ええ、ええ私です、私がそのレンタルでやってきましたお姉さんです。ええ、そうです、お望み通り、お望み通り大方のお望みはかなえてあげましょう。お姉さんが、なんでも手取り足取り、かなえて教えて差し上げましょう。何がお望みでしょう、漠然としてしてわかりにくいですか、なるへそ、確かに漠然としていますね、お望みと言ったって、ピンキリ、そのサービスによっていかようにもなりますからね、そう、わかりにくい、もっとわかりやすく、例をあげてみましょう。まず殿方ですから、欲望を満たすというのがよくあるパターンです。私をそう好きなように使っていただき、性的な欲求を満たしていいわけです。それもレンタル料にこめられているので、そうしないと逆に損です。まあ、だからといって他社に比べて格安ですのであしからず。性的に楽しんだあとは、また、そのような欲求の薄い殿方の場合は、手料理や掃除、その他の家事、普段なかなか掃除できない屋根などをこの機会に掃除することもできます。家政婦として考えてもらってもいいでしょう。そう考えた場合も決して割高ではありませんよ。なんと行っても他社のまねできない独自のシステムで低価格を実現したわけですから。それから話し相手になるというのもあります。聞き手話し手どちらでもどんとこい。スポーツをするもよし、つまり殿方に応じまして変幻自在、私はいうなればエキスパートです。なんでもござれ。さて、なにをしましょう？何ですか？そのチェーンソーは何ですか？起動させて、近づいてきて危ないではないですか、それで、私の胴体をまっぷたつにして、いったいどうするつもりですか、丁寧に切り刻んで、もちろんそのパターンもありです、想定はできませんでしたが、次回からそれもオプショナルとして追加しておきましょう。私が５０個ほどに分裂して、そのひとつひとつを血抜きし、臭みをとる。しっかり熟成したところで、鉄板、この熱々の鉄板にのせ、表面を焼く。中は生のまま、口に放り込む。咀嚼にて。
天海さんはトビウオの刺身をはしでつまんで、空にとめたまま話し出した。トビウオが時々ゆらゆらと揺れて、生きているように、見えなくもなかった。肉体だけになって浮かんでいるなんてロマンチックじゃないか。天海さんはそのとき、速読術の方法について語っていた。いかに早く読むか、早く理解するか、早くアウトプットするか、どうすれば世界の本を読むことができるか、それは不可能と言ってもよさそうだった。天海さんが語っている方法で私は一冊も読める気がしなかった。しかしそれを否定することなく、根気づよく聞き続けていた。トビウオはふるふると揺れた。生温くなっていそうだ。醤油にも浸かっていないトビウオはふるふると揺れていた。