スティーヴン・キングの代表作『IT』を映画化した前作チャプター1(邦題は字数も多いし、覚えられない)はキング作品へオマージュを捧げたNetflixドラマ『ストレンジャー・シングス』風にアレンジする、というハイコンセプトでホラー映画史を塗り替える大ヒットを記録した。
その27年後を描く本作で大人になったルーザーズ・クラブを演じるのはジェームズ・マカヴォイ、ジェシカ・チャステインの実力派スターであり、さらには監督、脚本、主演を務めたTVドラマ『バリー』でエミー賞を獲得したビル・ヘイダーら演技巧者達だ(あらゆるギャグをキメるヘイダーの好アシストを見よ!)。
ハッキリ言ってピエロ1人じゃ太刀打ちできない強力メンツである。
さらには前作から2年を経て、ビル・スカルスガルド演じるピエロ怪人ペニー・ワイズはインターネット上ですっかり草を生やすネタになってしまった。前作の冒頭、下水溝へ少年を誘い込もうとするペニー・ワイズにみんなでセリフを当て込み大喜利状態にしてしまったのだ(しかも画像は90年版のティム・カリー。ちげーよ!)。
同じネタで怖がらせられない事は監督アンディ・ムスキェティも承知済みだったろう。ペニー・ワイズに「最近の子供はピエロを怖がってくれないんだ」とボヤかせながらバクバク子供を喰わせ、ルーザーズ・クラブの恐怖を具現化したあらゆるクリーチャーを総動員する物量作戦で…なんと笑かしに来ている。まるで一世を風靡したお笑い芸人が同じネタでムリヤリ笑わそうとしている力技だ(ミラーハウスの場面でついに「ちょっと勘弁して…」と腹筋崩壊)。ジュブナイルホラーという性格がハッキリした前作に対し、皆で怖がりながら笑うパーティホラーへと舵を切っているのである。
その方向性の違いが169分というトンデモない長尺の原因にもなっており、ルーザーズが各自のトラウマを辿る中盤に至っては恐怖よりも退屈で失神しかけてしまった。前作の思い切りの良いコンセプトと脚本を踏襲していれば、キング原作映画史上屈指の傑作前後編になったのかもしれないのに…。
『IT イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』19・米
監督 アンディ・ムスキェティ
出演 ジェームズ・マカヴォイ、ジェシカ・チャステイン、ビル・ヘイダー、ビル・スカルスガルド
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