あ~終わった~」と脱力したとたん、

次の仕事までの、数分の間を埋めてあげましょう……とばかりに
次から次へと
100枚の紙にハンコを押してく……とか、
何十個も箱をたたんでく……といった、内職が流れてきます。
一分足りと、人を休ませない職場……まるで機械の一部になったような日々が続きます。

おまけに精神衛生上よくないのが、よその部署から聞こえてくる
怒鳴り声と、大声で飛び交う他人の悪口……
(ここの郵便局内のパートは、どんなに辛くても、身体を壊しても、仕事をやめるのはご法度です。
やめたら、ひたすら悪口を言われます。
その時期、肩の痛みで仕事をやめた70歳を超えるおばあさんの悪口が、1月ほど続いていました。
とにかく悪口が怖いので、意識障害起すような大病した人も翌日には出勤してましたよ~。)

幼児教育とかけ離れた話題が長引いていますが、
このお仕事裏話……幼児を育てながら、

子どもの教育や将来について思いを巡らせている方々にお伝えしたい……
いっしょに考えていただきたい……と思うことも、

いろいろ含まれているんです。

それはMI理論について書いてある著書で目にした次のような内容……

IQテストの結果が良いと、その後の学校での成績も良い可能性は大いにありえるそう。  でも、
学校を卒業後、仕事で成功するかどうかにはほとんど関係ないのだとか。

多くの人は、それを「運」という言葉だけで片づけていますが、

実際、職場で働いてみれば、
何らかの能力の有無や高低がその後の人生を左右しているようにも見えるのです。

社会では、
人間関係的知能とか内省的知能といった、

IQテストでは測らないけれど、
多元的知能理論の中ではきちんと独立した知能のひとつと見なされている能力の高い低いが、
試される場もたくさんあります。

社会に出ると、そればかり求められる時期もあるんですよね。

郵便局でも、高学歴……なはずの正社員が、おどおどして、しゃべるのが苦手だったりすると、

上から怒鳴られていびられて、こっちの胃まで
痛くなっちゃうような場面を何度も目にしました。

がんばること、できることが、素直に評価される学生時代と違って、
人の感情が織り成すドラマや
力関係のエネルギーの流れが読めてるかどうかが、
職場では大事だったりするのです。

良い大学を卒業して、良い就職するのがゴールじゃなくて、
そこからが、スタート地点でもあるのですよね。


そう考えると、受験戦争で勝ち抜かせることばかり考えて、
塾や習い事で子どもの時間を奪って、
友達との遊び時間を制限するのは、
先細りの将来設計……というか、
学校を出てからの子どもを苦しめるはめになるな~
と感じているのです。

お仕事裏話に戻りますが、実は私は、小銭を稼ぐこと以外に、
この郵便局内で、もう少しお仕事しておきたい事情が2つありました。
ひとつは、もともと作家志望ですから、辛かろうと、パート料が安かろうと、
たくさんの人々とさまざまな仕事が錯綜するこの職場には、
興味津々……観察しがいがあったのです。

それともうひとつ。
家庭教師先(私のもうひとつのお仕事です)の男の子(人)が、
大学をやめてぶらぶらしていたので、
その男の子(人)に合った仕事はないかと探しているところだったのです。

時々、忙しさがピークに達すると、上司がやってきて、
「主婦のお友だちで、働きたい人いないかな?」なんて質問を受けることがありました。
「事情があって大学をやめてしまった若い男の……」と言いかけると、
手を振られて、「主婦がいいんだけど」となるのですが……。

本当に忙しくなったら、上司も選り好みしていられないでしょうし、
もうちょっとここで働いておいて様子をうかがっておいて、

人間関係築くのが苦手……な、その男の子(人)が
働けそうな仕事内容はないか、
潜入調査しておこう……という気持ちもあったのですよ。

 

☆くんとふたりきりで、仕事をすることになった当初、
☆くんはほとんど口をきいてくれませんでした。
仕事のわからない箇所をたずねると(田舎の郵便番号は特殊で、郵便番号簿では判別できないものがあるのです)
「はぁ~」とため息をついて、全身でイヤさをアピールしながら、
ぼそぼそと教えてくれました。

非協力的ではあるけれど……底意地が悪くはないな……
無視してるだけなら無害か……この部署に働けない人がきたらイラつくのもわかるわ……こんな恐ろしい仕事の責任が自分ひとりの肩にかかってくるわけだしね……

そんなことを考えつつ、まず何度も教える手間をかけさせて
仕事の足を引っ張らないように、
時折、別の部署に荷物を取りに移動するときに、聞いたことをメモしておき、
その日のうちに覚えてしまうようにしました。
また、単純作業や雑用には、真剣に取り組むようにしました。
(メジャーな仕事では、まだ迷惑かけてますからね。日頃、これがきちんとできない性格なんですが、そこはお仕事!……とがんばりました)

