対北朝鮮政策のシミュレーション

朝鮮半島上空で放射性物質の採取分析を行ってきた米側から「核実験を示唆する物質が検出された」との報告が日本政府にもたらされ、北朝鮮の核実験実施の事実が確定しました。

そこで、今後の関係国の動きを展望しながら、我が国のとるべき政策を整理してみましょう。

北朝鮮:
目的「体制の維持」(ただし、「国際社会の公正と信義」は信頼していない。だから、「核やミサイルを放棄すれば利益を得られる)との論法は通用しない)←そのために米国との「有利な」交渉←そのために核、ミサイル開発

核保有宣言→ミサイル連射→核実験・・・エスカレーションの理由は、外交交渉(目的)のためのレヴァレッジ確保(手段)のため+六カ国協議は時間稼ぎ

次なるステップは、米国の出方を見極め、①大胆な妥協提案(ただし、「米朝枠組み合意II」の成算は不明) or ②さらなる核実験・・・「インド・パキスタン型モデル」を模索するが、カードは残り少なくなり、体制崩壊の危機が差し迫れば、「旧日本型モデル」の暴発の可能性も排除できない。←「核保有国」として長期戦に持ち込むとの観測もあるが、金体制の強度がどれほどのものかは不明。

米国:
インド・パキスタンと異なり、北朝鮮は米国の対テロ・対中国戦略上の有効性も持たない上、イラン核問題に及ぼす影響も考慮すると、妥協を行う可能性は極めて低い。

・・・したがって、①「対北封じ込め」政策の転換はしないが、六カ国協議の場で非公式の二国間交渉の可能性は模索する、②金融制裁などで金体制を締め上げ「リビア型モデル」を目指す、改善が見られず事態がエスカレートするようであれば、「イラク型モデル」で軍事オプションも排除せず、③究極の選択肢としては、日韓などの反応を見つつ、中国との密約で金一族の亡命を容認する可能性も。

中国:
少なくとも2008年北京五輪成功までは、対米関係を最重視せざるを得ない。一方、北朝鮮の体制維持のための協力or体制崩壊の引き金を引く非協力のいずれかを追及する能力はあるが、その中間は困難(「本気」で取り組んでも困難)との見方が有力。

・・・とはいうものの、体制崩壊につながるような制裁強化に抵抗しつつ、六カ国協議再開に向けて北朝鮮を説得し続けるほかない。・・・いずれにしても、朝鮮半島北部の緩衝地帯を維持することに全力を挙げる。・・・「核保有国たる北朝鮮」を容認するかどうかはなお不明。

韓国:
戦争回避、体制崩壊いずれも望まない。これを機に対米関係の改善を図る。

日本:
今後の我が国の行動を通して、日米同盟の真価が問われる。これを機に、日米同盟における「真の双務性」を確立したいもの。

まず、米側が取り組むべき課題は、核抑止の有効性、安保条約5条(日本防衛)の有効性を証明することです。これに対し、日本側は、安保条約6条(極東有事)の有効性、(自らが主導した)国連制裁への参加意思・準備を怠りなく行うことです。その際、必要なことは、集団的自衛権の行使、交戦権行使をめぐる政府解釈を見直すことが急務です。

微妙なオプションとしては、米軍の限定的空爆(湾岸戦争後の対イラク)、日本の策源地攻撃論議です。いずれも必要性は認めるものの、慎重な姿勢が望まれます。
ついでに、余計なこととしては、米国の先制核攻撃、日本の核武装(論)などがあり、すでに自民党の政調会長がOBを打ってしまっています。(苦笑)

その他、忘れてはならないのが、今回の核実験によって、国際社会の圧力が強まり、拉致問題解決に向けた新たなモメンタムが生まれたことです。ブッシュ大統領も先日の記者会見で改めて拉致問題の解決に向けた決意を述べていましたし、安倍首相も家族会・救う会の皆さんとの懇談の中で、「私の政権ですべての生存者の奪還を目指し、全力で取り組んでいく」と語っています。
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