
実に54年ぶりとなったメリー・ポピンズの帰還は子供達の世話が目的ではない。時は1935年、世界恐慌の只中であり、そして2018年にこの映画を迎える僕らもまた困難な時代を生きている。2017年~2018年のアメリカ映画は規範なき社会の象徴として親の不在、家族の形骸化が多く描かれた。今一度、僕らを導く存在が必要だったのだ。
今度のメリー・ポピンズはあからまさに魔法を使って部屋の片づけなんかしない(魔法を使った後に何かとしらばっくれるのは原作に近いのだろう)。かつて手を焼いたジェーンとマイケルも今や立派な大人。メリー・ポピンズは1歩も2歩も下がったナニーらしい立ち位置で彼らを支える。ジュリー・アンドリュース以後、誰も引き継げなかったメリー・ポピンズをエミリー・ブラントは歌と踊りはもちろん、より優雅でそしてちょっとイジ悪く演じ見事モノにした。現役随一と言っても過言ではないオールマイティゆえ、上手くて当たり前と思われているのかオスカー候補に手が届かなかったのが残念だ。
彼女を囲むオールスターキャストの贅沢さは今日のディズニー映画ならではだろう。冒頭、ベン・ウィショーが語り掛けるような歌声で思いがけない歌唱力を発揮。カメオ出演のメリル・ストリープは『イン・トゥ・ザ・ウッズ』よりも遥かに上手くなっている(未だ天井知らずなのが大女優たる所以だ)。そして前作でディック・ヴァン・ダイク(本作でも元気な姿を見せてくれている!)が演じた大道芸人バートに相当するジャックを演じるのがミュージカル界の大スター、リン・マヌエル・ミランダだ。舞台仕込みの身のこなし、ハスキーボイスのラップパフォーマンスと実質主演と言っていい仕事量である。
心ない雇われ監督のイメージが定着していたロブ・マーシャル監督だが、さすがに今回は題材がピタリとハマった格好だ。過去の遺産に寄りかからず、有名歌曲をオミットして全曲新規書下ろした姿勢はファン接待映画が相次ぐ昨今、実に意欲的だ。はじめこそ『シカゴ』以後、確立されてしまった現代リアリズムミュージカル演出にミスマッチを覚えるものの、前作の煙突掃除夫達の群舞を連想させる街灯マン達の場面等、マーシャルの“舞台臭さ”が上手く作用してオマージュへと結実している。オスカー候補に挙がった音楽マーク・シェイマン、衣装サンディ・パウエルも好投だ。
終幕、メリー・ポピンズはちょっと寂し気な表情を見せて去っていく。ジェーンもマイケルも、そして僕も大人だ。自分たちの力で何とかやっていけるだろう。「私の役目はここまで」本作は帰還であり、そして永遠のお別れでもあるのだ。
今度のメリー・ポピンズはあからまさに魔法を使って部屋の片づけなんかしない(魔法を使った後に何かとしらばっくれるのは原作に近いのだろう)。かつて手を焼いたジェーンとマイケルも今や立派な大人。メリー・ポピンズは1歩も2歩も下がったナニーらしい立ち位置で彼らを支える。ジュリー・アンドリュース以後、誰も引き継げなかったメリー・ポピンズをエミリー・ブラントは歌と踊りはもちろん、より優雅でそしてちょっとイジ悪く演じ見事モノにした。現役随一と言っても過言ではないオールマイティゆえ、上手くて当たり前と思われているのかオスカー候補に手が届かなかったのが残念だ。
彼女を囲むオールスターキャストの贅沢さは今日のディズニー映画ならではだろう。冒頭、ベン・ウィショーが語り掛けるような歌声で思いがけない歌唱力を発揮。カメオ出演のメリル・ストリープは『イン・トゥ・ザ・ウッズ』よりも遥かに上手くなっている(未だ天井知らずなのが大女優たる所以だ)。そして前作でディック・ヴァン・ダイク(本作でも元気な姿を見せてくれている!)が演じた大道芸人バートに相当するジャックを演じるのがミュージカル界の大スター、リン・マヌエル・ミランダだ。舞台仕込みの身のこなし、ハスキーボイスのラップパフォーマンスと実質主演と言っていい仕事量である。
心ない雇われ監督のイメージが定着していたロブ・マーシャル監督だが、さすがに今回は題材がピタリとハマった格好だ。過去の遺産に寄りかからず、有名歌曲をオミットして全曲新規書下ろした姿勢はファン接待映画が相次ぐ昨今、実に意欲的だ。はじめこそ『シカゴ』以後、確立されてしまった現代リアリズムミュージカル演出にミスマッチを覚えるものの、前作の煙突掃除夫達の群舞を連想させる街灯マン達の場面等、マーシャルの“舞台臭さ”が上手く作用してオマージュへと結実している。オスカー候補に挙がった音楽マーク・シェイマン、衣装サンディ・パウエルも好投だ。
終幕、メリー・ポピンズはちょっと寂し気な表情を見せて去っていく。ジェーンもマイケルも、そして僕も大人だ。自分たちの力で何とかやっていけるだろう。「私の役目はここまで」本作は帰還であり、そして永遠のお別れでもあるのだ。
『メリー・ポピンズ リターンズ』18・米
監督 ロブ・マーシャル
出演 エミリー・ブラント、リン・マヌエル・ミランダ、ベン・ウィショー、エミリー・モーティマー、ジュリー・ウォルターズ、メリル・ストリープ、コリン・ファース、ディック・ヴァン・ダイク、アンジェラ・ランズベリー
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