俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

現実と現状

2010-12-14 15:43:22 | Weblog
 現実も現状も現時点での事実だ。しかしこの2つは大きく異なる。現実は変えられない事実であり現状は変えられる事実だ。
 「現状維持」という言葉がある。現状とは維持することも打開することもできるからこんな概念が存在し得る。しかし「現実維持」という言葉はあり得ない。現実とは変えられない事実でありそのまま肯定するか無視するしか無い。
 私は現実主義者だと自負している。逆説的な言い方だが、理想は現実的でなければならないとさえ考えている。しかし現状の是認者ではない。現状は改めることができるからだ。
 多くの人は現実と現状を混同している。例えば人は金を欲しがる。現在の社会体制においては金は必需品だ。金が必要であるということは「現実」だ。しかし拝金主義は「現実」ではない。拝金主義のような歪んだ考え方は改めることができる。従って拝金主義は「現状」でしかない。
 人には欲がある。欲を持つことは自然なことであり欲を否定する類のストイシズムは誤りだ。しかし欲の肥大した強欲は不自然なものであり否定されるべき「現状」だ。
 思考は事実に基づかねばならない。事実に基づかない思考は砂上の楼閣でしか無い。しかしその「事実」が現実なのか現状なのかを峻別する必要がある。原状を是認する思考は低レベルな独断に過ぎず、現実に基づく思考は普遍的な知恵となり得る。
 現状は大いに批判されるべきだ。文化であれ社会体制であれそれは改善することができる。しかし現実を否定することはできない。現実は無条件に肯定せざるを得ない。人が死ぬこと、人が老化することは現実だ。現実を受け入れない思考は無意味なオカルトでしか無い。

コメントを投稿