海外便の金額の計算は、ややこしいのですが……
肉体労働ではがんばりようがなくて、
重すぎる荷物の積み込みは☆くんの世話になりっぱなしなので、
金額計算ではりきるしかありません。

そうして自分のできる部分でがんばるうちに、
私自身の☆くんへの見方が変化してきました。

私に対する態度は相変わらず、ムス~ッとして、無視をきめこんでで、あまり良い感じがしないのですが、

「仕事態度」と「仕事の能力」という面で眺めると、
どんな小さな仕事もていねいでまじめで、ミスが少なく、いつも真剣で
かなり好感が持てるのです。
能力は非常に高くて、おそらく国公立大か難関私立大を出ているのではないかと思われました。上司に対する礼儀はきちんとしています。
正社員ではないので、おそらく私と同じ700円台の賃金……?
それで、命をすり減らすように休みなく全力疾走で働き続ける☆くんの姿が
ちょっと痛々しくもありました。

これまで私が見たことないほど働いていて……
☆くんが求めているものは、本当にささやかなもので、
ちょっと上司に褒められることだったり、周囲に認められることだったりするのです。
こんなに働いてて、現実にすごいのに、
いったんこの郵便局から外に出れば「フリーター」というくくりでしか
捉えてもらえない社会的に弱い立場です。
でも、これほど上司に当てにされ、利用されていては(こんだけ仕事ができても正社員にしてくれないのだとか)
自分の仕事について真剣に考える勇気も出ないでしょう。

そんな風に、☆くんについていろいろと見えてくるにつれ、
私は上司が視察にくるときは
なるべく☆くんのすごいところに上司が気づくよう
陰ながらアピールしていきました。

また、☆くんといっしょに別の部署の手伝いに行くときは、
☆くんが仕事がよくできることに周囲の人も気づくように
見えないところで手助けするようにしていました。

どちらも☆くんは気づいていませんでしたが……
時間が経つにつれ、☆くんと私は仲の良い男友達同士のようになって、
「あっち手伝いに行こうぜ~」「今日はすごい荷物だぞ~」と
いうノリで働くようになっていました。
私にすれば、☆くんが何年間もフリーターで過すことはもったいなすぎるように映るのです。自分で自分の能力を見定めて、
良い仕事を探しに行かなくちゃ~とアドバイスするのですが、自信がない様子。
仕事はすごくできるのに、自分で何がしたいのか、
つかみかねるようなのです。
それと自分の高い能力がきちんと把握できていないようでもありました。


とにかく単調で刺激が少なくて、それでいてハードな職場ですから……

お客さんが怒鳴り込んできて、上司が冷や汗かいて駆け回る事件や、
機械が壊れるたびにキレるおばちゃんパートがわめきながら
機械をバンバンたたく事件は、

何かワクワクしてくるような……?

思わず笑い出したくなる出来事でもあるのです。
すっかり仲良くなった私と☆くんは、
局内がワタワタして騒がしいときには、
目が合うと同時に、吹き出して笑いあうこともよくありました。

他の部署のパートやバイトのマイペースさんたちも
同様だったらしく、

息のつまるような仕事なだけに、
しょうもない出来事に野次馬根性丸出しになっていて、

そこの手伝いに入ると開口一番、
「ねぇねぇ、今日怒ってきたお客さん見た?すごかったよね~」と目をキラキラ
させながら話しかけてきました。
そんなくだらないことがきっかけで、別の部署にも友だちの輪が広がって……
それなりに楽しい職場になりつつもあったのですが……

上司からどんどん残業を頼まれるようになったことと、
夕食作って仕事に出かけてたものの
冷めた食事がまずかったのか、
息子が夕食も食べずに寝てしまうことや、宿題をせずに学校に行く日が増えたことが懇談会でわかり……。

悩んだ末、仕事の引継ぎができる期間を終えたら
パートをやめることを申し出ました。

それほど惜しまれることもなく、
仕事覚えるのはやい割にあんまりお仕事できる方じゃないのね……と
気づいたのか?

