長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ブレット・トレイン』

2022-09-25 | 映画レビュー(ふ)

 バカ映画の割には前半の滑りが悪いし、せっかく列車内に物語を限定したアクションは地の利を活かしておらず(これがチャド・スタエルスキーだったら!)、暴走列車が京都市街を脱線する画は日本のプロダクションが入っていればやらなかっただろうなとは思うが、こういう映画にとやかく言っても仕方がない。AppleTV+『パチンコ』、HBOMAX『TOKYO VICE』と日本を舞台にした革新的な作品が相次いだ年に、伊坂幸太郎『マリアビートル』を原作とした本作がハリウッドにおける日本描写の“定番”をやっている。伝説的な悪党“ホワイトデス”の息子と身代金を巡って殺し屋どもがくんずほぐれつするアクションコメディは、オールスターキャストを楽しめればそれで十分だろう。主演のブラピはさすがにこの手の映画をやるには歳を取りすぎた感は否めないものの、久々の3枚目バカ路線でチャーミングさは健在。アーロン・テイラー・ジョンソンはクリストファー・ノーラン映画(『テネット』)よりずっとマトモな扱いで、何より『アトランタ』からブライアン・タイリー・ヘンリー、ザジ・ビーツらが合流して見せ場を得ているのが嬉しい。特にタイリー・ヘンリーの扱いは大きく、ペーパーボーイよろしくキレ散らかしてくれたのは最高だった。そして真田広之のカッコいいこと!唯一人、キャスト陣で見せ場を欠いたのはあえて言えばアンドリュー小路か。製作陣は彼の手足を活かせておらず、まったくわかっていない(『ウォリアー』を見よ!)。

 最も評価したいのは東京五輪マスコットキャラクターを模したユルキャラ“モモもん”が殴られ、撃たれ、刺されとフルボッコに遭うことだ。奇しくも東京五輪を巡る汚職事件で逮捕者が相次ぐ中での日本公開。ヘンテコ日本描写ばかりの本作で、唯一的を得ていた。


『ブレット・トレイン』22・米
監督 デヴィッド・リーチ
出演 ブラッド・ピット、アーロン・テイラー・ジョンソン、ジョーイ・キング、ブライアン・タイリー・ヘンリー、アンドリュー小路、真田広之、マイケル・シャノン、ザジ・ビーツ、サンドラ・ブロック、チャニング・テイタム

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