長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『スーサイド・スクワッド』

2016-10-14 | 映画レビュー(す)

 ハイハイ、今どき予告編詐欺に引っかかるような僕が悪かったんですよ!でも期待しちゃったじゃないか。ようやくザック・スナイダーの専任体制を解いたDCがデヴィッド・エアーを抜擢するなんて仰天人事、ひょっとしてと思ったのは僕だけじゃなかったハズだ。ところが公開が近付くにつれ明らかになった数々の悪評に期待値はダダ下がり、そして本編は下がった期待を少しも裏切らない壊滅的仕上がりだった。

聞けばエアーのディレクターズ・カットと大好評を博した予告編製作会社の編集による2バージョンがスクリーニングにかけられ、より“ポップで楽しい”後者が公開されたのだと言う。当のエアーは「どっちも自分の作品」と大人の対応だが、見終えた今となってはエアー版も救い難い出来だった事は想像がつく。

まず8人もいる自殺部隊“スーサイド・スクワッド”に均等に見せ場を与える事はおろか、キャラクターを立てる事が出来ていない。
メインは既にスターとして認知されているハーレークイン役マーゴット・ロビーとデッドショット役ウィル・スミスの2人だ。ウィル公にアンサンブルなんかできるハズがない。なんせ「主役じゃないから」とタランティーノの『ジャンゴ』でジェイミー・フォックスの役を蹴った男だ。スゴ腕のスナイパーだが子煩悩という湿っぽい展開はウィルの見せ場作りのために必要以上に盛り込まれている。

方やマーゴット・ロビーがキャリアの転換点とも言える程にドハマリしたハーレークインは彼女の豪快な色気が見るも楽しく、ほとんど丸出しのお尻と共に目が釘付けになってしまった。

それはいい。
問題はジャレッド・レトを招聘してまで復活させたジョーカーが恋に生きるオラオラ系男子だなんてキャラ付け、いったい誰得なんだよ!?恋に生きるジョーカーなんて見たいか!?

アクションシークエンスも目眩がするほどダサい。
ヴィランが8人も揃っていながら彼らの基本攻撃が撃つ、殴るしかないのは絵的にあまりに貧相だ。やられ役として随伴する特殊部隊と何ら差別化されていないじゃないか!バットとか鉄製ブーメランとか素手でチマチマ倒しているような奴らを恩赦まで与えて雇うなよ!メキシコ系ギャングにして非業のパイロキネシス使いディアブロのみエアー映画的な刻印を感じるのだが…。

完全にお色気要員扱いされているカーラ・デルヴィーニュとの最終決戦の頃には観客席はもうどうでもいい気分で自殺者続出だ。
 ギャグも増量、ノリノリの音楽も多用してかなりのテコ入れが施してあるが、我慢強く企画開発し、マーケットを開拓してきたマーベルには何人のヒーローがアッセンブルしようが太刀打ちできないだろう。もうDCには金を落とさん!


「スーサイド・スクワッド」16・米
監督 デヴィッド・エアー
出演 ウィル・スミス、マーゴット・ロビー、カーラ・デルヴィーニュ、ジョエル・キナマン、ヴィオラ・デイビス、ジャレッド・レト、ベン・アフレック
 

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