第16次探索3日目
警報に答えて階下に集結する人の気配がする。
「私はガントレット騎士団のヴォルクマール・フォン・ヒンデンシュテルン。既に2体のムイラルを倒した。下の階への階段までの通行を許可されたい」
暗がりから一人のドラウが進み出て言った。
「最後の、3体目のムイラルを倒したら我らの支配地域の通行を許可されることもあろう。当主との面談を許可する。ついてこい」
階段を降り切った先は広大な洞窟が広がっている。そこに多くのドラウが臨戦態勢で集結していた。これまでの経験では我らがどれだけ信義を尽くしても最後はにドラウが裏切る。再びあれが繰り返されるかもしれないと思うと心が沈む。こちらを見つめるドラウたちの顔に死の影が浮かび上がる。いや、今度は違う結末が得られるかもしれない。人はみな違うものだ。ここのドラウたちに善の心が全く無いと考えるのは私が狭量なせいかもしれない。そのような陰鬱な考えに囚われながら気が付くとドラウの女主人の前に到着した。
「お前たちはムイラルを滅ぼせると言うのだな。かの怪物は長きにわたって我らアーブリンダー家の平安を妨げてきた。見事ムイラルを倒したあかつきには我らの領域を通過することを許そうぞ」
この領域は一段高い北領域と南領域に分かれている。北はムイラルの勢力圏、南はドラウの一族、アーブリンダー家の領域だ。そして北側が第9階層に通じ、南側が10階層に通じている。第12階層はアーブリンダー家と敵対するフレス家の領域となっており、中間である第11階層にはトログロダイトやトロルの繁殖地となっている。加えて第11階層にはビーヒアという怪物が生息しているらしい。アーブリンダー家としてはこのまま我々が先に進み、フレス家と戦うことになることを望んでいるようだ。
北側領域に引き返し最後のムイラルを探す。ドラウの話では今までに倒したムイラルは本体の劣化コピーに過ぎないようだ。力のムイラルと技のムイラル、それぞれ近接戦闘と魔術のみを本体から引き継ぎ、それ以外が劣化している。次の戦いは激しいものになるだろう。
ワンドで何かを指し示すウィザードが要石に描かれたゲートを発見した。いろいろと試したがゲートを開く方法が分からない。ゲート前には腐敗したドワーフの死体が扇状に倒れている。そのうちの一人はイノシシを象った鋼鉄製のヘルメットを被っている。このヘルメットは領主同盟のドワーフの密偵、ジョロス・ブライトヘルムの話に合致する。ウォーターディープのミラバー大使館から”蜘蛛の目”と呼ばれるエメラルドを盗み出した”ファルキールの拳”の頭目、ドワーフのファルキールがかぶっていたというヘルメットにそっくりだ。
「あら、このヘルメットには魔法が込められているわ」
「どれ」といって私はヘルメットを被ってみた。すると何やら腹の底から自信が沸き上がってきた。自己肯定感が増すのを感じる。そうだ私は今までも正しかった、そしてこれからも間違うことはない。
南側の領域はほぼ探索しつくし残りは隠し扉の先の領域だけだ。慎重に前進する。いつの間にかキュウキが現出し私の後ろをついてくる。まぐみんは気味悪がってすこし距離をとる。
先頭を進むメネルにフィンガー・オブ・デスが投射され、いきなり重傷を負う。しかしムイラルの姿は見えない。おそらくグレーター・インヴィジビリティで姿を消しているに違いない。そして奴の背後にはバンシーもいるはずだ。メネルの前へ出て周囲を見渡す。前方に揺らめく影が見える、奴だ。先ほどから強く感じている自己の正しさに後押しされ、私は躊躇なくエルドリッチ・ブラストでその揺らめきを貫いた。手応えと同時にムイラルが姿を現す。私の思った通りだ、敵は私の攻撃で呪文の精神集中が維持できず姿を現したのだ。ムイラルは私に近接して手にした剣で切りかかる。確かに完全体のムイラル、剣捌きが複製体とは違う。しかし剣の腕では私も負けない。モーニングスターの姿をしたキュウキがもたらす呪いをムイラルに投げかけつつ攻撃する。実体化したキュウキの霊も私の意図を汲み、最も相応しい位置へ移動しムイラルを攻撃する。はなはだ不本意ながら、敵にとって私とキュウキの霊は完璧な相棒に見えるだろう。そんな我々の挟撃態勢を節足動物の素早さで抜け出し、怪物は私とキュウキ、そして背後のロサに向けてライトニング・ボルトを投射する。かなりのダメージだが、その程度で私を倒すには不十分だ。しかしロサの体力は半減した。後ろにいたバンシーたちがムイラルに加勢しようと近寄ってくる。
バンシーの”慟哭”は致命的だが私なら耐えられる。私はムイラルに近接攻撃を継続し部屋の奥に押し込む。私と仲間との距離がひらき、そこにバンシーが入り込み後ろにいる仲間を攻撃する。しかしこれこそが狙っていた状況だ。ロサ、まぐみん、メネルはファイヤー・ボールを惜しげもなく投射しバンシーを焼き払う。バンシーは倒したがメネルが気絶し、こちらの損害も甚大だ。最後の死力を尽くしてムイラルに攻撃を集中する。
「光に覆われし漆黒よ。夜を纏いし爆炎よ。紅魔の名のもとに原初の崩壊を顕現す。終焉の王国の地に、力の根源を隠匿せし者。我が前に統べよ!エクスプロージョン!」
まぐみんのファイヤー…、エクスプロージョンによりムイラルは崩れ落ちた。
