読書感想日記

最近読んだ本の感想

「銃」 中村 文則 著 新潮社

2009-11-30 11:57:02 | 小説
 ごく普通に生きている人が、人の命を奪えるような強い力を手に入れたなら…
 世界を征服する独裁者になりたい等と、大きな野望を抱く人に限らず、自分にもそんな力があったら…という夢を抱いたことのある人は、少なくないでしょう。
 だから、自分の意思で手に入れた訳ではなくとも、そんな強い力を手に入れることができたならば「力を試してみたい」という、野心ともいうべき思いを抱くまでには、それほど時間は必要ないでしょう。
 そして、その力が無限のものでないならば、さらに野心が駆り立てられてしまうのも、必然のことなのかもしれません。
 何度も同じ表現が繰り返されているためか、そんな野心と、普通の人であり続けようとする理性とで、心が揺れる主人公の姿に、やや距離を置いてしまい、あまり共感を持てなかったはずでしたが、いつしか、狂気の域へ近づいていく彼に圧倒され、私は彼の仲間に、いや、彼自身になってしまっていました。
万一、私がそんな力を手に入れることができたなら…さあ、どうしようか…

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