ニガイメ記

文章が苦手なので、イメージ写真でお茶をにごす日記
・・・の略。

SQW#50

2006年10月18日 | T-PROOF

実はドヴォルザークは室内楽に傑作が多い。弦楽四重奏曲は番号付きのものだけでも14曲あるが(他に「糸杉」や初期習作)、突出して有名な第12番「アメリカ」以外にも佳曲がいっぱい、宝の山なのだ。むしろ「アメリカ」が最も飽きやすく、つまらないくらいだ。私には。

晴海トリトンのおなじみ「クァルテット・ウェンズデイ」シリーズで、古典四重奏団による「ドヴォルザーク・弦楽四重奏曲選集」がある。今日と来月1日の計2回、第10番から最後の第14番までが演奏される。
「アメリカ」以外の曲を一度にまとめて聞ける実に楽しみな企画。個人的希望を言えば、全3回にしてさらに何曲かやっても良かったくらいだ。8番、9番あたりも魅力たっぷりな曲、私の好きな曲なので。

本日は第10~12番まで。曲順は、第12番ヘ長調Op.96「アメリカ」、第10番変ホ長調Op.51、休憩をはさんで第11番ハ長調Op.61。
あえて番号順にせず、ポピュラーな「アメリカ」を初めにやってしまい、メインに11番とは。この曲順は嬉しい。11番はほんと傑作だからなあ。

古典四重奏団の演奏を聞くのは1年ぶり(去年のバルトーク全曲演奏会、良かった!)。
まず「アメリカ」からしてとても新鮮な響き。言葉ではうまく言えないのだが――、いわゆる民族的旋律の伝統的な節回しにはまったく頼らず、独特な強弱の付け方や間の取り方で曲の本質を顕していく感じ。弱音に不思議な魅力があり、惹きつけられる。それは単に美音で惹きつけるというのはちょっと違って、その後の展開の予感をたっぷり孕んで期待感を高めさせるようなピアニッシモだ。そこから、歯切れの良さリズムの心地よさをもった強奏部への持って行きかたが絶妙。結果、立体感がよく出る。
そんな演奏スタイルが特によく活きて、圧倒的名演となったのが第11番だ。スラブ的旋律美よりむしろブラームスっぽい構成感や均整美が魅力のこの曲を、細部まで練り上げられた解釈で聞かせてくれ、情的にも知的にも満足であった。
思えば、既存の形をなぞるような演奏は絶対しない楽団だし、ドヴォルザークのような曲で、一音一音を吟味しつつ精緻に再構成していく方法をとったら、そりゃユニークな演奏になるでしょう。

ドヴォルザークのクァルテットは「アメリカ」以外も良い、否、「アメリカ」以外が良い!
これをジャンルを広げて言い換えると、ドヴォルザークは「新世界」以外も良い、否、「新世界」以外が良い! ということで。これは独断かな。


camera: Kyocera T-PROOF  film: Kodak HD400