ムジカの写真帳

世界はキラキラおもちゃ箱・写真館
写真に俳句や短歌を添えてつづります。

神のささやき

2018-10-08 04:13:32 | 短歌





われになき ものとなりたや 人草の 藁の胸打つ 神のささやき





*これは昨日作ったものです。わたしたちのインスタグラムでは、時々おもしろい作品に歌をさしあげていますが、これはポートレートをたくさん描くある画家さんの作品群に対して贈ったものですね。

画家は本物なのですが、描く人物のモデルがほとんどみんな偽物の人間なので、彼がその作品をたくさん並べてみると、まるで人類の偽物の図鑑のようで、おもしろいのです。いえ、人間の迷いの図鑑というべきか。

みんな、自分以外の誰かの顔をかぶって生きている人間の、何と言いますか、矛盾というか、かすかなイラ立ちというか、そんなものを画家が正確に写し取って描いているのがおもしろいのです。

藁の胸とは、人間のデリケートな願望を意味します。ほんとはこんなことは馬鹿だとわかっている。人の顔を盗んで自分にそれを張り付けて、その顔を生きることなど。だが自分がつらくてたまらない人はそれをやらずにいられない。そういう人間の弱さというか、ずるさというものが、その画家さんの描くポートレートには描き出されているのです。

見ていると苦しいですよ。これが自分だと言いたげにこちらを向いている人間の顔が偽物なのです。自分を少しでもよく見せるために、人工的に顔をつくっている。ほんとうはもっと不細工なのに、絶妙な線でごまかして、なんとか美形にしようとしている。そんなことが全部見えるのに、ごまかせると思って自信ありげに微笑んでいたりする。

自分ではないものになりたいという、藁のようにあほらしい君の願い。その胸に神がささやいているよ。

神はなんとささやいているでしょう。なんとなくわかっている。それは本当の自分じゃないだろう。ほんとうの君は、そんなやつじゃないだろう、と。

それは聞こえない声で、常にその人にささやいているのです。






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