無法者頭と特別な乗騎

バイクとTRPGの記録

狂える魔導士の迷宮 -16(ネタばれ注意)

2022年09月19日 | 狂える魔導士の迷宮
第10次探索4日目
種族的に近しいはずのドラウとは話すらできず戦いになったと言うのに、半魚人のクオトアとは交渉が可能だったのは皮肉なことだ。フックホラーは除外するとして、トログロダイトにも言葉は通じるはずだ。だが、呼吸をする知性生物でトログロダイトと友好関係を結ぶものなどいない。クオトアはこの階層に住む敵対勢力を滅ぼしてくれれば、通行の安全を保証すると提案してきた。既にドラウは全滅させたし、トログロダイトを駆逐するのに異論はない。フックホラーは、まあ行きがけの駄賃といったところだ。
クオトアの話では、地下水脈中央の島のそばにはアボレスが潜んでいるらしい。トログロダイトはアボレスに支配されているが、島に近づかなければ、アボレスは出てこない。島に佇立するアティアグの像の意味は不明だ。
アティアグについてロサが次のように言った。
「アティアグは肥溜めに住み着いているけど、アティアグがそのような環境を作ったわけではないわ。他の生物が輩出した糞尿をアティアグが採食しているの。これをニッチと言うわ。つまり生物にはふさわしい場所があるということね」
ロサの口から肥溜めとか糞尿という言葉が発せられると、どこか背徳的な喜びを感じてしまう。邪な考えを振り払うために、軽い調子で言った。
「するとロサ先生の魔道的道徳では、トログロダイトさえニッチとやらの居場所が与えられるということなんだな?」
旨い事を言っただろうと、振り返ってロサを見たとき、絶対の虚無に見つめられていることを知った。ロサの瞳、その1/8インチの入り口の奥には、光さえも凍り付かせ一切の生存を許さぬ奈落があった。そこで私の記憶は途切れ、気が付いた時には積み重なるトログロダイトの死体の真ん中で立ち尽くしていた。


第10次探索5日目
トログロダイトを絶滅させ、第5階層に到達した。この階層の上空からは光が差し込んでいる。しかし洞窟の外に出たわけではなさそうだ。強い光を受けて、ここには多くの樹木が繁茂している。その林の一角には石造りの塔や町が見える。
コメント
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