長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『セルフィッシュ・サマー』

2018-09-19 | 映画レビュー(せ)

「オレ、この間、あのコとイチャイチャしてさー」
「エッチの寸前までいったんだけど、ジャマが入ってよー」
「彼女を支えられるのはオレしかいないから、ついててあげなくちゃ」
男同士の他愛もない会話。「オマエら付き合ってんだ?」と聞くと決まってこう言う事が多い。
「ううん。でも微妙な関係なんだ」

こんな会話を男子はけっこうやっている。端から見るとイタいし、何より中身のない会話だ。ジャド・アパトウ軍団でも一番非常識で下品なギャグをやるデヴィッド・ゴードン・グリーン監督だが、本作ではブロマンス映画特有の会話の面白さをオミットし、リアルな男の滑稽さを描き出す。自分のダメっぷりを直視できない男たちの行程はどこへ向かうのかわからないテンションをふつふつと秘めていて、面白い。グリーンは本作でベルリン映画祭監督賞に輝いた。

アパトウ軍団ではサブを務めてきたポール・ラッドがその実力を発揮している。スティーヴ・カレルといい、本当に哀しい事を知っている人にしか出せないような、物憂い気で滑稽な孤独感を滲ませている。焼け落ちた廃墟で一人、家族ごっこに興じる姿はこの映画で最も心に残る、無性に悲しい場面だ。

 本作はロードムービーだが、男たちの行程はあくまで仕事であり、目的地はない。だが日常とはそんな進行方向も定まらないロングウォークではないだろうか。


『セルフィッシュ・サマー』13・米
監督 デヴィッド・ゴードン・グリーン
出演 ポール・ラッド、エミール・ハーシュ
 

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