魂を喰らう墓 -27（ネタばれ注意）

DAY181：フレイムルール月11日

油の燃える匂いが混ざった熱風が、目の前の巨大な縦穴の上から下へ吹いている。竪穴の上下は紫の稲妻が飛び交う雲の渦の中に消えており、反対側の少し高いり所にバルコニーと先に続く通路が見える。縦穴には2本の太い鎖が軋みながら動いており、下方に見える巨大な歯車を動かしている。これは涅槃境メカヌスを正常に作動させるためにモドロンが創り出したメカヌスの鎖と呼ばれているものに違いない。おそらくこの墓所の罠や仕掛けを作動させる動力源になっているのだろう。



上方のの渦巻の雲に裂け目が生じたかと思うと、立方体の体から翼を生やしショートボウを持ったクリーチャーが9体飛び出してきた。そのすぐ後ろからヒトデのような形をした奇妙なクリーチャーが入っている十面体の大きなクリスタルが続いている。

不意を突かれたロサは敵の攻撃をうけバルコニーから下の雲へと転落し消えた。
呆気にとられる私達を押しのけ、パパがその奇妙な集団にファイヤーボールを叩きこみ半壊させる。ノンゴブは防御を固めて先頭に立ち敵を待ち受ける。生き残ったクアドロンはノンゴブに向かって矢を雨嵐のように射かける。再びパパがファイヤーボールを敵の中心で爆発させると敵は塵となり熱風に吹き飛ばされた。ヒトデのようなクリーチャーは入っていたクリスタルが破壊され、縦穴をなすすべなく落下し下の雲の中に消えた。

転落したロサを救出する手立ては無い。彼女の無事を祈りつつ私達は探索を継続する。
反対のバルコニーから延びる通路の先には奇妙なからくりが設置された部屋へと続いていた。部屋の壁には頭の無い人型生物の浮彫が並んでいる。この奇妙なからくりは天球儀と呼ばれる機械だ。これは神の意志で運行している星々の動きを、定命のものが理解できるようにするためのもので、天球儀では私たちが住まう土地を球体で示している。星を示すいくつもの球体からは魔力を感じるが、私たちの土地を示す球体と月を示す球体からは特に強い魔力を感じる。もしかしたらこの墓所から外に出るための装置かもしれない。しかしこの装置に触れるのは危険だと判断し、別の部屋を探索することにした。



再び部屋の移動装置を動かし、未探索の部屋へ向かう。この部屋の中央には歯車型の石の台があって、その上に等身大のマストドンの像が立っている。顎から突き出す牙は宝石で飾られ、長い鼻を高く上げて叫んでいるような姿勢をとっている。像の胴体にはぐるりと一周するように文字が刻まれている。壁に目をやれば、生きたマストドンにまたがって地獄のような土地をのし歩くチャルトの戦士を描いた壁画が並んでおり、この戦士はそれぞれの壁画で異なる種類のデヴィルに襲われている。この戦士はチャルトの英雄チャカガリーに違いない。彼はゴームという名のマストドンを王から盗み、九層地獄へ落された。しかしチャカガリーはゴームと共にデヴィルたちと戦い帰還したうえ、王の首を切り落とし、その髑髏を宝石で飾られた杯にしたと言われている。チャカガリーとゴーム、壁に描かれたデヴィルたちのいずれも剣呑な輩であり、そっとしておくことにした。



ロサは未だ帰還しない。やはりもう諦めるしかないのか。彼女抜きで先へと進む。そして私たちは第六階層に到達した。



ドーム型の天井を持つ部屋の中ほどに青銅の大釜があって、そこから緑色の煙が立ち上っている。煙でぼやけた視界の中に、揺り椅子が3つ、雑貨を積み上げた作業台がいくつか、紡ぎ車1つ、錆びた鉄の檻にとじこめられた囚人が1人見える。部屋の両側はバルコニーがあり、そこの壁に木製の扉が5つ並んでいる。それぞれの扉には三角形、四角形、五角形、六角形、八角形の幾何学模様が彫り込まれている。

煙の間から、とても小さな人影が3つ、よたよたと近寄ってきた。錆びた針が何本も突き刺さったわら人形と、子どもの姿をしたのっぺらぼうの粘土人形と、下半身が一輪車で上半身がサルのぬいぐるみの人形だ。わら人形が幼い子供の声で警告の叫ぶ。「早く逃げて！縫い物姉妹が今すぐ戻ってくるかもしれないよ！」



彼らは死の呪いに囚われた幼い子供の魂に違いない。アサーラックや縫い物姉妹の所業には吐き気がする。しかし今はまだ奴らに鉄槌を下す準備は整っていない。子供たちに希望を持ちもう少し待つように言い残して、一度撤退する。その後、ジャガーノートの部屋に見落としがないか再確認したところ、ザルテクの瞳を発見した。

明日はいよいよ縫い物姉妹たちと対決する時だ。私たちは万が一ロサが縦穴から帰還したときに直ぐわかるよう、縦穴につながる通路で休憩することにした。