無法者頭と特別な乗騎

バイクとTRPGの記録

狂える魔導士の迷宮 -7(ネタばれ注意)

2021年11月23日 | 狂える魔導士の迷宮
第4次探索3日目

この一角はドワーフによって築かれたようだ。だがそこにならず者やゴブリンらが入り込んでしまっている。その不法占拠者がドワーフの精緻な造形を台無しにしているのを見るのは忍びない。
ドワーフ区画の最深部で我々は大変なお宝を発見した。保存の魔法が施されたエールの樽が200樽だ。これは我が朧亭の名物になるだろう。このエールは常に最高にフレッシュな状態で提供することが出来る。しかし醸造したのは遥か彼方、古の時代だ。ロマンに満ち溢れているじゃないか。常連たちには勿体ない。裕福な上客向けの品物だ。



常連と言えば朧亭には”この世の片隅”と呼んでいる一角がある。そこは一部の特殊な客の席だ。酒は万人に平等で、挫折、裏切りそして失恋を味わった者には効果てきめん。打ちひしがれた状態で酒を飲むと、さらに感情の深みに沈み込み、水面に顔を出すことが出来なくなってしまう。そんな哀れな人々の傍らにリフはそっと寄り添う。そう、まさに幽霊のように。酔っ払いは傍に気配を感じ、誰に聞かせるでもなく自身の哀れな境遇を、延々と話し続ける。これがただの友人であれば、途中で帰ってしまうだろう。しかしリフはただそこに居る、いつまでも。真夜中を告げる鐘が鳴る頃、酔っ払いは突然我に返り、目前にエネルギーに満ち溢れた亡霊が居ることを知り恐怖する。慌てて周囲を見渡すと、酒場のあちらこちらの暗がりから、全てを理解していることを示す微かな微笑みが帰ってくる。酔っ払いは”この世の片隅”を離れ、我が朧亭の常連に生まれ変わる。

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狂える魔導士の迷宮 -6(ネタばれ注意)

2021年11月03日 | 狂える魔導士の迷宮
第4次探索2日目

「どうした?」出発前、何かを考え込んでいるロサに声をかけた。
「やっぱり私、ゴブリンの呪いを解いてあげた方がよいと思うの。」
「何故?」
「だって、あのサークレット欲しいじゃない?」
これはロサ特有の思考様式であって、普通の男に過ぎない私には理解できない、何か深遠な考えがあってのことだろうか? あけ広げで輝くばかりの笑顔からは、子供がただ玩具をねだっているようにしか見えない。
「ロサさー、相手がゴブリンだからって簡単に横取りできるなんて思わない方がいいよ。」いや、まぐみん。お前と同じにしてはロサに失礼だろう。お前ほど脳天気じゃない・・・はずだ。
「そうそう、ゴブリンよりヒューマンのほうが見栄えが良いに決まっているじゃん。呪いの効果だけじゃなくて、きっとイェークも気に入っているんだよ。それを取り上げようとしたら、奴も必死で抵抗するさ。まあでもエルフが一番だけどね。」ハーフエルフの私だが、メネルのエルフが一番との意見には賛成できない。奴にはハーフオーガのヤグローの美を理解することはできないだろう。
「ロサ、あのサークレットは放っておくことに皆で決めたではないか。さあ、そろそろ出発だ。未だ見ぬお宝が我らを待っているぞ!」

ヒューマンの戦士がナシックとメゾロスに囲まれ、部屋の隅に追いつめられている。加勢するべく武器と盾を構え直した時、パレス・ガーキが叫び声をあげた。「見つけたぞ、槌のレックス。ここがお前の死に場所だ!」



我らは素早く目線を交わし、戦術を確認した。
「黒より黒く闇より暗き漆黒に我が深紅の混淆を望みたもう。覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!踊れ踊れ踊れ、我が力の奔流に望むは崩壊なり。並ぶ者なき崩壊なり。万象等しく灰塵に帰し、深淵より来たれ!これが人類最大の威力の攻撃手段、これこそが究極の攻撃魔法、エクスプロージョン!」
まぐみんはいつもより長めの呪文詠唱で威力を増幅するとともに、タイミングを調整する。狙いすました攻撃が怪物を焼き、その炎が熱を失い収縮、消滅するのに合わせて私が敵に肉薄する。突然のことにヒューマンの戦士が驚いているうちに素早く怪物を始末し、彼が逃げ出せないように目の前を塞いだ。
「チャンピオン、槌のレックス。お前は仇人として、ワーキンの司祭、レブナント、パレス・ガーキとの決闘裁判を受けなくてはならない。」



「死に損ないの三流クレリックが、チャンピオンのこの俺に、素手で立ち向かうというのか。はっ、舐められたらものだ。」と言いながらも、相当な実力の持ち主であるレックスはパレスの秘められた力を警戒し、不用意には打ちかかってはいかない。一方のパレスも視線だけで相手を殺してしまえるかのように、恐ろしいほど睨みつけたまま動かない。チャンピオンは手慣れた、しかしとても有効なフェイントを繰り出し、レブナントの首へ必殺の一撃を見舞わす。正にパレスの首に冷たい刃が食い込む一瞬、復讐に燃えるレブナントの身体から、実体を持つかのごとくうごめく漆黒のオーラが噴出した。パレスの首を落とすはずだった剣はその場で動きを止め、武器に渾身の力を込めたチャンピオンの顔は真っ赤になっている。ゆらりとレックスに近づいたパレスは鈎爪のように広げた指をレックスの胸に突き刺した。絶望の表情を浮かべるレックスを冷静に見つめながら、パレスはなおも指を突き入れ、犠牲者の心臓を引き抜き床に投げ捨てた。
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