俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

澱粉

2016-04-23 10:28:46 | Weblog
 私は小学校の家庭科で、澱粉・蛋白質・脂肪を3大栄養素として教わったが、昨今、澱粉という言葉が使われることは少ない。炭水化物や糖質という言葉が使われ勝ちだ。しかしこれの言葉は正しく使われていない。これらは決して類義語ではなく全く異なった概念だ。こんな、日常生活にとって重要な用語が不正確に使用されれば誤解を招く。
 炭水化物とは炭素と水の化合物を指す化学用語であり、化学であれば食物繊維を炭水化物と呼んでも差し支えなかろう。しかしこれを澱粉と同一ジャンルに含めて日常生活用語として使うべきではない。重要なカロリー源である澱粉質と、人類には殆んど消化吸収できない食物繊維とでは栄養価が余りにも違い過ぎる。この二者は栄養価としては正反対のものだ。澱粉と食物繊維の総称としての炭水化物という言葉はあくまで化学用語であって食物の評価のためには不適切な用語だ。この二者の混同は炭とダイヤモンドの同一視にも等しい愚行だろう。
 糖質という言葉もよく使われる。澱粉質の摂取量を抑える減量食は糖質制限食と呼ばれることが多い。しかしこの呼称も誤解を招く。辛党の人は甘い食べ物を嫌うが決して澱粉が主成分の食品を嫌う訳ではない。甘く感じない澱粉質は食物の主役であって辛党の人もこれらを好んで食べる。糖質という言葉に澱粉質を代表させるべきではない。糖質とは、人類に甘味を感じさせる特殊な澱粉質であってこんな例外者に澱粉質を代表させるべきではない。
 化学と栄養と味覚がゴチャゴチャになって訳の分からない分類になっている。澱粉と食物繊維を一括して食物繊維と呼んでいるから栄養学はは混乱し、澱粉と糖質を区別しなければ料理は成り立たない。ジャンルごとに使い分けるべき用語を無頓着に混同して使うべきではあるまい。用語は正しく使われて初めて意味を持ち、間違った用語は文化を破壊する。

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