表紙の絵が気に入ったので買った。
カバーだけ取って置いてあとは処分するかと
思ったが勿体無いので取り合えず読んでみたら意外な拾い物だった。
美少女の陰陽師が、都に出現した強力な妖怪を倒すべく
七人の忍者の護衛のもと、出雲の山中に隠された破邪の剣を
取りに向かうが・・・・、というありきたりな同人誌並みのストーリー。
ペラペラで内容のないラノベかと思いきや、
忍者が登場し、妖魅に誑かされた毛利、尼子の敵忍者軍団の真っ只中
いかに包囲網を突破するか、という段になって
途端に描写が生き生きとしてくる。
忍者対忍者の知力、体力、忍術を尽くした忍者大戦の様相を呈するのだ。
作者はおそらく大の忍者好きであり、
美少女の陰陽師というのは釣り餌で、
本当は忍者大戦を書きたかったのでは、と勘ぐりたくなる。
それくらい忍者対忍者の描写は生き生きとしており
七人の忍者のキャラも立っている。
この頃になると主役の安部晴明の子孫・土御門光子wも単なる足手まといキャラに見えてくる。
忍者や忍術の描写も、考証や取材を十分に行ったと思われる
重厚なもので
「ドカーンときて、ガキーンときて、バーンとなった」みたいな
ことは全くない。
まるでハードボイルドで乾いた描写の「カムイ外伝」や「サスケ」を読んでいるようだ。
忍者の描写も、白土三平風の昔ながらのイメージをふまえつつ
行動、思考様式に今風の新しさもあり
中々に引き込まれる。
まあ21世紀も十年を過ぎた今日、まさか痛快無比な忍者小説を読めとは
思っていなかったのでそれがお手柄の第一。
重厚な描写、綺羅星のような登場人物の豊富さで
全4巻位かかりそうな克明な場面設定と登場人物の描写が
意外と発展せずあっさりと処理されていったり、あれ何のために出て来たの?
という腰砕け的な部分もままあり、
全体的な構成にやや難があるのが課題。
だが、忍者描写の面白さだけでも十部に読む価値ありと思う。
追伸
意外と売れたのか、同じ陰陽師が主役の続編が出た(る?)ようだ。
忍者はまた出るのかな?