【ネタばれ注意】本記事はシナリオ「Skarok and a Hard Place」の内容を含んでいます。
「全く情けない人間どもだ。俺様が戦いというものを教えてやろう。戦いには時と場所、そして兵力のうち最低2つが勝っている方が勝つ可能性を得ることができるのだ。お前たちは明らかに兵力に劣る。従って時と場所で優位を得なければならない」
「おい、ウィズマーこのゴブリンやけに雄弁だな」ヤッタランはフォン・マゴットへ懐から取り出したコンパスを向けた。「変な風は吹いていないな」
「よく聞けお前ら。アード・フェイスのキャンプの周りにはいくつかの特徴的な地形がある。ひとつはゴークの裂け目。森に刻まれた傷跡のように渓谷は底なしの闇へと続いている。長さは1マイル、幅は最も広いところで1000フィート、蛇のように曲がりくねっている。渓谷の北西と東の端には急で危険な自然の階段があり渓谷の底まで下ることができる。渓谷には高所を渡る倒木や、頭上から落とせば敵を生き埋めに出来る玉石の山、金属鎧をも貫く鋭利な岩場地帯、渓谷の一番深いところには冥府につながる深い穴がある。二つ目は凍った洞窟。網目のように複雑な通路をもつ洞窟で氷のように冷たい。低い天井をから吊り下がる鍾乳石から滴る水音は静かな空間に絶え間なく響く。表面が凍った地底湖に敵を誘い出せば冷たい水に落とすことができるだろうし、一番奥の巨大なスクイッグの巣へおびき寄せて怪物と戦わせるのも良い作戦だ」
「リヒテンラーデ公、この良くしゃべる緑色のちびは危険だ。先にやっちまいましょう」アルテミウスがウィズマーの耳元で囁く。
「三つめはワイバーンの罠。偉大なるスカロック様が一族のため、ワイバーンを退治するために作らせた罠だ。奴は罠にかかるより前にスカロック様に襲い掛かり片手を食いちぎったのだ。そうでなければアード・フェイスごときに後れを取ることはない。で、その罠はまだ使えるはずだ。ワイバーンの代わりにアード・フェイスを誘い込むのは楽しそうだ。そして最後は泥の穴だ。硫黄の悪臭を放つ半マイルほどの泥だらけの空き地だ。踏み込むと足は泥に沈み動きを鈍くする。あちこちから有害な蒸気や熱湯が吹き出し、まともに食らうと呼吸困難になったり大やけどをする。ここに誘い込んで遠くから射かければ寡兵を補えるだろう」
「スカロック様は顔剥ぎの儀式を行わなくてはならないので生きたアード・フェイスを連れてこい。殺してはならん。速やかに戦闘計画を作成し提出しろ」
「シグマーに誉れあれ!グリーンスキンが計画を求めるなど聞いたこともない」
「ユニークなゴブリンであることは間違いないな。一方的に指示されるのは気に入らないが目的のため政治的な対応が必要な時だ」ウィズマーはそう言って仲間を見回した。「先ずは戦場を見て回ろう」
==========
「では意見をまとめよう。敵をゴークの裂け目、玉石の山の下におびき寄せ石の雨を降らして弱体化させた後、アード・フェイスの確保を行う。そのための準備として一つ、玉石の山の下にスカロックが野営しているように見せかける。二つ目はスカロックを捜索しているアード・フェイス側のグリーンスキンを捕虜にして、スカロックの野営地の情報を聞かせてからあえて解放する。これで敵を罠に誘い込む」
「ところでどうやってグリーンスキンに情報を聞かせるんだ? 奴等が都合よく言葉を理解するとは思えない」
「その通りだアルヴィン。奴らが理解できないなら、できるように話してやるさ」
「ウィズマー、グリーンスキンの言葉が話せるのか!?」
「人には思いもよらない特技があるものだよ、ヤッタラン」
==========
空には厚い雲が広がり嵐を予感させる冷たい風が強く吹き付ける。
「シグマーを称えよ。待ち伏せにはうってつけの天気になってきた」
敵は雨風と稲妻に紛れて近づいてきた。裂け目の上から下に見える偽りの野営地の様子を窺っている。奴らは悪天候に感謝しているに違いない。スカロックに気づかれず攻撃を開始できることを。だが天が味方したのはウィズマー一行だ。不十分な視界の元では野営地の偽装を見抜くことはできない。
アード・フェイス率いるオークの集団が偽の野営地になだれ込み敵の不在に戸惑っている様子を確認したところでウィズマーが命令した。
「石を落とせ!」大量の石、大岩が頭上から降り注ぐ。アード・フェイスと思われる巨大なオークが盾を頭上にかざしながら、こちらを指差し叫んでいる。従うオークはアード・フェイスの精鋭に違いない。降り注ぐ岩で負傷をしながらも冷静に頭を守りながら崖の出口を目指して走り出した。損害を与えたことに間違いないが壊滅させたとはいえない。次は近接戦闘だ。
