長内那由多のMovie Note

映画や海外ドラマのレビューを中心としたブログ

『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』

2023-12-15 | 映画レビュー(す)
 今やオリジナル企画の通らなくなった映画界。目を引くのが映画会社ではない“異業種”による出資だ。日本ではユニクロがヴィム・ヴェンダースを招き、日本を舞台にした役所広司主演作『PERFECT DAYS』を製作。サン・ローランはペドロ・アルモドバルで30分の短編ウエスタン『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』を作った。いわゆる“企画モノ”なら巨匠アルモドバルの筆も実に軽く、今やアメリカ映画界を代表する名優へと成長したイーサン・ホーク、飛ぶ鳥落とす勢いの人気スター、ペドロ・パスカルらと共に実に楽しげなコラボレーションを実現している。特に英語圏の俳優であるホークにとってスペインの巨匠とのタッグは貴重な機会。短編にもかかわらず、並々ならぬ気迫で名演を披露する充実ぶりだ。

 西部のとある町にペドロ・パスカルが流れ着く。町を守る保安官にはイーサン・ホーク。2人の男はかつて愛し合った仲だった。束の間の再会に彼らは秘め続けた想いを確かめ合うが、無法の西部がそれを許しはしない。アルモドバルはくすんだ荒野にトレードマークとも言える原色を配し、キャリア初期を彷彿とさせる奔放なエロチシズムに思わず笑みがこぼれてしまう。馬、砂塵、暮れゆく太陽と西部劇の韻が美しく踏まれ、30分では短すぎるという想いが込み上げるのだ。

 かつて『ブロークバック・マウンテン』でヒース・レジャーとジェイク・ギレンホールが語り合ったように、男たちは共に牧場をやろうと言う。忍従と苦難による紆余曲折を終え、男と男は手を取って共に生きていくのである。


『ストレンジ・ウェイ・オブ・ライフ』23・仏、スペイン
監督 ペドロ・アルモドバル
出演 イーサン・ホーク、ペドロ・パスカル

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