無法者頭と特別な乗騎

バイクとTRPGの記録

狂える魔術師の迷宮 -25(ネタばれ注意)

2023年10月28日 | 狂える魔導士の迷宮
沼、蛙、そして蛇人間ユアンティの神殿の廃墟がここのすべてだ。まったく気が滅入る。
足取りが重いのはブーツが水を吸っているためだけではない。
ロサは魔法の箒に横乗りして、涼しい顔をしている。
まぐみんはしつこく追跡してくるブリーワグを始終警戒し、メネルは少し乾いた場所にでるたびにキャントリップで衣服についた汚れを落としている。


階層の奥で見つけたユアンティの神殿の廃墟で薄汚れた黒のガウンを羽織り、真っ白なのっぺりした仮面を着けた幽霊のような女性に出会った。
「貴方たちは何者ですか?」ささやくような声で女性が問いかける。
「エルフの探検隊です」
「貴方たちは善ですか悪ですか?」
「中立です」
彼女は盗賊の神マスクのクレリックであり、ナーガどもが滅ぼされるまでずるずる沼から離れられぬ呪いを受けている。私たちが自分を自由にしてくれると約束するなら、彼女は引き換えにこの階層のことを教えようと告げた。
「正当な復讐であれば、私が成そう」と返答した。
彼女の説明によると、元々この沼はユアンティのものだったがナーガの侵略者によりユアンティの一族は滅びた。プリーワグは更にその後から来た侵略者で、ナーガと対立しているらしい。

「死んだドゥエルガルの意志を引き継ぎ、滅びたユアンティのためにナーガを倒すか。大忙しだなヴォルクマール」ウィンクしながらメネルが言った。
「死に瀕しての強い願い、聞き届けるのはホアの使徒の使命だ。例えそれに意味が見いだせないとしても、意志の輪転は様々なものを取り込みながら、究極の頂に至るのだ」
「いやだから、蛇より蛙を倒そうよ」

ナーガの拠点の入り口で待ち伏せしていたドラウを倒し。


奇襲の機会を狙っていた、スピリット・ナーガを倒した(ついでにトロルも)


ナーガの本拠地に捕らえられていたドェルガルとドラウを救出。


虜囚を地上へ送り届ける道中、メネルが尋ねた。
「それで、意志の輪廻とやらは新しく何かを得たのかい?」
「さあな、しかし二つの生命を救えただけで十分だろう。ここだけの話、ドワーフとエルフならもっと良かったのだがな」
「そうね、スプリット・ナーガは一旬程度で復活するからね」とロサが頭上から言う。
「だから、蛇より蛙って言ったじゃん」

お宝
ドェルガルとドラウ
ナーガの宝物
コメント
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食屍鬼島 -12(ネタばれ注意)

2023年10月07日 | 食屍鬼島
海上には厚い雲が広がり、激しい雨が降り注いで視界を遮る不定形の灰色の壁のようだ。その真下の海面は不自然なほどに大きくうねっている。何か巨大なものがファルジーンを目指して進んでいる。町のあちこちで、そして島のいたるところで海から来た怪物や深きものどもとの戦いが続いている。今は優勢を保っているが、あれが上陸してしまったら我々は敗北するだろう。やつを海上で、それが無理ならできるだけ水際で倒さなければならない。眼下の港で出向の準備をしている船が見える。フォリー号だ。オーベッドに違いない。

「敵に遭遇しないよう慎重に、そして迅速に港を目指しましょう」
《そう都合よくいくかしら》
「街中は私に任してください」
ザローは町の路地の死角、暗がり、時には他人の家を通り抜け、一行を町の外に導く。
「ここから先はジャングルです。クレシダさんの方が巧く進めるでしょう」
《任せなさい》
小さいとはいえ肉食獣の末裔、しかも密林は彼女の先祖が狩場とした所。時折立ち止まっては匂いを嗅ぎ、かすかに葉が擦れる音を聞き、獲物に忍び寄る特技を生かし、誰にも出会わないよう進む。
《貴方たち、もっと静かにできないの?ジャングル中の敵を呼び寄せるつもり!》
ジャングルを抜けると港はもうすぐだ。しかし身を隠すことのできない開けた砂浜を横切らなくてはならない。浜辺のあちらこちらでファルジーンの戦士と戦う深きものや醜く恐ろしい水棲生物の姿が見える。
「ここは強行突破するしかありませんね」身構えるザローを制してグラトニーが言う。
「少し待て」そして目に見えない誰かからの言葉に耳を傾ける。
「俺の言う通りに進むんだ。先ずは海の方へ15メートルダッシュ、そこで伏せたまま10秒待ち、次は海と平行に20メートルダッシュだ」
3人は1体となり、グラトニーの言う通りに不規則な動きで、時には後戻りも死ながら徐々に港に近づく。不思議なことに、敵が振り向いた瞬間後ろを走り過ぎ、上空を警戒する水棲生物の足元に身を伏せ、こちらに気が付き攻撃しようとした敵は背後から近づいた味方の戦士に貫かれて絶命した。
《いつの間にこんな芸当ができるようになったの?》
「俺の中には女神様がいるのさ」