ここでは悪天候が敵に味方した。視界が効かずこちらが射撃の機会は1度しかなく、すぐに近接戦に突入した。弩弓兵たちは隊長のフックスを先頭に逃走した。槍兵隊長のオデルは突撃してくるグリーンスキンに対し槍衾をつくり待ち構える。その横を嫌がる剣士隊を引き連れアルテミウスが突撃する。
「グリーンスキンは皆殺しだ!」
乱戦となり順調にオークは倒れていく。しかしアード・フェイスはウィズマー、アルヴィン、ヤッタラン3人を相手にしても優位を保っている。目前のオークを倒したプファイル、アルテミウス、オデルが加勢する。多勢に無勢、アード・フェイスは戦闘不能となった。
==========
「よし、お前らよくやった」離れたところから戦闘を監視していたフォン・マゴットとスカロックが現れた。スカロックを認めたアード・フェイスは気力を振り絞り襲い掛かろうとするがまったく動けない。スカロックは残虐な笑みを浮かべるとアード・フェイスの口に手を突っ込み、そのまま力を込め上顎ごと顔面を引きちぎり頭上に高く差し上げた。周囲を囲ったスカロック一党のグリーンスキンたちは口々に歓声を上げている。
「フォン・マゴット君。スカロック氏にはおめでとうと伝えてくれ。我々はガイウスを連れて退去させてもらうよ。権力の回復を存分に祝ってくれたまえ」
「りひてんらーでコウ、おイワいにカンシャする。イダイなるすかろっくサマはおマエにホウビをあたえる。このアワレなニンゲンをつれていくがよい」
==========
「ガイウス!よく無事で…」シュマリング村長のいつもと変わらない悲しげな声にも抑えきれない喜びの響きが混じる。愛する息子の顔を両手で挟み抱きしめる。
「父上、この者たちの不手際を罰して下さい。私は1週間も汚らしい獣の虜囚となっていたのです。この者たちはもっと早く私を自由にするべきでした!」ガイウスは父の抱擁から抜け出すと、命の恩人に向かって的外れな糾弾を始めた。その様子を父親は悲しげな眼差しで見つめている。
「とんでもない馬鹿息子だ、リヒテンラーデ公、ついでに正道について教育してやりましょう」アルテミウスはゴブリンを見るような目でガイウスを睨みつけた。
「どうかな村長、私の隊長が無料でご子息に教育を施してもよいと言っているが」
「ありがとうございます。そして我が息子の無礼をお詫び致します。依頼費にこ奴の性質による不便も含まれていたとお考えいただければと思います」
「全く情けない人間どもだ。俺様が戦いというものを教えてやろう。戦いには時と場所、そして兵力のうち最低2つが勝っている方が勝つ可能性を得ることができるのだ。お前たちは明らかに兵力に劣る。従って時と場所で優位を得なければならない」
「おい、ウィズマーこのゴブリンやけに雄弁だな」ヤッタランはフォン・マゴットへ懐から取り出したコンパスを向けた。「変な風は吹いていないな」
「よく聞けお前ら。アード・フェイスのキャンプの周りにはいくつかの特徴的な地形がある。ひとつはゴークの裂け目。森に刻まれた傷跡のように渓谷は底なしの闇へと続いている。長さは1マイル、幅は最も広いところで1000フィート、蛇のように曲がりくねっている。渓谷の北西と東の端には急で危険な自然の階段があり渓谷の底まで下ることができる。渓谷には高所を渡る倒木や、頭上から落とせば敵を生き埋めに出来る玉石の山、金属鎧をも貫く鋭利な岩場地帯、渓谷の一番深いところには冥府につながる深い穴がある。二つ目は凍った洞窟。網目のように複雑な通路をもつ洞窟で氷のように冷たい。低い天井をから吊り下がる鍾乳石から滴る水音は静かな空間に絶え間なく響く。表面が凍った地底湖に敵を誘い出せば冷たい水に落とすことができるだろうし、一番奥の巨大なスクイッグの巣へおびき寄せて怪物と戦わせるのも良い作戦だ」
「リヒテンラーデ公、この良くしゃべる緑色のちびは危険だ。先にやっちまいましょう」アルテミウスがウィズマーの耳元で囁く。
「三つめはワイバーンの罠。偉大なるスカロック様が一族のため、ワイバーンを退治するために作らせた罠だ。奴は罠にかかるより前にスカロック様に襲い掛かり片手を食いちぎったのだ。そうでなければアード・フェイスごときに後れを取ることはない。で、その罠はまだ使えるはずだ。ワイバーンの代わりにアード・フェイスを誘い込むのは楽しそうだ。そして最後は泥の穴だ。硫黄の悪臭を放つ半マイルほどの泥だらけの空き地だ。踏み込むと足は泥に沈み動きを鈍くする。あちこちから有害な蒸気や熱湯が吹き出し、まともに食らうと呼吸困難になったり大やけどをする。ここに誘い込んで遠くから射かければ寡兵を補えるだろう」
「スカロック様は顔剥ぎの儀式を行わなくてはならないので生きたアード・フェイスを連れてこい。殺してはならん。速やかに戦闘計画を作成し提出しろ」
