
まるで少年時代の終わりを告げられたかのような、切ない郷愁がこみ上げてくる。ワールド・トレード・センタービルで綱渡りをした大道芸人フィリップ・プティを描く本作は、無邪気に夢見る事ができた時代へのノスタルジーに満ちている。拙い英語(もといフランス訛りの英語)で野心を語るジョゼフ・ゴードン・レヴィットのチャーミングさに惹かれて誰もが犯罪行為と同義の綱渡りに二つ返事で参加する姿が愛らしい。
WTC綱渡りをまるで『オーシャンズ11』のようなケイパー映画風に描写する所までドキュメンタリー版『マン・オン・ワイヤー』と同じアプローチで、ほとんど実写映画版といった趣なのだが、記録映像が残っていない先行作品に対して完全再現した所にゼメキス版の真骨頂がある。3DCGによって創造された地上411メートル、WTCの屋上はIMAX映像で圧巻の臨場感を演出する。あくまで客観視されたドキュメンタリー版とは異なり、プティがワイヤーの上で何を感じてパフォーマンスに挑んだのかその心情によりフォーカスされており、ワイヤー往復からUターン、寝そべりまでほぼオンタイムで再現されていて目が眩むかのようだ。
批評家にも絶賛された本作だが、アカデミー賞では主要部門はおろか、技術部門にもノミネートされなかった。ハリウッド映画がCG偏重からリバウンドしているムーブメントがあった事はもちろん、WTCをノスタルジーの象徴とするストーリーテリングがドキュメンタリー版と全く同じアプローチだった事も原因ではないだろうか。
事件後、WTC永久パスポートを得たというドキュメンタリー版では語られなかったエピローグが、僕らにあれが“過ぎ去った季節”であったことを知らしめる。無邪気でいられる時代は永久には続かないのだ。
WTC綱渡りをまるで『オーシャンズ11』のようなケイパー映画風に描写する所までドキュメンタリー版『マン・オン・ワイヤー』と同じアプローチで、ほとんど実写映画版といった趣なのだが、記録映像が残っていない先行作品に対して完全再現した所にゼメキス版の真骨頂がある。3DCGによって創造された地上411メートル、WTCの屋上はIMAX映像で圧巻の臨場感を演出する。あくまで客観視されたドキュメンタリー版とは異なり、プティがワイヤーの上で何を感じてパフォーマンスに挑んだのかその心情によりフォーカスされており、ワイヤー往復からUターン、寝そべりまでほぼオンタイムで再現されていて目が眩むかのようだ。
批評家にも絶賛された本作だが、アカデミー賞では主要部門はおろか、技術部門にもノミネートされなかった。ハリウッド映画がCG偏重からリバウンドしているムーブメントがあった事はもちろん、WTCをノスタルジーの象徴とするストーリーテリングがドキュメンタリー版と全く同じアプローチだった事も原因ではないだろうか。
事件後、WTC永久パスポートを得たというドキュメンタリー版では語られなかったエピローグが、僕らにあれが“過ぎ去った季節”であったことを知らしめる。無邪気でいられる時代は永久には続かないのだ。
『ザ・ウォーク』15・米
監督 ロバート・ゼメキス
出演 ジョゼフ・ゴードン・レヴィット、シャルロット・ル・ボン、ジェームズ・バッジデール、ベン・キングスレー