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長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『バーニー みんなが愛した殺人者』

2020-03-23 | 映画レビュー(は)

 リチャード・リンクレイターは異質なフィルモグラフィの映画作家だ。観客の実時間と映画内の実時間が一致する『ビフォア・サンライズ』から始まる3部作や、12年をかけて1人の少年の成長を撮ったフィクション『6才のボクが、大人になるまで』が有名だが、この小品『バーニー』にはギョッとさせられた。テキサスのド田舎で起きた実際の事件をモキュメンタリー、再現ドラマとジャンルレスに描いているのだ。

 リンクレイターとは『スクール・オブ・ロック』でタッグを組んだジャック・ブラックが主人公バーニーに扮する。バーニーは誰とでも打ち解ける不思議な間合いの持ち主で、町の人気者だ。ブラックは人当たりも良ければ歌も異様に巧いこの役で喜劇俳優の本領を発揮。キモチ悪いのに、とにかく可笑しい。そんな彼が町でも評判のイジワル婆さん(シャーリー・マクレーン)と絡むと、さらに捻じれた笑いのケミカルが起きていく。

 聖人君子のようなバーニーもマクレーン扮するマージョリーの横暴さに追い詰められ、ついに凶行に走る。彼女の死体を隠し、富を得た彼は次々と周囲へ善行を施すことで良心を保とうとするが、住民は真相を知っても彼を許すのである。マシュー・マコノヒー演じる検事ただ1人がモラルを叫ぶ奇妙な展開はやがて赦しとは何かと問いかけていく。

 映画とはカメラが映すものを真実とするフィクションである。リンクレイターは時間、場所、虚実、人の境界をぼかし、映画ならではの新たなリアルを構築せんと可能性を模索しているのだ。


『バーニー みんなが愛した殺人者』11・米
監督 リチャード・リンクレイター
出演 ジャック・ブラック、シャーリー・マクレーン、マシュー・マコノヒー
 

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