港ではフォリー号が今まさに出航しようとしていた。
「遅いぞ、海上をこちらに向かっている怪物は大きすぎる。こいつに衝角はないが、この頑丈な斜檣を喰らわせてやればただでは済むまい」オーベットの魔法の風で帆ははちきれんばかりに膨れ上がっている。

船は飛ぶように疾走し、矢のようにまっすぐ謎の巨体へ向かっていく。本体の大部分は水面下に隠れ、辛うじて見える部分からはその正体を推測することは出来ない。敵もこちらにまっすぐに進んでいる。
「掴まれ、このまま突っ込むぞ!」オーベットが吹き荒れる風雨に負けじと叫ぶ。
衝突する瞬間、怪物は水面上に大きく躰を迫り上げる。ゼラチン状の本体、無数の目、口、その他の名状し難き器官に覆われた不定形の擬足がフォリー号を迎え撃つ。
「ハハッ、自ら串刺しになりに来るとはいい度胸だ!」

斜檣に怪物を突き刺したまま船は前進する。
《何だか分からないけど、まともな生き物でないことは間違いないわね》
「素晴らしい、ショゴスだ。もっとよく見せてくれ」グラトニーの背中からネヅコが言う。
「ショゴスですね、するとセンサ船長がトウシャで操っているということですね」
「何であれ、水中から出てしまえば何とかなる」牙をむき出し、かぎ爪を突き出してグラトニーが笑っている。グラトニーにはショゴスの複雑な神経回路の結節点が見えている。適切な負荷を加えれば、神話的生物であろうとも動きを止める自信がある。

グラトニーがショゴスの動きを止めるために打撃を加えたところを、ザローは正確にシミターで貫いた。
「ここが急所のようですね」
その一撃でショゴスは力尽き、蒸気を上げながら融解を始めた。グラトニーは足元に散らばるショゴスの肉体の1片を手ですくい飲み込んだ。
「何という滑らかさ、口の中で溶けてゆく。ショゴスは飲み物だったのか!」
《私は貴方が怖いわ》

ショゴスを倒した勢いそのまま、フォリー号は灯台のある岩礁に到達した。波が高く船を桟橋に停泊させておくことはできない。
「一度船はここを離れる。センサを倒したら合図をしろ」そう言い残してオーベットとフォリー号は去った。
センサは灯台の頂上で何らかの儀式を行っている。飛行して上空から襲撃するか、灯台の中から階段で最上階を目指すか。嵐と共に荒れ狂う稲妻は、悪意を持っているかのように3人の至近に落雷している。外を飛行するのは危険と考え、灯台の中から上を目指すことにした。

灯台の入り口で待ち伏せていた星の吸血鬼を倒し、先へ進む。最上階の部屋はこれまでで一番小さく、船乗りたちの目印として使われていた特大のランタンが置かれている。壁が全面ガラス張りになっている部屋はファルジーンとその周辺を一望できる。南側の壁にある扉は、部屋を取り囲むキヤツトウオークに通じている。嵐の轟きの合間に、真上から意味不明な叫び声が響いてくる。それに伴って、頭上を歩く誰かの足音も聞こえ
る。
「センサ船長はこの上ですね」ザローはそう言うと猛烈な風雨が吹きすさび危険なキャットウォークへと踏み出す。真っ先にはしごに取りつき一気に登る。グラトニーも続くが、こちらはモンクの体術で壁面そのものを駆け上がる。センサの不浄な儀式に答えるように超常的な嵐が増々強まる。稲妻が激しくひらめくなか儀式を完了させると、ザローを憎しげに睨みつける。
「ナゼ、オマエタチヲ 船ニ乗セタノカ ワカラナイ。大イナル敵ノ 仕業ニ 違イナイ。ダガ、オマエタチノ 生命ハココマデダ」

センサと彼女が呼び出した原ショゴスは激闘の末、倒された。それが合図かのように、嵐は去った。厚く不吉な雲は現れたときと同じくあっという間に消え去り、最初の陽光が雲間から差し込む。
「さてと、このケイザの書はドムニクに渡さないと」グラトニーが呟いた。

鋼のように固い声で、ドムニクがようやく口を開く。
「あなたたちに必要なのは休息と治療、私に必要なのは研究と準備の時間です。あなたたちがマインドウィッチを倒したことで、ガタノソアとクトゥルフ神に痛烈な一撃を与えました。彼らはすぐに次の行動を始めるでしょうが、今度は私たちにも備えがあります」
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