「シグマーに誉れあれ!グリーンスキンが計画を求めるなど聞いたこともない」
「ユニークなゴブリンであることは間違いないな。一方的に指示されるのは気に入らないが目的のため政治的な対応が必要な時だ」ウィズマーはそう言って仲間を見回した。「先ずは戦場を見て回ろう」
==========
「では意見をまとめよう。敵をゴークの裂け目、玉石の山の下におびき寄せ石の雨を降らして弱体化させた後、アード・フェイスの確保を行う。そのための準備として一つ、玉石の山の下にスカロックが野営しているように見せかける。二つ目はスカロックを捜索しているアード・フェイス側のグリーンスキンを捕虜にして、スカロックの野営地の情報を聞かせてからあえて解放する。これで敵を罠に誘い込む」
「ところでどうやってグリーンスキンに情報を聞かせるんだ? 奴等が都合よく言葉を理解するとは思えない」
「その通りだアルヴィン。奴らが理解できないなら、できるように話してやるさ」
「ウィズマー、グリーンスキンの言葉が話せるのか!?」
「人には思いもよらない特技があるものだよ、ヤッタラン」
==========
空には厚い雲が広がり嵐を予感させる冷たい風が強く吹き付ける。
「シグマーを称えよ。待ち伏せにはうってつけの天気になってきた」
敵は雨風と稲妻に紛れて近づいてきた。裂け目の上から下に見える偽りの野営地の様子を窺っている。奴らは悪天候に感謝しているに違いない。スカロックに気づかれず攻撃を開始できることを。だが天が味方したのはウィズマー一行だ。不十分な視界の元では野営地の偽装を見抜くことはできない。
アード・フェイス率いるオークの集団が偽の野営地になだれ込み敵の不在に戸惑っている様子を確認したところでウィズマーが命令した。
「石を落とせ!」大量の石、大岩が頭上から降り注ぐ。アード・フェイスと思われる巨大なオークが盾を頭上にかざしながら、こちらを指差し叫んでいる。従うオークはアード・フェイスの精鋭に違いない。降り注ぐ岩で負傷をしながらも冷静に頭を守りながら崖の出口を目指して走り出した。損害を与えたことに間違いないが壊滅させたとはいえない。次は近接戦闘だ。
ここでは悪天候が敵に味方した。視界が効かずこちらが射撃の機会は1度しかなく、すぐに近接戦に突入した。弩弓兵たちは隊長のフックスを先頭に逃走した。槍兵隊長のオデルは突撃してくるグリーンスキンに対し槍衾をつくり待ち構える。その横を嫌がる剣士隊を引き連れアルテミウスが突撃する。
「グリーンスキンは皆殺しだ!」
乱戦となり順調にオークは倒れていく。しかしアード・フェイスはウィズマー、アルヴィン、ヤッタラン3人を相手にしても優位を保っている。目前のオークを倒したプファイル、アルテミウス、オデルが加勢する。多勢に無勢、アード・フェイスは戦闘不能となった。
==========
「よし、お前らよくやった」離れたところから戦闘を監視していたフォン・マゴットとスカロックが現れた。スカロックを認めたアード・フェイスは気力を振り絞り襲い掛かろうとするがまったく動けない。スカロックは残虐な笑みを浮かべるとアード・フェイスの口に手を突っ込み、そのまま力を込め上顎ごと顔面を引きちぎり頭上に高く差し上げた。周囲を囲ったスカロック一党のグリーンスキンたちは口々に歓声を上げている。
「フォン・マゴット君。スカロック氏にはおめでとうと伝えてくれ。我々はガイウスを連れて退去させてもらうよ。権力の回復を存分に祝ってくれたまえ」
「りひてんらーでコウ、おイワいにカンシャする。イダイなるすかろっくサマはおマエにホウビをあたえる。このアワレなニンゲンをつれていくがよい」
==========
「ガイウス!よく無事で…」シュマリング村長のいつもと変わらない悲しげな声にも抑えきれない喜びの響きが混じる。愛する息子の顔を両手で挟み抱きしめる。
「父上、この者たちの不手際を罰して下さい。私は1週間も汚らしい獣の虜囚となっていたのです。この者たちはもっと早く私を自由にするべきでした!」ガイウスは父の抱擁から抜け出すと、命の恩人に向かって的外れな糾弾を始めた。その様子を父親は悲しげな眼差しで見つめている。
「とんでもない馬鹿息子だ、リヒテンラーデ公、ついでに正道について教育してやりましょう」アルテミウスはゴブリンを見るような目でガイウスを睨みつけた。
「どうかな村長、私の隊長が無料でご子息に教育を施してもよいと言っているが」
「ありがとうございます。そして我が息子の無礼をお詫び致します。依頼費にこ奴の性質による不便も含まれていたとお考えいただければと思います」