ニガイメ記

文章が苦手なので、イメージ写真でお茶をにごす日記
・・・の略。

十月大歌舞伎

2006年10月07日 | μ2

歌舞伎座・夜の部。

「忠臣蔵、五~六段目」。仁左衛門の勘平が傑作。絶品。本日はこれに尽きる。
一見東京型のやり方のようだが、随所に独自の工夫がある。
五段目、きちんと糸に乗っ芝居運びが心地よく、かどかどをくっきり決めた形が美しい。かちっとした中に自ずとはんなりとした柔らかみが漂うのがこの人のとても良いところ。
六段目、若い。今まで見た勘平の中で最も若々しく見えた。お軽が菊之助であることとの相乗効果もあり、この物語が若い夫婦の若さゆえの悲劇だということが今回初めてはっきり実感できた。仁左衛門の演技はどの瞬間を切り取っても勘平そのものであり、心理がよくわかる。抗っても抗い切れずに自分を飲み込んでしまう運命の奔流のようなものさえ、その劇空間の背後に感じせしめる。
海老蔵の定九郎は、顔が実に立派。ニヒルなこの役は合ってるはずだが、動きがまだまだ、ね。菊之助のお軽は、女房らしさより娘っぽさが濃厚。今回の仁左衛門とは良いコンビに見えたけど。
仁左衛門の勘平は、1月の大阪に続いて今年2演目だが、意外なことにその前は昭和61年歌舞伎座、つまり20年ぶりとなるらしい。

もう一本が幸四郎初役の「髪結新三」。幸四郎には合わない役。新三には見えねぇ。結果、全体的に退屈。段四郎(源七)や門之助(忠七)は歌舞伎の世界の人になっていた。


camera: Olympus μ2  film: Agfa VISTA400