いつもまったりしている私にしてはめずらしく駆け足で過した日々は終わりました。





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お仕事裏話 続き

2017-01-13 22:38:03 | 日々思うこと 雑感



速達便には20代前半と20代後半の男の子(人?)が担当していました。
そのうち年上の方をちなみに★くんとすると、その★くんが、彼の言葉を借りると、
いつまでもこんなバカなこと(フリーター)やってるわけにいかないし、海外行って勉強しなおすことにした。……
ために、
その代わりに私が連れてこられたのでした。
ということは、彼が海外に旅立つまでの1~2週間の間に、
私がこの仕事をすっかり覚えて、なおかつミスなく猛烈に働く
即戦力とならなきゃいけないというわけです……

どこの職場でも経験しますが、たとえ10円でも出世は出世、
その額のみみっちさには到底見合わない
ねたみを受けます。
1時間に1本だけ、子どもに駄菓子屋で「うまか棒」を買ってあげる額のアップで……
部署を変わるたびに、仕事を教えない、いびる~といった先輩の
いじわる度はアップしていきます。

私なんて、短期バイト出身?などという郵便局内では下の下の身分で
上司の鶴の一声で「あっち行ってくれ」「こっち行ってくれ」
と振り回されてますから、仕事内容の難易度の上がり具合も先輩のいびり度の上がり具合も
半端じゃありません。

それでも……海外留学を前にして、立つ鳥 跡を濁さず……なんて言葉も
あるくらいだし、ビシッと仕事は教えてくれるはず……と思ったのは甘く……

「速達便の仕事は高度でハードで1秒足りと時間がないから、
人の世話してる時間なんてない」という態度で、
いつも駆け足で移動して、いきなり怒鳴りつける~

「1回しか教えへんで~!!」と、20手順ほど高速で見せる
と……
(郵便物扱うの速いね~手品みたい~
★くんが仕事ができるのはよ~くわかったけど、
仕事を教わるにはまずい人にあたったな~という感じでした。

いっしょにいる20代前半の男の子(人?)……☆くんとしますと、
こちらは、終始無言で、時折にらむこととため息しかつかない……
★くんの子分みたいな感じです。

教わるのは難しいと察した私は、2人の仕事の手元を見ることと、
わからない部分をしぼっておいて、☆くんがひとりになったところで、
質問をぶつけるという作戦に出ました。

★くんは毎回仕事の仕方をたずねると感情が高ぶって
わめきちらすので、余計わからなくなるのです。
☆くんはぶす~っとして、教えたくなさそうにはしていますが、
聞かれたことにはちゃんと答えようとする生真面目なところがありましたから、
これは良い方法でした。

ここの仕事のメインは大量の郵便物の郵便番号と住所が合っているか、電話帳みたいな
分厚い郵便番号簿で、調べまくることです。
とにかく時間厳守で、速達を送り出す時間までに毎日分量のちがう速達相手に、
辞書引き大会みたいに
ピラピラピラピラあの、電話帳みたいなページをめくりまくる。

京都や田舎の郵便番号のややこしいこと、うっとうしいこと!
おまけに、お客様は、
郵便番号も住所も適当に省略していることが多い……それを完璧に一枚のこらず修正して、「あと○分!!」「あと○秒!!」なんてカウントダウンしながら、
急いで分けて、特別な袋に詰めて、
毎日、わわわわわ~!!!
と全力疾走する感じの仕事が続きます。


話が戻りますが、私を短期バイトに誘った友人は
その頃どうしていたかと言いますと、グループは別でしたが無事、苦情電話(翌日配達)の応対の仕事を終え、お家でまったり過していました。

遊びに行くと、「郵便局どう?」と聞くので、
これまでのあらましを説明していくと、
「そうそう~職場では、絶対目立っちゃダメ。これ、鉄則よ。
前の会社(薬品会社です)の女子大出の子なんて、先輩、ストロベリーのつづりどうでしたっけ?って聞くのよ~。」
「えっ?ストロベリー?」
「そう、4年生出てて、わかんないわけないじゃない。わざとよ。アホな子演じて、上に気に入られようと思ってるの!!」
「でも、ストロベリーはあまり使わないし、長いしね……ほんとにド忘れしたのかも……」
「ちがうに決まってるじゃない!
社会人になったら、みんなそうしてたわよ。」
ああ……
「休まず、遅れず、働かず」とよく聞く日本の会社。
働かずというのは、働いてはダメということではなく、めちゃくちゃ働くには働いて……さらに目立たないという意味らしい。

友人曰く、
派手に働けば、たいてい上司にねたまれて左遷させられるのが、
日本の会社のお約束。
ビジネスマンは若いうちから目立ってはまず社会で成功することはないのだとか……。

大学入試まで、ちょっとでも人より抜きん出ようと
ひたすらがんばってきた若い人々が、
一歩、社会に出でると、今度は
「がんばるな!」と自分にブレーキをかけて、上にとって都合の良い人間になることに心をくだくことを求められているとは……

社会から創造力や活気が失われていくのもわかる気が……。

「私の場合、目立とうと思って、はりきってるわけじゃないのよ。
ミスも多いし、得意なとこではがんばっとかないと、良いとこなしになっちゃうじゃない……ねぇ。
まあ、あちこちで友だちもできたし、ドリンク飲める食堂もあるし、もうちょっとがんばってみるわ。
速達便はほんと……心臓に悪いけどね。」

友人には、苦しい笑顔で返事をしました。


もう少し続きます。

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