警報に答えて階下に集結する人の気配がする。
「私はガントレット騎士団のヴォルクマール・フォン・ヒンデンシュテルン。既に2体のムイラルを倒した。下の階への階段までの通行を許可されたい」
暗がりから一人のドラウが進み出て言った。
「最後の、3体目のムイラルを倒したら我らの支配地域の通行を許可されることもあろう。当主との面談を許可する。ついてこい」
階段を降り切った先は広大な洞窟が広がっている。そこに多くのドラウが臨戦態勢で集結していた。これまでの経験では我らがどれだけ信義を尽くしても最後はにドラウが裏切る。再びあれが繰り返されるかもしれないと思うと心が沈む。こちらを見つめるドラウたちの顔に死の影が浮かび上がる。いや、今度は違う結末が得られるかもしれない。人はみな違うものだ。ここのドラウたちに善の心が全く無いと考えるのは私が狭量なせいかもしれない。そのような陰鬱な考えに囚われながら気が付くとドラウの女主人の前に到着した。
「お前たちはムイラルを滅ぼせると言うのだな。かの怪物は長きにわたって我らアーブリンダー家の平安を妨げてきた。見事ムイラルを倒したあかつきには我らの領域を通過することを許そうぞ」
この領域は一段高い北領域と南領域に分かれている。北はムイラルの勢力圏、南はドラウの一族、アーブリンダー家の領域だ。そして北側が第9階層に通じ、南側が10階層に通じている。第12階層はアーブリンダー家と敵対するフレス家の領域となっており、中間である第11階層にはトログロダイトやトロルの繁殖地となっている。加えて第11階層にはビーヒアという怪物が生息しているらしい。アーブリンダー家としてはこのまま我々が先に進み、フレス家と戦うことになることを望んでいるようだ。
北側領域に引き返し最後のムイラルを探す。ドラウの話では今までに倒したムイラルは本体の劣化コピーに過ぎないようだ。力のムイラルと技のムイラル、それぞれ近接戦闘と魔術のみを本体から引き継ぎ、それ以外が劣化している。次の戦いは激しいものになるだろう。
ワンドで何かを指し示すウィザードが要石に描かれたゲートを発見した。いろいろと試したがゲートを開く方法が分からない。ゲート前には腐敗したドワーフの死体が扇状に倒れている。そのうちの一人はイノシシを象った鋼鉄製のヘルメットを被っている。このヘルメットは領主同盟のドワーフの密偵、ジョロス・ブライトヘルムの話に合致する。ウォーターディープのミラバー大使館から”蜘蛛の目”と呼ばれるエメラルドを盗み出した”ファルキールの拳”の頭目、ドワーフのファルキールがかぶっていたというヘルメットにそっくりだ。
「あら、このヘルメットには魔法が込められているわ」
「どれ」といって私はヘルメットを被ってみた。すると何やら腹の底から自信が沸き上がってきた。自己肯定感が増すのを感じる。そうだ私は今までも正しかった、そしてこれからも間違うことはない。
南側の領域はほぼ探索しつくし残りは隠し扉の先の領域だけだ。慎重に前進する。いつの間にかキュウキが現出し私の後ろをついてくる。まぐみんは気味悪がってすこし距離をとる。
先頭を進むメネルにフィンガー・オブ・デスが投射され、いきなり重傷を負う。しかしムイラルの姿は見えない。おそらくグレーター・インヴィジビリティで姿を消しているに違いない。そして奴の背後にはバンシーもいるはずだ。メネルの前へ出て周囲を見渡す。前方に揺らめく影が見える、奴だ。先ほどから強く感じている自己の正しさに後押しされ、私は躊躇なくエルドリッチ・ブラストでその揺らめきを貫いた。手応えと同時にムイラルが姿を現す。私の思った通りだ、敵は私の攻撃で呪文の精神集中が維持できず姿を現したのだ。ムイラルは私に近接して手にした剣で切りかかる。確かに完全体のムイラル、剣捌きが複製体とは違う。しかし剣の腕では私も負けない。モーニングスターの姿をしたキュウキがもたらす呪いをムイラルに投げかけつつ攻撃する。実体化したキュウキの霊も私の意図を汲み、最も相応しい位置へ移動しムイラルを攻撃する。はなはだ不本意ながら、敵にとって私とキュウキの霊は完璧な相棒に見えるだろう。そんな我々の挟撃態勢を節足動物の素早さで抜け出し、怪物は私とキュウキ、そして背後のロサに向けてライトニング・ボルトを投射する。かなりのダメージだが、その程度で私を倒すには不十分だ。しかしロサの体力は半減した。後ろにいたバンシーたちがムイラルに加勢しようと近寄ってくる。
バンシーの”慟哭”は致命的だが私なら耐えられる。私はムイラルに近接攻撃を継続し部屋の奥に押し込む。私と仲間との距離がひらき、そこにバンシーが入り込み後ろにいる仲間を攻撃する。しかしこれこそが狙っていた状況だ。ロサ、まぐみん、メネルはファイヤー・ボールを惜しげもなく投射しバンシーを焼き払う。バンシーは倒したがメネルが気絶し、こちらの損害も甚大だ。最後の死力を尽くしてムイラルに攻撃を集中する。
「光に覆われし漆黒よ。夜を纏いし爆炎よ。紅魔の名のもとに原初の崩壊を顕現す。終焉の王国の地に、力の根源を隠匿せし者。我が前に統べよ!エクスプロージョン!」
まぐみんのファイヤー…、エクスプロージョンによりムイラルは崩れ落ちた。