オーチャードホールの「ワーグナー ガラ・コンサート」へ行ってきた。Bunkamura20周年記念特別企画だ。
飯守泰次郎指揮東京フィルハーモニー交響楽団で、前半が「タンホイザー」序曲と「トリスタンとイゾルデ」前奏曲&愛の死。後半が「ワルキューレ」第3幕(演奏会形式)。
さすがはワーグナー指揮者として名高い飯守泰次郎、十分期待に応えてくれた。前半の2曲からして、密度が高く、大きなうねりも心地よい、好演。
メインの「ワルキューレ」第3幕は、01年や08年に聴いた時よりも、響きが明るく、流麗になったように感じられた。スケールの大きさと同時に、緻密さ繊細さも持ち合わせており、ストーリー上の転機や登場人物の心理に対応しての自在な表現は見事なものだった。また、今回は東フィルもコンディション上々なのか、集中力の高さが感じられ、反応の速さも気持ち良い。
歌手では、ヴォータン役のアラン・タイトスが急病につき、代役でラルフ・ルーカス。朗々と歌い上げてはいるがヴォータンとしてはやはり深みや渋み、風格が欲しいところ。本来の役柄ではないように思えた。ブリュンヒルデのキャスリン・フォスターは、円やかな美声にて安定した歌唱、なんとなくしっとりとした感じのブリュンヒルデ。時にもっと強さや鋭さを求めたくなる箇所もあったが、全体的には心理がよく伝わってくる、なかなかの名唱。
とにもかくにも、オペラ全曲上演だろうが抜粋版コンサート形式だろうが、今後も「飯守泰次郎のワーグナー」には大いに注目すべし、ってことで。
camera: Kyocera T-PROOF film: Konica CENTURIA SUPER400