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コピーライターが、現代思想とフェミニズムの視点で分析する、ひと味違う映画評。ネタバレ注意!

アルゼンチンタンゴ 伝説のマエストロたち

2010-08-12 | 映画短評

 60~70年もの演奏歴を持ち、現在も現役として活躍中のマエストロたち22名が、ニューアルバムを制作するために一堂に会し、世紀のコンサートを実現させたドキュメンタリー。国宝級の演奏者たちが、世界3大劇場の1つ、ブエノスアイレスのコロン劇場で開いた一夜限りの夢の競演だ。

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 同様のドキュメンタリー「ビエナビスタ・ソシャルクラブ」や「ヤング@ハート」など、年を重ねた演奏家たちの音色の深さには、プロアマを問わず涙がこぼれる。
 本作では、 アルバムづくりのプロセスを丹念に撮り、合間にアルゼンチンの激動の歴史や、各人のタンゴに寄せる思い、恩師や仲間との思い出などをきめ細かく挟みこんでいる。
 
 官能的なダンスも随所で満喫できる。5年前、愛知万博のアルゼンチン館で毎日上演される踊りを楽しんだ。本場のダンサーたちは、自分たちも楽しみながら演じ、観客を大いに喜ばせた。

 マエストロたちは言う。「タンゴは人生そのもの」「欧州では真似が出来ない音楽」「生きる糧はタンゴしかない」・・・と。
 大半が貧しい家庭の生まれだ。命がけで這い上がってきたからこそ、年をとってもその技は輝き続けるのだろう。
 久しぶりに会ったのに、「アウン」の呼吸で演奏できる素晴らしさ。お互いにあと幾年も生きられないことを知っているから、こうして会えたことを神に感謝し、優しく寄り添えるのかも。
 
 曲も演奏法も時代とともにめまぐるしく変化する。もう若い時のようにもてはやされることもない彼ら。しかし、哀愁に満ちた古い音楽は、国を超えて、タンゴに疎い私の心に響いた。映画であることを忘れて聴きいった至福の90分だった。
★★★★★(★5つで満点)

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