アメリカのコロナウィルス対策がトランプ政権の失策による“人災”だったと追求するアレックス・ギブニー監督の聡明な本作を見て、これを対岸の火事と思える日本の観客はまずいないだろう。パンデミックの直前に実施されていた疾病対策シミュレーションが反映されなかったのは政権が“予想外”の事態を軽視したからであり、トランプによる“お友だち人事”で組織は正確な意思統一ができず、そしてトランプはまったくもって科学を信じていなかった。オバマ政権時代に備蓄されたN95マスクをはじめとする防護用品は保持期限を過ぎていたために払い下げられており、自給率が皆無に等しいアメリカ国内で枯渇。その確保を無給でボランティアが担っていたという話には目眩すら覚えた。オバマ政権の功績を徹底的に潰そうとしたトランプのエゴが成した事態と言っても過言ではないだろう。マスクメーカーの工場を視察するトランプが、場内にポール・マッカートニーの『死ぬのは奴らだ』を流すシーンには只々、人でなしという言葉しか湧いてこなかった(トランプは政治集会にローリング・ストーンズなど有名アーティストの曲を勝手に使っており、いつも「やめれや」と怒られている)。
とはいえ、幾度となく失敗しようとも自浄する力を持っているのがアメリカである。時を置かずして本作のような徹底検証、告発が行われ、自省できるところに哀しいかな、本邦との彼我の差を感じずにはいられなかった。
『無責任大統領と17人の告発』20・米
監督 アレックス・ギブニー、オフィーリア・ハルティウニアン、スザンヌ・ヒリンガー
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