俗物哲学者の独白

学校に一生引きこもることを避けるためにサラリーマンになった自称俗物哲学者の随筆。

還付

2010-07-09 15:30:41 | Weblog
 菅首相は市民運動家出身なので庶民感覚を持っていると思っていた。しかし「年収300万円、400万円以下の人の消費税の還付を検討する」と言った瞬間完全に幻滅した。菅首相の意識では年収400万円なら貧乏人だということだろう。
 400万円以下の世帯は全世帯の46.5%を占めているそうだ。日本国民の46.5%が還付を求めたらどんな事態を招くだろうか。
 還付を受けるためには領収書を提示することが必要だ。一人分の領収書だけでもとんでもない量になる。税務署でこれをチェックするためには現在の10倍以上の職員が必要になるだろう。それでも意図的に混入された他人の領収書を識別することは殆ど不可能だ。
 また年収400万円以下かどうかをどうやって判定するのだろうか。前にも書いたが(6月29日付け「弱者と悪人と善人」)所得税は全くデタラメな税制だ。自営業者や農林水産業者は大半が400万円以下の年収と申告しているから、彼らは所得税だけでは飽き足らず、消費税までも脱税することになる。所得税を脱税している者に消費税も脱税する権利を与えるべきではない。
 消費税の還付などは税の不公平を拡大するだけであり絶対にやってはならないことだ。

ボランティア

2010-07-09 15:16:06 | Weblog
 私はボランティアを有害だと考えている。本来有償であるべき業務を無償で行うことによって雇用機会を奪っているからだ。
 阪神大震災のような非常時のボランティアを否定する気は全く無い。問題なのは平常時のボランティアだ。
 仮に誰かがボランティアでタクシーを始めたとしよう。彼は収入よりも社会参加が目的なのだからガソリン代の実費程度しか請求しないだろう。消費者からは格安タクシーとして歓迎される。しかしタクシー業界にとっては営業妨害以外の何物でもないし、タクシーで生計を立てている人にとっては生活権の侵害だ。
 シルバー人材センターも有害だと思っている。日曜大工の仕事を請け負えば工務店の仕事を奪うし、教師を派遣すれば教育産業のビジネスチャンスを奪う。
 世間にはその仕事で生計を立てている人がいる。ここに道楽で働く人が参入すれば本職の人の収入が減る。
 その仕事で生活費を稼がねばならない人と道楽でやっている人とは土俵が違うので競争は不可能だ。またボランティアや老人や外国人を低賃金労働者として積極的に利用している企業も実際にある。ボランティアやシルバー人材センターなどが雇用を奪っているから失業率が高止まりして賃上げが困難になっているとさえ言える。
 社会に役立ちたいという個人的な欲求のために、働いて稼がねばならない人の生存権を奪うべきではない。雇用機会を奪う道楽を称賛すべきではない。

単純化

2010-07-09 15:02:18 | Weblog
 正解が1つしか無いのは小・中・高校生を相手にした試験問題ぐらいで、殆どの問題には複数の答えがあり、時には正解などあり得ないということもある。数学では「解答が不可能である」ということが証明されることがしばしばある。
 「その問題の本質はこれだ」と決め付けることによって問題を単純化することは却って問題の解決から遠ざかってしまうことが多い。
 地球温暖化の問題をCO2の問題に摩り替えるのも、素人を相手にした問題の矮小化だろう。気温を上げる要因は沢山ある。太陽活動の活発化、雲の減少、火山性エアロゾルの減少などの他に、地球磁場や地軸の変動などまでが影響を与える。
 雲が1%減ると気温は1℃上がるそうだ。ところが雲を増減させる要因は無数にある。雲の増減を無視してCO2だけで温暖化の問題が解決できると考えるのは科学ではなくオカルトだ。まるで「交通事故に会わなければ人は死なない」と主張するような偏狭な考えに過ぎない。
 複雑なものを無理やり単純化せず、複雑な問題として複合的に取り組むべきだ。単純化すれば分かり易くなるが真実からは遠ざかる。それはスケープゴートを捧げれば満足する野蛮人のような発想だ。